はじめに:これだけ知っとけ!和歌に関する古文常識まとめ
みなさん、古文の和歌は得意ですか?
普通の古文と違って、和歌は掛詞や枕詞など、歌として意識すべきポイントがたくさんあって読みにくいですよね。
「掛詞を抜き出して書きなさい」と指示されているのに、どれが掛詞でどれが普通の言葉なのかわからない、と困った経験のある人も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、知っておくと便利な和歌に関する古文常識をわかりやすくまとめて紹介します!
もうすぐ古文のテストがある人、古文の和歌の読解に自信がない人は、ぜひ最後まで読んでみてくださいね〜。
- 荻野文子『和歌の修辞法ー荻野文子の特講マドンナ古文(大学受験超基礎シリーズ)』学研プラス、2004年。
- 北村七呂和『SPEED攻略10日間 国語 和歌』Z会出版、2012年。
- 仲光雄『速読古文常識』Z会出版、2004年。
目次
知っておくと便利な和歌に関する古文常識
この記事では、古文の和歌を解釈する上で必須となる「掛詞」・「枕詞」・「縁語」・「序詞」について紹介します。
この4つの知識を持っていると、和歌に関して致命的な読解ミスをすることはなくなります。しっかり学習しましょう!
和歌に関する古文常識①:掛詞
掛詞の基本
まずは掛詞です。
掛詞とは、同音異義語を使って1つの表現に2つの意味を含ませるレトリック(修辞的な技術)のことです。
和歌には、1つの歌の中に2つの意味が込められていることがよくあります。この2つの意味を繋いでいるのが掛詞なのです。
例えば、小野小町の
「花の色は うつりにけりな いたずらに わが身世にふる ながめせしまに」
には、
「ふる」という表現に「(雨が)降る」と「(年が)経る」、「ながめ」という表現に「長雨」と「眺め」という2つの意味がそれぞれ込められています。
基本的に、一方の意味が自然に関する意味(雨が降るとか、長雨になるとか)で、他方の意味が人の心情や行動に関する意味(年が経つとか、眺めるとか)になります。
ですから掛詞を探すときは、自然物と人間に関する物の両方を含み込めるような表現に注目してくださいね。
重要な掛詞
注意深く探す時間があれば、だいたい和歌でも掛詞を見つけられますが、試験時間が限られている場合だとゆっくり探す時間はありませんよね。
そこで、頻出の掛詞をリストアップしてみました。テスト前の参考にしてみてくださいね。
- 「あき」(秋、飽き)
- 「あま」(尼、海女)
- 「うき」(浮き、憂き)
- 「かりね」(刈り根、仮寝)
- 「かる」(枯る、離る)
- 「ながめ」(長雨、眺め)
- 「ふる」(降る、経る)
- 「まつ」(松、待つ)
- 「みをつくし」(澪標、身を尽くし)
- 「よる」(夜、寄る)
和歌に関する古文常識②:枕詞
枕詞の基本
お次は枕詞です。
枕詞とは、和歌の初句に置かれ、その後に出てくる特定の言葉を導くために使われる言葉です。
たとえば、在原業平の
「ちはやふる 神代も聞かず 竜田川 から紅に 水くくるとは」
という歌では、「ちはやふる」が枕詞となって、「神」という言葉を導いています。
枕詞自体に意味はないので、訳出する必要はありません。その代わり、枕詞が導いている言葉は確実に訳出するようにしましょう。
重要な枕詞
枕詞と、枕詞が導く言葉との繋がりは、考えてわかるものではありません。
ですから、重要な枕詞は、その枕詞が導く言葉と一緒に組み合わせて覚えておく必要があります。
重要な枕詞は以下にまとめてありますので、テスト前によく確認するようにしてくださいね。
- あかねさす→日
- あしひきの→山
- あをによし→奈良
- いそのかみ→降る、古る
- うつせみの→世、命
- くさまくら→旅
- たらちねの→母
- ちはやふる→神
- ぬばたまの→夜、夢
- ひさかたの→天、空
和歌に関する古文常識③:縁語
縁語の基本
3つ目は縁語です。
縁語とは、ある言葉を起点に連想によってつながる一連の表現を和歌の中に組み入れる技術のことです。
口で言ってもなんのことやら……となるので、具体例を見てみましょう。
「唐衣 きつつなれにし つましあらば はるばるきぬる 旅をしぞ思う」
伊勢物語で在原業平が詠んだ歌です。この歌の中に縁語が隠されているのですが、みなさんは見つけられますか?
初句に「衣」という言葉がありますよね。二句には「きつつ=着つつ」と「なれ=馴れ」が、三句には「つま=褄」、四句には「はる=張る」と、「衣」から連想可能な言葉が並んでいます。
この在原業平の和歌には、「長年一緒にいた妻と離れて、一人長い旅をしているなあ」という旅情が読まれている一方で、
「この唐衣は、長旅の間ずっと着ているものなんだよなぁ」というしみじみとした気持ちが詠まれているのです。
縁語は、掛詞と同じく、1つの和歌に複数の意味を織り込ませる技術だというわけですね。
重要な縁語
縁語は常識的に考えてわかるものが多いですが、現代の私たちと平安貴族の皆さんとでは住んでいる世界が違うので、なかなか連想が難しいものもあります。
そこで、以下に重要な縁語をまとめました。参考にしてみてくださいね。
- 衣:着る、馴る、褄、張る、裁つ
- 波:立つ、寄る、返る
- 弓:張る、引く
- 露:消ゆ、置く、結ぶ
- 糸:絶ゆ、綻ぶ
和歌に関する古文常識④:序詞
序詞の基本
最後は序詞です。
序詞とは、ある表現(基本的に5音)を導くために和歌の初めに置かれる7音以上の言葉のことです。
序詞もわかりにくいので、例を挙げて説明します。
崇徳院が詠んだ歌の中に、
「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ」
という歌があります。この歌の上の句(瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の)が序詞として機能して、「われても末に」にかかっているのです。
滝川の水の流れが分かれても、「末に」(最後に)は合流する、という意味ですね。
序詞の種類
序詞には、
- 比喩によって作られる序詞
- 掛詞によって作られる序詞
- 同音語句によって作られる序詞
の3つがあります。
①の例としては、
「あしひきの 山鳥の尾の しだりおの 長々し夜を 一人かも寝む」
があります。この歌では、上の句全体が序詞となり、「長々し」を導いていますね。
山鳥の尾の長さが、夜の長さの比喩として機能しているわけです。
②の序詞を使った和歌の例としては、
「風吹けば 沖つ白波 たつた山 夜半にや君が 一人越ゆらむ」
が挙げられます。ここでは、「風吹けば 沖つ白波」が序詞で、「たつた山」を導いています。「竜田山」という名称と「(白波が)立つ」という現象が掛詞として和歌の中に読み込まれているのです。
③の例は、
「住之江の 岸による波 夜さへや 夢の通ひ路 人目よくらむ」
が挙げられます。「住之江の 岸による波」が序詞となって、「夜さへや」を導いています。「(岸に)寄る」と「夜」が同音語句として繋がっているわけですね。
というわけで、①比喩・②掛詞・③同音語句の3つを意識すると序詞を見つけやすくなります。ぜひ実践してみてくださいね。
おわりに:古文常識を知れば、和歌はもっと読みやすくなる
いかがでしたか?
この記事では、古文の和歌を読む上で役に立つ基本的な4つの知識(掛詞・枕詞・縁語・序詞)を、具体例を交えつつわかりやすく解説しました。
この記事で紹介した知識を押さえておくと、和歌がもっと読みやすくなります。
和歌が読みやすくなれば、古文の点数がグッと上がるのはもちろん、文学として和歌を楽しめるようになります。
ぜひ和歌に関する知識を増やして、古文の世界を楽しんでくださいね。
それでは!!