医学部の面接・小論文で出題される難問「トロッコ問題」とは?(練習に使える例題付き)

医学部受験生は知っておきたい!面接・小論文で出題される難問「トロッコ問題」とは?
この記事は 2016年06月05日に更新されました。

はじめに

こんにちは、医学部ライターのnakatatsuです。

医学部受験生にとって、ほとんどの大学で必要になるのが面接対策。
今回は、そんな面接や、小論文でも出題されることがある「トロッコ問題」をご紹介します。

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トロッコ問題とは

トロッコ問題とは、

「ある人を助けるために他の人を犠牲にするのは許されるか?」

という倫理学の思考実験のことです。

ハーバード大学白熱講座・マイケルサンデル先生の講義でも取り上げられたことで、有名になりました。

トロッコ問題は、人間がどのように道徳的ジレンマを解決するかの手がかりとなると考えられており、道徳心理学、神経倫理学では重要な論題として扱われています。

最初に言っておかなければならないのは、トロッコ問題に正しい答えはないということです。

トロッコ問題が医学部の面接や小論文で出題される理由

ではなぜトロッコ問題が医学部の面接や小論文で出題されるのか。

それは、このトロッコ問題の答えを出すプロセス(過程)に、回答者の倫理観・道徳観が現れるため、医者としての適正があるかを見極める上で優れた問題だからです。

トロッコ問題が医学部の面接や小論文で出題される理由

では、早速皆さんにもトロッコ問題を実際に解いてもらいましょう。

まずは以下の2つの問題を、問題1から順に解いてみてください。

問題1
あなたは電車の運転手。

しかしながら運転中に電車のブレーキ機能が壊れてしまい、しばらく電車が止まらなくなってしまいます。

電車が進んでいくうちに線路Aと線路Bの分岐点が見えてきました。

もしハンドルを切り替えなければ、線路Aに進み、線路Aで工事をしている5人の作業員をひき殺すことになってしまいます。
一方、ハンドルを切り替えると、線路Bに進み、線路Bで工事をしている1人の作業員をひき殺すことになってしまいます。

あなたはどちらに進むのか選ぶことができます。

さて、ハンドルを切り替えますか?

問題2
あなたは橋の上にいます。

すると、橋下に暴走している電車を発見しました。

後に述べる唯一の方法を除き、この電車をしばらくとめることができません。

そしてこのままでは、その先で工事をしている5人の作業員を電車がひき殺してしまいます。

ところが、その電車を止める唯一の方法があります。

それは同じくあなたと橋の上にいる、あまりにも太った人を、あなたの手で橋の上から橋の下の線路へ突き落とすことです。

この場合、電車は止まりますが、目の前の1人はなくなってしまいます。

さて、あなたはこの人を押しますか?

問題1、問題2それぞれで自分なりの回答を考えてみてください。

トロッコ問題で多くの人の選ぶ回答とは?

最初に説明した通り、この問題に正解はありません。

最も多いであろう回答をあげると、

問題1の回答
ハンドルを切り替え、1人の人を犠牲にする選択肢を選ぶ

問題2の回答
目の前の人を押すことはできない

になるのではないでしょうか。

実際、ハーバード大学白熱教室でのアンケート結果も上記の通りでした。
問題2に関しては、2007年のTIMES誌のアンケートで85%が「目の前の人を押すことはできない」の回答を選んでいます。

引用:What Makes Us Moral. By Jeffrey KlugerWednesday, Nov. 21, 2007.

問題1の回答でハンドルを切り替える理由は、被害を最小限に抑えるためですね。

ベンサムの提唱した、「最大多数の最大幸福」という功利主義に基づく考え方です。

しかし、その考え方で臨むならば、問題2では目の前の人を押すという選択をしなければならないですよね。(目の前の1人の犠牲で、5人の命を救えるから。)

それでも、多くの人が問題2では目の前の人を押すという選択をできないし、そうするべきではないと考えます。

問題1と問題2の間に生じる矛盾。

トロッコ問題に答えがないのは、答えを出そうとするとこの矛盾が生じてしまうからなのです。

では、なぜトロッコ問題のような「答えのない問題」が医学部の面接や小論文で出題されるのか

多くの医学部では面接、一部は小論文の試験もありますが、大学側は面接・小論文の試験を通して受験生の人格や考え方などをできる限り見ようとしています。

そんな中で、この問題は「答えのない問題を考え続ける」という、常に医療の業界においてなさなければならない問題の例として挙げられているのです。

何かを成すとき、何かを捨てなければならないというのは当然のことであり、その利益と損失の両方を考えることは重要です。

間違っても「仕方がない」といって問題を放棄するのは、少なくとも医療従事者としてはやってはならないことなのです。

トロッコ問題を医療現場で実際に起こりえる(起きている)問題に例えてみると

トロッコ問題を医療の現場で実際に起こりえる(起きている)問題にあてはめた例題を紹介します。

試験に出題される際は、今回紹介する出題例のように医療現場に当てはめられた形で出題される場合が多いようです。

実際の試験だと思って、自分なりの答えとその答えに至った理由(プロセス)を言葉で説明してみてください。

(あえて答えを載せていませんので、自分なりに考えてみてください。)

出題例1.「緊急患者への臓器移植」

救急車が5人の重症患者を運んできました。
2人は腎臓を、他の3人はそれぞれ心臓・肝臓・肺を緊急移植すれば救命が可能です。

ドナーを探している時間的余裕はありません。

たまたま、救急室の隣で献血中の人の血液型が運ばれてきた5人と適合します。

あなたが外科医だったとして、5人の命を救うために献血中の患者に犠牲となってもらって臓器を移植しますか?

引用:http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02734_04

出題例2.「抗がん剤の保険適用」

ある研究者が、分子標的薬の抗がん剤の薬「二ボルマブ」を開発した。

この薬はがん患者のがん症状を緩和することが証明されている。
特に、タバコを吸う人の多い肺に対してのがん症状の緩和に効果があるとされており、平均の余命も1ヶ月ほど伸びるとされている。

しかしながら、この薬の値段は非常に高く、アメリカでは大金持ちしか利用ができない上、途上国では経済上の理由から見向きも去れない薬になるであろう。

さて、この薬を、がん患者の多い日本で保険適応することが、議論になっている。

高級すぎるこの薬は、もし保険適用すると、現在の医療費の95%以上を国民が支払う形となり、ほかの症状に対して支払うお金がなくなってしまう。

それでも、この薬は需要があるので、保険適用するべきだろうか。

実は、出題例2で紹介した薬「二ボルマブ」は実在する薬です。

二ボルマブは極めて高価な薬であり、その価格はわずか100mgで約73万円。
1年間使用すると、3,500万円にもなる超高額な薬のため、日本の医療財政の大きな負担になるという主張もなされています。

つまり、出題例2は実際に日本の医療現場で起きている問題です。

興味のある人は、「ニボルマブ」で検索してみてください。

最後に

大学に入ると、高校までの「答えのある問い」から、「自ら問題を見つけ、答えを探しにひたすら考える」ことに代わっていきます。

そして急速に科学技術が発展している中で、色々な事柄が複雑に結びついて、その結果たくさんの「答えのない問題」が私たちに投げかけられることでしょう。

今回紹介した問題を使って、ぜひ「答えのない問題」に対して自分なりの考えと理由を説明する練習をしてみてください!