和積・積和の公式の覚え方・証明の仕方・使いどころ
積和・和積の公式を正しく覚えていますか?
合計で8個も公式があり、どれも形が似ていて三角関数の公式の中でも厄介だと思っている人もいるでしょう。
積和・和積の公式は証明で導くことも出来ますが、覚えておくにこしたことはありません。
この記事では、積和・和積の公式の覚え方と証明の仕方、実際の問題における使いどころを、初めての人から復習したい人までに向けて解説しています。
この記事を読んで積和・和積の公式を得意分野にしましょう。
目次
三角関数の積和・和積の公式の覚え方
積和・和積の公式は以下の通りです。
名前の通り、積和の公式は三角関数の積を和に、和積の公式は和を積にするために利用します。
ただでさえ公式が多いのにい、8つも新たに登場して困惑される方もいるでしょう。
積和・和積の公式は後で証明するように加法定理から簡単に導けます。
そのため、覚えるのが苦手な人は証明を理解すれば、覚えなくても大丈夫です。
「覚えるのが苦手だけど、わざわざ導きたくない!」という人のために語呂合わせを紹介します。
積和の公式の覚え方(語呂合わせ)
この語呂で覚えるために、まず積和の公式の基本的な形を頭に入れましょう。
三角関数A×三角関数B=±1/2{三角関数(A+B)±三角関数(A-B)}となっています。
それを理解した上で語呂合わせを利用することにより4つの公式がまとめて覚えることができます。
4つめの「ポー」がマイナスを表していますので、sinAsinBのときだけ先頭に「-」がつくことに注意しましょう。
和積の公式の覚え方(語呂合わせ)
次に和積の公式の語呂合わせを紹介します。
和積の公式でもまずは基本的な形に注目しましょう。
三角関数A+三角関数B=2三角関数{(A+B)/2}三角関数{(A-B)/2}
となっているのが分かります。(符号は省略)
その上で語呂を覚えると和積の公式をすべて覚えることができます。
注意点としては、和積の公式の4つめの「まだ」です。
4つめだけマイナスが付いていることに気をつけましょう。
積和・和積の公式の証明
それでは積和・和積の公式を証明していきます。
利用するのは加法定理です。そのため、加法定理の理解があやふやだと正しく導くことができません。
もしど忘れしていたり、復習したい場合は以下の記事を参考にしてください。覚え方も解説してます。
積和の公式の証明
まずは加法定理を確認しましょう。
証明において上から順番に①②③④とします。
加法定理の各式を足し引きすることで導き出していきます。
①+②より
\(\sin(α+β)+\sin(α-β)=2\sinα\cosβ \)
よって整理すると
\(\sinα\cosβ=\frac{1}{2}\{\sin(α+β)+\sin(α-β)\}・・・(1)\)
以上のように一瞬で1つめの公式を導くことができましたね。
この調子で残り3つの式も証明していきます。
①-②より
\(\sin(α+β)-\sin(α-β)=2\cosα\sinβ \)
よって整理すると
\(\cosα\sinβ=\frac{1}{2}\{\sin(α+β)-\sin(α-β)\}・・・(2)\)
③+④より
\(\cos(α+β)+\cos(α-β)=2\cosα\cosβ \)
よって整理すると
\(\cosα\cosβ=\frac{1}{2}\{\cos(α+β)+\cos(α-β)\}・・・(3)\)
③-④より
\(\cos(α+β)-\cos(α-β)=-2\sinα\sinβ \)
よって整理すると
\(\cosα\cosβ=-\frac{1}{2}\{\cos(α+β)-\cos(α-β)\}・・・(4)\)
(1)〜(4)で積和の公式は示された。(証明終了)
積和の公式の証明のポイント
以上のように足すまたは引くだけで積和の公式を導くことができます。
先程紹介した語呂を覚えるまでもないという方は証明を覚えてしまうと良いと思います。
和積の公式の証明
次に和積の公式の証明を行います。和積の公式の証明には積和の公式を利用します。
具体的にはA=α+β、B=α-βを積和の公式に代入していきます。
\(A=α+β,B=α-β\)
とする。これより
\(α=\frac{A+B}{2},β=\frac{A-B}{2}\)
これを\(\sinα\cosβ=\frac{1}{2}\{\sin(α+β)+\sin(α-β)\}\)に代入すると
\(\sin\frac{A+B}{2}\cos\frac{A-B}{2}=\frac{1}{2}(sinA+sinB)\)
これを整理すると
\(sinA+sinB=2\sin\frac{A+B}{2}\cos\frac{A-B}{2}・・・(5)\)
このようにA=α+β、B=α-βを積和の公式に代入して式を整理するだけで和積の公式を導くことができるのです。
証明が簡単すぎて繰り返しになってしまいますが、残りの式も証明しておきます。
\(\cosα\sinβ=\frac{1}{2}\{\sin(α+β)-\sin(α-β)\}\)のα、βに代入すると
\(\cos\frac{A+B}{2}\sin\frac{A-B}{2}=\frac{1}{2}(sinA-sinB)\)
これを整理すると
\(sinA-sinB=2\cos\frac{A+B}{2}\sin\frac{A-B}{2}・・・(6)\)
\(\cosα\cosβ=\frac{1}{2}\{\cos(α+β)+\cos(α-β)\}\)のα、βに代入すると
\(\cos\frac{A+B}{2}\cos\frac{A-B}{2}=\frac{1}{2}(cosA+cosB)\)
これを整理すると
\(cosA+cosB=2\cos\frac{A+B}{2}\cos\frac{A-B}{2}・・・(7)\)
\(\sinα\sinβ=-\frac{1}{2}\{\cos(α+β)0\cos(α-β)\}\)のα、βに代入すると
\(\sin\frac{A+B}{2}\sin\frac{A-B}{2}=\frac{1}{2}(cosA-cosB)\)
これを整理すると
\(cosA-cosB=2\sin\frac{A+B}{2}\sin\frac{A-B}{2}・・・(8)\)
以上で証明は終了です。量は多いですが、1つ1つの証明は加法定理の証明に比べれば容易だと感じたでしょう。
そのため、語呂と合わせて証明も覚えてしまうと万が一あやふやになったときでも安心ですよ。
積和・和積の公式の使いどころ
それでは実際の問題で使いどころを確認していきましょう。
問題
\(sin\frac{7π}{12}+sin\frac{π}{12}\)
の値を求めよ。
解説
加法定理を利用することもできそうですが、ここではsinの和の値を求めるので、和積の公式を使った方が良さそうですね。
和積の公式に代入していきましょう。
\begin{align}
sinA+sinB&=2\sin\frac{A+B}{2}\cos\frac{A-B}{2} \\
sin\frac{7π}{12}+sin\frac{π}{12}&=2\sin\frac{\frac{7π}{12}+\frac{π}{12}}{2}\cos\frac{\frac{7π}{12}-\frac{π}{12}}{2} \\
&=2\sin\frac{π}{3}\cos\frac{π}{4} \\
&=2・\frac{\sqrt{3}}{2}・\frac{\sqrt{2}}{2} \\
&=\frac{\sqrt{6}}{2}・・・(答)
\end{align}
\(\)
積和和積の公式が面倒くさいのは見かけだけ!
積和和積の公式は数は多いですが、どれも加法定理から簡単に導くことができ、決して難しい内容ではないことがわかってもらえたと思います。
問題を解く際に「積和和積の公式が使えるかも」という意識を持っておくことで不要な計算を減らすことができます。
この記事で紹介した語呂や証明で積和・和積の公式をぜひマスターしてください。