本質を見抜く力を養おう!二つの論理問題から考える。

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テレビで評論家などが「これは科学的に・・・」、「今のサイエンスでは・・・」な~んて言葉を発していますね。それを聞いて「なるほどなるほど!科学的に実証されているならやってみよう」と安易に思っているそこのあなた!要注意です。

マスコミは情報の精度を確かめることもなく、拡大解釈された「エセ科学」をまるで真実かのように公に放っています。みなさんは今後、そういった不安定な情報を自分の力で読み解き、正しいのか、正しくないのかを自分で解き明かす必要があります

特にインターネットの盛んな昨今において、情報取捨選択能力は非常に重要です。こういった力を高めるためには、常に批判的に物事を見つめ、本質を抽出する癖を付けることが重要です。

こうして養われる力は、理系の研究だけでなく、就職して働く際にも求められますし、またあなたの勉強の効率を上げることにもつながるでしょう。2つのケースを元に、考えていきましょう。

CASE1 どこで論理が破綻するのか

みなさんが手に取る雑誌の後ろの方に、「このブレスレットを着けたら、宝くじに当たってモテモテに・・・」
本質を見抜く力を養おう!―クリティカルシンキングのすすめ―
なんて書いてある怪しい広告、見たことありませんか?ブレスレットを着けたら本当に宝くじが当たると思いますか?

さて、あるマスコミが、調査した結果を元に、以下のように発表したとしましょう。「このブレスレットを買った1万人と、無作為に集めた1万人を比較したところ、宝くじの当選金額の合計は、ブレスレットを買った集団の方が高かった。」
本質を見抜く力を養おう!―クリティカルシンキングのすすめ―
私はこの現象は実際に起こると思います。では、このブレスレットが「運気」を向上させ、宝くじに当たる人が多くなったのでしょうか?考察してみましょう。

まず、発表した文をよく見て下さい。今回2つの集団で比較されているのは「宝くじの当選金額の合計」です。このケースでは、ここがミソになっています。この数値は、おおざっぱに

宝くじの当選金額の合計=宝くじ購入本数の平均×宝くじの期待値×1万人

で求めることができます。「運気」が上がるということは、このブレスレットを買った人限定で、宝くじの期待値が上昇するということを意味しています。

単純化すれば、当選確率が上がるということです。これが、ブレスレット会社が宣伝したいと思っている「ブレスレットの効用」です。しかし、マスコミの発表したデータが真に意味することは違います。

宝くじの当選金額の合計にはもう1つ変数がありますね。宝くじの購入本数の平均です。

広告を見てブレスレットを買ったのなら、「宝くじが当たるかも・・・」と考える人が一定数いると推測されます。したがって、ブレスレットを買った人が購入する宝くじの本数は無作為に抽出した人たちより多いと考えることができます。

それによって「宝くじの当選金額の合計」が上がっていたのです。マスコミの発表データの本当の意味を理解できたでしょうか?このデータからわかるのは、「宝くじが当たるブレスレット」という触れ込みに広告効果があったという事実だけです。

今回取り上げたような「データは正しいが、視聴者を誤解させるような情報」というものをマスコミはよく発信しています。今回のケースだと皆さんは、「ブレスレットを着けただけで宝くじに当たるなんてあり得ない!」と、直感的に「おかしい」と考えると思います。

しかしもっと複雑なモデルで「もっともらしい」データを使ってくると、人は簡単に騙されてしまいます。

CASE2 前提を疑ってみる

ある会社が2種類のお茶の試作品、A茶、B茶を作りました。この会社はどちらか一方のみを製品化して、コンビニやスーパーに並べたいと思っています。もちろんおいしい方が売れるので、どちらがおいしいかを判断する必要があります。

そこで、100人のバイトを雇い、両方のお茶を好きなだけ飲んでもらいました。1時間たった後、残ったお茶の重さを量ると、量が減っている方、つまり、たくさん飲まれたのはA茶だとわかりました。
本質を見抜く力を養おう!―クリティカルシンキングのすすめ―
この話だけで「A茶の方がおいしいし、よく売れる」と結論づけることはできますか?考察してみましょう。

考察

バイトの人がランダムに集められたかわからない

本質を見抜く力を養おう!―クリティカルシンキングのすすめ―
この話の中では、バイトがどのような集団か書かれていません。まず男女比は1:1なのかわかりません。10代ばかりの集団と、80歳のおじいちゃんおばあちゃんの集団とでは、趣向は違うでしょう。

普段よくお茶を飲む人なのかそうでないのかもけっかに影響することが予想されます。

どういった実験を組んだか詳細がわからない

本質を見抜く力を養おう!―クリティカルシンキングのすすめ―
みなさんがお茶を飲むのは、いつでしょうか?喉が渇いたときですよね?冬より夏の方が喉渇きませんか?今回、バイトの人たちはどのような状況下でこのお茶を飲んだのでしょう。

快適な空間で飲んだ時の印象と、猛暑の中で飲んだ時の味は違うかもしれません。味わって飲めばお茶としてはA茶の方が品質は高いが、喉ごしはB茶の方がよくて夏の売れ筋商品になる、という可能性も考えられます。

飲み比べでのおいしさ比較と、売上げは必ずしも比例しない

本質を見抜く力を養おう!―クリティカルシンキングのすすめ―
みなさんがコンビニに行って、新製品の2つのお茶があった場合、どのように選びますか?コマーシャルで見たことがあるから。なんとなくデザインが可愛いから。単純な理由が多いでしょう。

洋服を買うか買わないか吟味するのと同じくらい悩んでお茶を買う人はいないはずです。

つまり、A茶とB茶を飲み比べたら多くの人がA茶を選ぶかもしれない。でもB茶には「濃い」、「甘い」などの特徴があって、キャッチフレーズを付けやすい場合、売れるのはB茶かもしれないのです。

条件そのものや前提をまず疑ってみる姿勢は非常に重要です。前提が間違っていれば結果も当然間違ってくるからです。このケースでは、上に挙げた他にも、1時間とういう時間の妥当性や、量が減っていることが単純においしいこととダイレクトに相関するかわからないなど、突っ込みどころはまだまだ満載です

例えば研究の場合、研究者はこういった「突っ込み」と日々格闘しています。研究の成果は論文という形でまとめるのですが、その際に審査員が「突っ込み」を入れてこないように、証拠を積み重ね、それでも飛んでくる「突っ込み」に対応して、新しい証拠を提示して行くのです。皆さんも、こういった「突っ込み」を行う能力、すなわち批判的に物事を見て、本質を掴み、正しいのか正しくないのかをきちんと評価する力が必要です。娯楽として刺激的な情報を流そうとしているマスコミに騙されないためにも、勉強をより効率よく、実のあるものにするためにもです。

まとめ

今回2つのケースを取り上げてみましたが、ケース1は「なぜ?」、ケース2は「そもそも」という言葉に集約されます。ビジネスや研究だけでなく、今の勉強に関しても、この2つの繰り返しが重要です。

「なぜ」あなたは数学が苦手なのですか?公式を覚えてないからですか?問題を解いた量が少ないからですか?解いたら解きっぱなしで同じ問題を何度も間違える生産性の悪い勉強をしているからですか?そこがわからないと対策を立てることができず、どれだけ勉強に時間をかけても効率が悪くなってしまいます。

また、ケース2のように、前提を疑って見てください。視点がずれていることが往々にしてあります。例えば、「英語を伸ばしたいので英検2級を取ろうと思う」という会話。「そもそも」英語を得意科目にするという目標に対して、英検を取るということが最も近いアプローチなのでしょうか?

資格が大好きで「英検2級」がモチベーションになるのであればそれは正しいです。しかし、そうでないのであれば他の選択肢があるかもしれません。

また「部活と勉強の両方が難しい」というのも、本質的には「時間のコントロールが下手」というところに行き着くかもしれません。もしそうだとしたら、部活をやめたところで劇的に勉強ができるようになると期待することはできません。むしろ時間を無駄にせずに使う訓練をするべきです。

どんなことに対しても批判的に考え、本質を探り、それを元にして考える癖を付けて下さい!それがきっと勉強にも、今後の人生にも役に立つと思います!