徳島のつながり
―そんな神は、大学に入ってから困ったことはありましたか?
電車に乗るのが怖かった。徳島では電車乗ったことなかったから。
―え?徳島には電車ないんですか?
電車の見た目をした「汽車」は走ってるよ。電気じゃなくてエンジンで走ってるから汽車。でも駅が遠くて使ったことはなかった。
―じゃあ大学入って初めての電車だったんですね。
最初の頃は自分の降りたい駅で降りられなかった。「すみません、通して下さい」って言うのが怖くて(笑)
もうみんなが降りる駅で一緒に降りればいいやってなってた。
―サークルは何をされていましたか?
東大新聞を作ってた。2年生の執行代が終わるまで活動してて年に1回本も出してたよ。
―本を出すなんてすごい!なぜ東大新聞に入ろうと思ったんですか?
入学前に徳島出身の東大生の会で新入生歓迎会があって、そこで知り合った先輩の中に東大新聞の人がいたの。何かサークルには入りたいなって思ってたけど、運動は興味ないし、東大新聞をふらっと訪ねてみた。
―そこで自分に合うと思った?
そういうわけではないかな。田舎者だから人が怖すぎて、ほとんど新歓に参加できなくて、選択肢が少なかったから消去法で東大新聞に(笑)
―藤本さんは他に阿波踊りサークルに入っていると前に聞きました。それも誘われたんですか?
その徳島県出身の会では年2回立食パーティーがあって、そこに勧誘の人が来るの。
それで勧誘されて大学3年生から参加した。1年生のときからずっと誘われてたけど、まず飲み会に行くのが怖くて…
―何かしら怖いんですね(笑)
怖いよー、人怖い(笑)お酒も怖い(笑)
―阿波踊りはしっかり練習して参加するんですか?
東大の連(阿波踊りをする団体のこと)だと普段は月1回くらい。直前は練習が週1回くらいに増える。
―笠をつけて踊るんですよね?
それは女踊りね。女踊りは下駄を履かないといけなくて難しいの。
私は去年女踊りをやったけど、それまでは男踊りをやってた。
―性別とは関係ないんですか?
女踊りは女性しかできないけど、男踊りは男女どちらもするよ。
―知らなかったです!
教授の熱意に憧れて
―学部と院で大きく変わったことはありますか?
自分のことを見つめ直す時間が増えた。自分は学部を卒業して、院まで進んで将来は何がしたいのかなって。
―院に進むことは入学した時から決めていたんですか?
応化(応用化学科)に入ったときかな。
―なぜ応化に入ったんですか?
教養学部のときに応化の先生たちのオムニバス授業を取っていて、面白そうって思ったから。教授たちはみんな自分の好きなことを研究していて、そのロマンを語る姿を見て、そういう大人っていいなあって憧れた。
―実際に入ってみてどうでしたか?
応化に入ったときは行きたい研究室があったんだけど、その研究室のテーマである有機化学の講義が全然わからなくて…
教授が電子の気持ちを理解すれば有機は簡単だよって言うんだけど私には無理だった(笑)
それで有機の夢は打ち砕かれて、無機化学にはもともと興味がなくて、消去法で今の研究室に決めたんだよね。でも、元々薬学部志望で理二に入ったし、生化学を研究するうちの研究室は合ってるかなとも思った。
―博士課程に進学することは考えたことありますか?
応化に入ったときは考えてたよ。
―ロマンを追い求めたくて?
そう(笑)研究者になりたかったの。
―なぜ気が変わったんですか?
私が憧れた先生たちのように、自分の興味を熱意を持って語れる気がしなくてね。自分はサイエンスに対する純粋な興味で研究するんじゃなくて、何か明確な目的があってそのために研究がしたい人間なんだって気づいて、企業の研究職の方が向いてると思った。
―そう思うようになったのはいつ頃ですか?
修士課程になって研究をある程度本格的にやるようになった頃かな。私はこれからずっと「知りたい」という気持ちだけで研究していくのは無理だと思った。