【『教育による日本再興論』著者がおくる】勉強の捉え方が180°かわるモチベアップ講座

はじめに:「勉強はコスパがいい」?

「なぜ勉強しなきゃいけないんだろう?」
このような考えが頭をめぐり、なかなかやる気が出ない人はいませんか?

実は、生きていく上で「勉強コスパがいい」。そう語るのは、学習塾eisuCOOであり、『教育による日本再興論』著者の伊藤奈緒さんです。

大変に思える勉強もコスパがいいならば、もう少し頑張ってみようと思いませんか?今回は、教育のプロである伊藤さんに、勉強する意義頑張る秘訣を伺いました!

今回インタビューした方はこちら!


伊藤奈緒(いとう なお)さん

株式会社鈴鹿英数学院「eisu」 COO(最高執行責任者)/教育研究者/大学受験指導者。関西学院大学卒業後、eisuにて22年大学受験指導に携わる。同社COOを務める傍ら、三重大学大学院地域イノベーション学研究科を修了。

業界では珍しい女性リーダーとして講演・研修活動を行うほか、「伊藤奈緒の教育チャンネル」では動画配信もスタートさせ、教育に関する問題について発信を行っている。
「教壇に立って、自分の言葉で生徒の表情が変わったとき、教育っていいなと思ったんです」と笑顔で語る伊藤さん。故郷三重県での学生生活で得た、勉強が人生の武器になるという気づきと、教育が勉強姿勢を変え、日常生活を変え、ひいては人生を変えていくという信念のもとで活動をしているという。


(海星高校で特別授業をする伊藤さん)

なぜ勉強するべきなの?

勉強する意義が見出せない高校生も多いと思います。学生のうちに頑張って勉強することは、なぜ大切なのでしょうか?

ずばり、社会に出たときに「稼ぐ力」を得られるからだと思います。この「稼ぐ力」の大きさは、もちろん専門知識やスキルなどの数値で測りやすい能力にも左右されますが、目では見えない「非認知能力」が決める部分が大きいです

非認知能力には例えば計画力自制力がありますが、これらは受験勉強と向き合うなかで鍛えられる能力

志望校に合格するためには、この時期までに苦手科目を◯点上げなければならないから、今月は〇〇の勉強に力を入れよう、と戦略を立てることが必要ですよね。勉強のために遊びを我慢することも必要です。

そうやって非認知能力を高めてきた人とそうでない人だったら、企業に入って活躍してくれそうなのは、きっと前者ですよね。

「学歴フィルター」という言葉もありますが、私は意味のあるものだと思っています。企業は学歴を非認知能力の高さを図るものとして捉えているのではないでしょうか。

「同じように努力するなら、スポーツのほうがいい!」と思う人もいますよね。はっきりとした夢や目標があれば、それも素敵です。しかし、スポーツで第一線に立ち活躍できる期間は、若い期間に限定されてしまう現実があります。

一方、同じような努力を勉強に向けた場合に得られる知識は、一生涯にわたって役立ちます。将来が明確に描けていない人にとって、稼ぐ力が高められて、なおかつ汎用性の高い知識も身につくのですから、勉強はコスパがいい。将来本当にやりたいことができた時、積み上げた能力が役に立つと思いますよ。

そうはいってもなかなかやる気が出ない高校生は、どうしたらいいのでしょうか?

まずは、小さなことでも行動を起こしてみるのが大切だと思います。おすすめしたいのは、「得意な部分を勉強してみる」ことと、「勉強を頑張っている人たちの中に混ざってみる」ことです。

人間誰しも、やる気が出ない時はあると思うんです。大人だってあります。しかしそこで大崩れしないように、まずは取り組みやすい、自分が得意な部分を磨いてみると良いと思います。

そして、社会学の観点から見ても、人間は集団的な生き物で、環境に大きな影響を受けます。自習室でも塾のクラスでも、頑張っている人の中に身を置けば、意識も変わるはずですよ。

また、「やるべきこととその目的を明確にする」のもモチベーションアップのために必要だと思います

塾で生徒と面談をしていると、やる気がなかった子が「頑張るよ!」と言ってくれるのは、課題が明確になって、その課題の意味や目的を生徒自身が理解できた時が多いんです。

「勉強はコスパがいい」とのお言葉がありましたが、時代が変わってもそれは変わらないでしょうか?

もちろん変わらないと思います。

人間の汎用的な能力知能ですし、ましてや今、人間の競合は人工「知能」ですよね。AIに対抗していくためにもやはり、勉強して知能を伸ばしていく必要があります。

コスパはますます良くなっていくのではないでしょうか。

なかでも重要な科目は〇〇?

センター試験から共通テストへの移行で、問題の文章量が大きく増加しました。文章を読む力が重視されるのはなぜでしょうか?

第一に、情報社会に対応していくためだと思いますね。私たちが1日で目にする情報量は、10年前の1万倍になっているというデータもあります。真の情報だけでなく偽の情報も増えているなかで、文章を正確に速く読み解いて活用できる人が求められているのだと思います。

次に、AIにはない力を養うためでもあると思います。Chat GPTが注目されているように、近年は高度な文章を作成してくれるAIも多くなりました。

しかし、その文章の論理は通っているのか、事実が書かれているのか、最終的な判断は人間にしかできません「高度なツッコミ」には、文章を読む力と確固たる知識が必要なんです。

文章を読む力ということは、「国語」が重要になってくるということでしょうか?

ここで必要なのは広い意味での母国語スキルですが、教科で言えば国語ですね。

共通テストに限らず、入試問題を解くために、教科を横断して母国語力は必要です。例えば数学や物理の問題でも、複雑な問題文を理解しなければなりませんよね。

さらに英語でも、難関大学では論文が長文問題として出題されます。皆さんも経験があるかもしれませんが、論文は、英語を日本語に直しただけでは理解が難しいですよね。母国語で整理ができないと、英語と自分が持っている知識と掛け合わせて正解を導けないのです

英語の会話長文も同じように、母国語の会話が十分にできないと、英語の意味がわかっても誤った回答をしてしまうことがあります

「おかえり」と言われたら「ただいま」で返すのが普通ですよね。でも、母国語の会話では「疲れた」で返してもその場は成り立ってしまいます。そのような乱れたキャッチボールを続けていると、もっともらしいことが書かれた不正解の選択肢を選んでしまうかもしれません。

なるほど。重要な母国語ですが、国語、特に現代文は勉強の仕方がわからないという声も多いです。母国語の力を伸ばすためには、どのような勉強ができるのでしょうか?

国語は特殊な教科で、授業を頑張ったから、問題集を一定時間解いたからと言ってできるようになるものではないと思います。数学や理科は教室で新しく学んだものを日常に活かすものですが、国語は逆ですね日常で使っているものを、教室に持ち込むんです。

ですから、国語力は日常生活で使っている言葉の水準に大きく左右されてきます。国語を勉強しているそぶりがないのに、成績がいい人っていませんか?そのような人は、生活の中で高い母国語力が身についているのだと思います。

母国語力を上げるために、みなさんも日常生活のなかで触れる言葉を少しでもレベルの高いものにしてみてください。

例えば、少し難しいと思える言葉を使う人の発言を良く聞いたり、会話でも「なぜ?」「どのように?」と掘り下げたりしてみましょう。ニュースやインターネットの情報を、自分なりに言語化し直すのもいいですね

「点数が伸びない……」どうすればいい?

高校生の悩みの一つに、「頑張っているのに成績が伸びない」というものがあります。成績の伸び悩みとは、どのように付き合っていけば良いのでしょうか?

一番重要なのは、勉強していればいい時も悪い時もある、そして例え悪い時が続いても、頑張り続けていれば突破できる瞬間が来る、と認識することです。

有名な野球選手でさえ、大記録の前に停滞期を経験しています。高校生のみなさんに伸び悩みがあるのは当然です

「伸び悩み期」にも努力を重ねれば突破できる瞬間が来るというのは、認知科学でも実証されています。ですからみなさんも焦らずに勉強を続けてくださいね。

ただ気をつけた方がいいのは、受験期直前に伸び悩み期が来るともったいないということです

難関大学に合格する生徒を見ると、多くが受験の年度の5、6月に伸び悩みを経験し、突破した上で受験に臨んでいます。一方不合格になってしまう生徒は、伸び悩みを抜け出せないうちに受験に突入してしまっている場合がありますね。

誰にでも伸び悩み期はあるので、適切な時期に持ってこられるよう、早めに受験への意識を持って対策をし始めることが大切です

「伸び悩み期」にはモチベーションも下がりがちだと思うのですが、どのような勉強がおすすめですか?

「伸び悩んだな」と感じた時には、新しいことに取り組むのではなく、復習をしてみてください。焦って新しい問題に手を出したくなる気持ちもわかりますが、ぐっと我慢しましょう

知らないうちに抜け落ちてしまった知識解法をインプットし直すと、解けなくなっていた問題が解けて「わたしできるじゃん!」と自信に繋がりますよ

やる気が出にくいことも多いので、歴史の用語英単語・古文単語を書き出すなどの単純作業が取り組みやすいと思います。

「伸び悩み期」もそうですが、プレッシャーに苦しみながら勉強をしている受験生もいると思います。プレッシャーとはどのように向き合えば良いでしょうか?

プレッシャーを感じないのは無理ですよね。社会人になってからも、期限があったり、成果を出さなければいけなかったり……。でも、プレッシャーがかかるからこそいいパフォーマンスができる場合もあり、悪いものでもないと思います

受験では、自分の目標を見つけて、そこに向かって戦略を立てて、重圧に耐えながら努力する力を養えます。時代を生き抜いていくためにキーとなる非認知能力ですね。

メディアでは受験がのように表現されることもありますが、惑わされず、前向きに頑張ってほしいですね

おわりに:勉強のヒントが満載!『教育による日本再興論』

ここまでお聞きしてきた勉強との向き合い方ですが、伊藤さんの著書『教育による日本再興論』にエッセンスが詰まっています!


(2023年4月/IBCパブリッシング、本体1,600円+税)

今回触れた、「稼ぐ力」と勉強の関連や、母国語能力の捉え方が詳しく説明されているほか、今回触れることのできなかった、国語に取り組むための詳しいテクニックや近年注目される「プログラミング学習」の正体についてもよくわかる一冊となっています。

「今の日本にこそ充実した教育が必要」という伊藤さんの思いが詰まった同書。ぜひ読んで学習の参考にしてみてくださいね!