【恋愛戦略から考える】Case Study:センター模試偏差値36から京大進学という失敗

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ある調査では、「受験勉強をいつから始めた?」という質問に対して、東大、京大といった最難関大合格者の半数が高2と回答、3割が高1と回答したそうです。

さて、皆さんはきっとこの調査結果が気になると思いますが、今回は“質問文”に注目して下さい。

「受験勉強」とありますが、勉強自体は高校入学直後からやっているはずです。
普段の勉強と受験勉強は違うのでしょうか?受験勉強ってそもそも何なのでしょうか。

この調査においては、回答者は「受験を意識しだしたのはいつか」という意味で答えているかもしれませんが、「普段の勉強」と「受験勉強」は同じようで実はまったく異なる性質をもっています。ある京大生の体験を参考に、考えてみましょう。

Case Study:京都大学理学部Aくん

県下1、2位を争う進学校に通っていたAくんは、授業も聞かず、自習もしなかったために落ちこぼれ、ほぼすべてのテストは赤点で、常に下から1番をキープします。

高3夏、受験ムードが漂う中、Aくんは某大手予備校のセンター模試を受けに行き、秋に結果を見て愕然とします。

偏差値36。国語と現代社会以外、ほとんどの教科が2割ちょっとで、鉛筆を転がして解答したのと同じ得点率です。

その年の受験を諦めたAくんは浪人を決め、国立大学医学部を目指して、猛烈に勉強を始めます。さて、勉強を始めるにあたって彼が取った戦略はこうです。

基本ポリシー医学部合格は結果であって、本質は学力を高めること。学力とはあらゆる問題を解ききれる力のこと。

彼は完全にゼロからのスタートだったこともあり、いわゆるセオリー通りに、基礎を非常に大事にし、地道に教科書から始めます。

英語は長文を精読して全単語というレベルで文の構造を明らかにし、数学は定理の証明を行いながら1歩ずつ先へ進み、また、1問を半日考え続けることもしばしばです。

理科は資料集や参考書を用いながら、1つの問題集を何度もしました。彼はポリシーにしたがって、「実力さえあればどんな問題でも解ける」と考えており、結局、過去問を一度も解くことなくセンター試験を迎えます。

さていよいよセンター試験当日。Aくんは浪人中に、難解な英語でも文構造を把握して和訳する力や、数学の問題をじっくり考えて答えにたどり着く力は得ましたが、センター試験のようなタイプには免疫がありません。

結局センター試験の結果は芳しくなく、医学部を受験することすら諦めます。

得意科目と苦手科目があるように、試験のタイプにも得手不得手があることに今更気づいた彼は、京大の問題と相性が非常に良いことに気づきます。

しかも当時は、理学部であればセンターの配点はゼロになったため、受験を決め、合格し、京大理学部に進学することになりました。

ボトムアップ or トップダウン?

さて、落ちこぼれでも挽回できるというモチベーションを得たところで、本題です。

Aくんは、医学部を受験することすら諦めるほどにセンター試験で失敗し、その代わりに京大に合格しました。この理由はなんなのでしょうか?

例えば偏差値という観点から見れば、京大理学部より偏差値の低い医学部はいくつもあります。彼に相応のポテンシャルがあったと仮定するならば、どうしていれば医学部に合格したのでしょうか?

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医学部受験に失敗した最大の原因は、彼が立てた「戦略」にあります。まず図1の樹形図を見て下さい。この樹形図では一番上に目標である「志望大学合格」(トップ)をおき、そこから枝分かれして、教科、それに続いて単元・分野(ボトム)という形で、勉強の具体的内容を設定しています。

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次に図2を見て下さい。これは図1をベースにして、彼が受験勉強でとった基本戦略を書き加えたものです。

オレンジの丸は得意分野を表し、ブルーの丸は苦手分野を表しています。

そして、丸の大きさが勉強に費やした時間の多寡を示しています。

この図では、苦手分野であるブルーの丸がすべて大きくなっており、苦手分野に時間をかけて勉強していた事がわかります。

不得意分野をしらみつぶしに克服していくことで、合格という目標に近づけようという考え方で、図の中では下から上という方向なので、これをボトムアップのアプローチとします。

これは、皆さんが普段行っている勉強であり、基礎的な学力を上げ、本質的な実力を付ける、あるいは教養を深める時の方法論です。

でも、これは受験勉強とは違うのです。もちろん理想を言えば、これが受験勉強でしかるべきであり、「圧倒的な本質的実力によってどのような問題にも対応できた結果としての合格」は最高の状態です。

でもこの方法論は目標の存在をまったく無視しており、目標に到達するまでの時間があまりにも長くかかりすぎます。

実際、この理想を揚げたことが原因でAくんは医学部を諦めており、時間という制約がある以上、理想論は理想論として割り切った方が受験は上手くいきます。

この記事の最初の問い、受験勉強が普段の勉強と異なる点は、「合格」という具体的目標の存在です。
これが勉強の性質全てを変えます。

具体的目標によって、「学力が高いから医学部に合格」ではなく、「医学部合格を目標とすると、私は何をするべきか」というボトムアップと逆の視点が生まれるのです。

「合格」は、その大学がほしいと思う性質を備えた人間に贈られるものです。

例えば東大と京大の数学、あるいは英語の問題は、方向性がまったくことなります。

それはそれぞれの大学が求める学生の能力が違うからです。そう、つまり受験勉強では、ボトムアップのアプローチのように、自分の苦手分野や実力など、自分のことだけを見ているのは間違いで、相思相愛になるために、相手が求めている条件に近づく努力をするべきなのです。

恋愛で考えてみる

恋愛にたとえてみるとわかりやすいかもしれません。自分を最大限高めて、誰であろうと愛される人間になるよう努力するのがボトムアップです。

これは理想的ではあっても時間がかかりますし、たくさんの人から愛されるとしても、本当に自分が好きなヒトから愛されるという保証はありませんよね。

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では、好きな人から愛されるには、ボトムアップの完全な逆をゆけば良いのでしょうか?すなわち相手が、どういう人間を好きになる傾向があるかを調べて、それに沿った行動だけをするということです。

図3を見て下さい。これがボトムアップの完全な逆、トップダウンのアプローチです。樹形図内の赤線は、過去問の分析などからして出題頻度が高く、次の入試でも出題される可能性が高い分野を表しています。

トップダウンのアプローチでは、赤線の伸びている分野の丸が全て大きくなっています。つまりは志望大学の過去問の出題傾向や求める学生像のみを判断基準として、各分野にどのくらいの時間を費やすかを決めています。

しかし、よく考えて下さい。頻出だとしても、次の入試に本当に出るかはわかりませんし、この方法論ではブルー(苦手分野)なのに円が小さい(勉強していない)分野がたくさんあります。

つまり、不得意な分野を放っておくことになり、もはやギャンブルに近い勉強方針です。

こういうやり方の人は、教科によっても点数の高低が大きくなりがちです。

入試は総合点で決まるため、実際のところトップダウンのアプローチのみでは往々にして落ちます。

恋愛で考えても、相手のことを調べて自分をよく見せようとしたところで、すぐボロが出てふられてしまうのは容易に想像がつくでしょう。

しかも、さらに問題なのは、対象が第一志望に絞られ、本質的な実力が足りないために、第二志望、第三志望と志望順位の低い大学にも落ちてしまうことです。

ボトムアップ+トップダウン

さて、もう気づいたかもしれませんが、受験勉強はトップダウンとボトムアップを組み合わせたプロセスで行うべきで、片方だけでは不十分です。

ボトムアップは実力を底上げし、問題への対応の柔軟性を高めるために必要です。

トップダウンは時間という限られたリソースを適切に配置するためにも必要です。例えば試験科目に入っていないのに、受験のために美術を勉強する人はいないでしょう?

もしかしたら現代文で美術史の論説文が出て役にたつかもしれませんが、そんな低い可能性にかけても意味がありません。

教養を深めるのは大事ですが、限られた時間で志望大学に合格するには、効率を上げるトップダウンの考え方も必要です。

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例えば、図4のように、「苦手分野かつ頻出」「苦手分野だがあまり出題されてない」「得意分野かつ頻出」「得意分野だがあまり出題されてない」というグループに分けて力の入れ具合を変えれば、効率的に実力を上げていくことができます。

また、入試までの時間によってフレキシブルに費やす時間を変えることも重要です。

例えば、まだ入試まで時間があるのなら、注力具合は「苦手分野だがあまり出題されてない」>「得意分野かつ頻出」として苦手の克服を重点的に行い、入試までの時間がないなら、むしろ頻出分野でミスをしないよう「得意分野かつ頻出」なグループに力を入れた方がいいかもしれません。

頻出分野がどこなのかといった、トップダウンのアプローチについては、赤本などの過去問題集に詳細な分析が載っているのでそれを参考にして下さい。

そてまた、解けなくても構わないので、志望大学、あるいはセンター試験の過去問を、実際に時間を計りながら解いて下さい。

これにより、図4で例として挙げているように、教科ごとの大きな方針を立てることができます。今までの議論はすべて、どの分野に重点をおいて勉強するかでしたが、苦手分野が無ければ合格できるというわけではありません。

時間配分など、各大学に対応した「勉強方法」を加える必要があります。Aくんがセンターで失敗して、京大には受かった主因はまさにこれです。彼は基本ポリシーで、学力を「あらゆる問題を解ききれること」と定義しました。

そこには、「時間内に解く」という概念が入っていません。彼は漠然と苦手分野を中心に目の前の勉強をこなしていただけでした。この時間を考えない問題の解き方は、時間の短いセンター試験に沿っていなかったのです。

そして丁寧な基本力が重要で、時間がたっぷりあった京大の試験に馴染み、合格したのです。結局のところ、彼は京大の対策を1年間やっていたわけです。

どういう心構えで、どういう方法・方針でその強化を勉強して行くかについては、実際に過去問をとき、そのうえで、トップダウンのアプローチを用いて検討しましょう。

まとめ

皆さんが認識すべきは、合格という目標に対して正しい方向で近づいていくのが受験勉強だということです。

これを絶対に忘れないで下さい。そして、目標は、「志望大学合格」に直結するもの(○○大学合格、センター試験90%など)を設定し、理想を目標にしてはいけません。

例えば英語で「ネイティブレベルで、読めて書けて話せて聞ける」という目標は、「志望大学に確実に合格できるレベル」になった後に設定してください。

実際のところ、受験を戦略的にこなすことをイヤがる人はたくさんいます。確かに、勉強(学問)とは人類が蓄積してきた知の継承と新たなる知の創造を目的としており、効率化のアプローチと相容れない部分があります。

でも、実際皆さんが大人になった時に求められるのは「戦略的に考え、行動する力」です。例え学問の道に入り、研究者になるとしても、ある一定の期間で最大限のパフォーマンスを発揮し、結果を出さなくては研究費が貰えず、研究を行うことさえできません。

社会で仕事をする際は、常に時間的なリミットが設定されており、その時間内にどこまでクオリティが高められるかが勝負です。

受験はある意味、そういう力を養うための練習とも考えられます。大きな受験も、きっと将来役に立つので、常に頭を働かせて頑張ってください!