はじめに
皆さんは理系大学院生の研究生活と聞いてどんな様子を浮かべますか?
なんとなくイメージはあるかもしれませんが、実際、どんな人のどんな生活があるのかは想像しづらいと思われます。
そこで今回は、京都大学農学研究科生体高分子化学研究室で微生物の研究をしているリケジョ(ラボガールともいう)にその実態を紹介してもらいました!
目次
リケジョの実態を調査!(大学の制度や研究内容)
私の研究室は生体高分子化学研究室というところで、主に社会に役立つような微生物の研究を行っています。
私は大学院生になってから、現在の研究室に所属しています。
研究室に入る前の1~3回生での学び
京都大学では、基本的に4回生(ちなみに関東では4年生という言い方をしますが、関西では4回生という言い方します)から研究室に配属されます。
学部生の授業は、大きく一般教養と専門科目の2つに分かれており、自身の学部学科に特化した専門科目の授業が、学年が上がるにつれて増えていきます。
このようにして、研究室に所属する前に専門分野に関する知識を増やしていきます。
応用生命科学科では3回生になると、学生実験という授業が始まり、午後の授業は全て実験を行います。
そこで、実験の基本的な操作や考え方を身につけます。
リケジョの意外すぎる研究室の選定方法
そして、3回生が終わるころに所属する研究室を決めます。
基本的には自身の1番興味のある研究室に行くことが出来るのですが、研究室には定員があるため、人気のある研究室だと抽選で決めたりします。
決め方は学年によって違っており、ジャンケンで決める年もあれば、討論で決めた年もあるそうです。
クラスのみんなで話し合って、決め方を決定します。
この抽選に外れてしまったがために、4回生の間は現在とは異なる研究室に所属していました。
社会に還元できるような研究を行っていること、自分の考えを尊重してくださる研究室であるため自身の裁量の幅が広く自由に実験できること、研究室の雰囲気が自分にあっていたこと、などの理由で現在の研究室を志望しました。
そして、大学院の入学試験で合格し、現在の研究室で研究をしています。
私の研究室は、一言では説明できないほど様々なテーマについて研究を行っています。
研究内容について|微生物の利用
全てのテーマに共通することといえば、微生物を利用して社会に役立つことをしようとしているということです。
ニュースなどで、遺伝子組み換えの技術は、動物や植物の遺伝子を変化させることで、病気に強い品種や栄養素の多い品種を作ることができる技術です。
まさにそういった遺伝子組み換え技術を用いて、例えば石油燃料に代わるバイオ燃料として利用できるような人間にとって有用な物質を微生物に作らせたり、微生物そのものを有効利用したりしようとしています。
その中でも、私はアポトーシスという現象に着目して研究を行っています。
アポトーシスとは、遺伝的に計画された細胞の死のことをさします。
例えば、オタマジャクシはカエルに成長するときに尾がなくなりますよね。
これは、尾の細胞がアポトーシスによって死んでいるのです。
このアポトーシスは、生命体が正常に働くために非常に重要な役割を果たしています。
アポトーシスの異常は、ガンやアルツハイマー病などの多くの病気と関係するということが知られています。
そこで私は、出芽酵母という微生物のアポトーシス機構を解明することをテーマとし、日々研究に励んでいます。
酵母のアポトーシス機構が解明できれば、哺乳類における複雑なアポトーシスの理解の助けになると思っています。
転学科の経験談
このように、日々研究に励んでいる私ですが、実は入学当時は違う学科に所属していました。
私の高校生の時の第一志望の学科は、応用生命科学科でした。
ですが、残念ながら入試の成績が悪かったために、第二希望の食料・環境経済学科に入学することになりました。
応用生命科学科に興味をもったのは、浪人時代に生物が大好きになり、バイオテクノロジーの研究をしてみたいと思うようになったからです。
食料・環境経済学科を第二希望にした理由は、私は理系科目が苦手で文系科目が得意だったので、農学部という理系の学科でありながら、文系的なアプローチをする特殊な学科であることに面白みを感じたからです。
しかし、大学の学部時代の授業を受けていて、やはりバイオテクノロジーに関わりたいと強く望むようになりました。
そこで、2回生のときに転学科に挑戦しました。
科学英語の試験と、面接を受けました。
そして、合格することができ、晴れて応用生命科学科の一員となることができました。
つまり自分のしたい勉強をすることができるようになったのです。
自分のしたい勉強をすることができて、心底「勉強って楽しいものなんだな」と実感しています。
最後に|受験生へのメッセージ
私は、京大模試で数学が200点満点中40点しか取ることができなかった程、理系科目が苦手です。
それでも、農学部という理系の分野でとても楽しく研究をすることができています。
それは、自分の好きなことをしているからです。
得意なことイコール好きなこと、ではありません。
しかし、「国語が苦手やから、理系に進学する」「数学が苦手やから、文系に進学する」という人がたくさんいますよね。
得意不得意にかかわらず、「自分が本当に好きなこと、興味があることってなんだろう」ということをしっかり考えてほしいと思います。
そして、ぜひ、大学では自分の好きな勉強を楽しんでください!