トウマとミイの冒険作!とある論理の「不正問題」の謎を解け!

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トウマとミイは幼い頃からの友人同士。なぜか、高校までずっと同じクラスである。
冬を迎えたクラスは、勉強ムード一色。誰にとっても、毎夜の勉強は当然のことになってきていた。

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昨晩、確率の問題を解き疲れたトウマは、どうせ同じ「確率」の計算なんだからいいよなと、保育園の時から今年まで二人が常に同じクラスである確率を計算し、その確率の低さに驚き疲れてぐっすりと寝た。
一方ミイは、休憩もせずにストイックな勉強を続けて、今朝を迎えた。

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「ミイちゃんおっはー! ……あれ?なんか疲れてる?」
「はあ……朝から元気ね。ちゃんと勉強してるとは思えないわ。……べ、べつに、あなたの成績を心配してるわけじゃないんだからねっ!」
「なんで僕より成績悪いやつに心配されなきゃいけないんだよ」
「うるさいわね! あなたって本当にデリカシーのかけらもない人よね」

そう言いながら、疲れた顔で頬杖をつくミイを見て、トウマは思った。
あれ、そういえばなんで僕はこんなに努力家のミイちゃんを追い抜いたんだっけ?

「あのさ……もしかしてミイちゃん、息抜きしてないんじゃない?」
「息抜き?」
「いや、だってさ、僕よりずっと長い時間勉強してるミイちゃんに、僕が成績で勝っちゃうなんておかしくない? あ、やっぱ僕って天才なの?」
「そうね。天才なんだと思うわ。」

最後のセリフは冗談のつもりだったのに……。
それにしても、あっさりと自分の負けを認めるなど、普段のミイにはありえないことだ。
トウマは、ちょっとミイをからかってやろうと思い立った。

「やっぱそう思う? じゃあ、そんな天才トウマ様が、息抜きにクイズを出してあげようじゃないか!」
「いいじゃない。でも、面白いクイズじゃなかったら寝るわよ」
「天才が面白くないクイズを出すわけないだろ。じゃじゃん♪ ……それでは、問題です」
「こんなときだけいい声出して、それなら合唱コンクールのときもちゃんと歌いなさいよね!」
「まぁ聞けよ……」

問題

A、B、Cというラベルが貼られた3つの箱がある。3つの箱のうち1つだけに金貨が入っていて、ほかの2つは空っぽだ。さて、3つのうちの1つの箱を選ぶとすると、その中に金貨が入っている確率はいくらかな?

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「なにそれ? 3分の1に決まってるじゃない。考えるまでもないわ、やっぱりわたし寝るわ……」
「ふふふ……本当にそうかな?」
「なんですって?」
「やっぱミイちゃん、疲れすぎて頭がカチコチになってるな。やわらか頭じゃないと難問は解けないんだぜ」

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悔しい……! これがわたしとトウマくんの差に違いない!
ミイは、持ち前の負けず嫌い精神を取り戻しかけていた。

「わかったわ、わたしが間違っているっていうなら、それを証明してみなさいよ」
「素直なミイちゃんってミイちゃんじゃないみたいだよな。まあ、答えから言うと……」

トウマの答え

3つの中からどの箱を選んだかにかかわらず、それに金貨が入っている確率は2分の1だ。

「えっ、2分の1なの?! わけがわからないわ!」
「証明してみよう。選んだ箱がAであるとする。金貨はどの箱にも同じ確率で入っているから、もしBが空なら、金貨がAに入っている確率は2分の1だよな?」
「そう考えればそうね」
「また、もしCが空ならば、金貨がAに入っている確率はやはり2分の1だ」
「確かに」
「しかし、BかCのうち少なくとも1つは空だし、どちらが空であっても金貨がAに入っている確率は2分の1だ。よって求める確率は2分の1。以上、証明終了! Q.E.D.!」

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「……なんか違う!」
「どこが違うんだよ?」
「……わからない、でもどこかで噓を言ったわよね?」
「ふっ……ばれない噓は噓ではないのだよ。」
「なによその言い方は……絶対に暴いてやるんだから!」

そう、トウマはわかっていて噓をついた。〈どこが噓なのか〉、それがこのクイズの本当の問いだ。
ミイも、どこかがおかしいことはわかった。でも……解けない!

「……だめ。参ったわ。本当の答えを教えなさい」
「それが人にものを頼む態度なのか……。まあいいや。じゃあネタばらしね。間違った推論は次の部分。『もしBが空なら、金貨がAに入っている確率は2分の1』。書いてあることは正しいけど、これは『もしも~ならば~』という条件つき確率ってやつで、その意味は特殊なんだよ。つまり条件がついてない時の確率とは、全く別物だということ。」
「条件付き確率……どこかで聞いたわ……。あっ、確率の授業で!」

授業の導入部分で聞いたはずの、基本中の基本を、問題に活かせなかった……。
最近、難問ばかり解いて、でも解けなくて疲れていたけど、力が入りすぎて基本を忘れていただけかもしれない。
トウマくんの言うとおり、息抜きが足りないからなのかもしれない。ミイはそう思い始めた。

「極端な例をいえば『もしも、BとCが空ならば、Aに金貨が入っている確率は1である』っていうのは正しいよな。でも、3つの箱の中から1つの箱を選んだ時に金貨が入っている確率、つまり3分の1とは無関係だ」
「最初からバレバレじゃない! ていうかわたし、正解してたじゃない!」
「そう、本当の答えは3分の1だ。でも、噓を見破れるかどうかが問題なのであって……」
「わ、わかったわよ!」

トウマはミイがいつもの調子を取り戻しつつあることにホッとした。
ミイはトウマの成績を抜かし返してやろうと自然に意気込んでいた。

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「ところであなた、そのクイズいつ知ったの?」
「実は昨日確率の勉強しててさ、条件付き確率っていう単語がわからなくて、息抜きがてら基本から調べてたんだ。そしたらこのクイズが載ってたってわけ」
「それって息抜きって言わないんじゃ…」
「えっ? だって、問題解いて間違えて落ち込んでばっかりよりは、休憩になると思わない?」
「確かにそうね。……あ!もしかしてそれも噓じゃないわよね!」
「あはは。ミイちゃんらしく元気になってきたじゃん。よかったよかった! あはははは!」
「うるさ……」

キーンコーンカーンコーン。
チャイムの音で2人は席についた。
ミイは、自分でもさっきまで気付かなかった自分の悪循環を、そのまま言葉にされたことにびっくりしていた。
そういう観察力や洞察力で、トウマくんは問題と向き合っているのか、と。

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悔しくなったミイは、今晩の勉強の範囲内で、トウマを出し抜けるひっかけ問題を探そう、と心に決めた。
同じ範囲なら勉強になるんだから遊んでないわよね、と言い聞かせながら。
しかしミイにはそれが上手い息抜きだという自覚はまだない。やっぱりミイは、トウマに出し抜かれているのであった。