はじめに:古文に出てくる登場人物をわかりやすく解説!
みなさん、古文を読んでいるときに、「登場人物多すぎて訳がわからない……」と困った経験、ありませんか?
私は受験生時代、『源氏物語』や『大鏡』など登場人物が多い作品を読んでは「誰が誰なんかわからん〜〜!」となってパニックに陥っていました。
古文は登場人物を知らないと、単語や文法がわかっていても読みにくくなりますよね。
そこでこの記事では、登場人物が比較的多い2つの作品(大鏡・枕草子)について、その人間関係をわかりやすく紹介します。
源氏物語の人間関係については以下の記事で説明しているので、源氏物語に興味がある方はこちらも併せて読んでみてくださいね〜!
目次
古文に出てくる重要な登場人物まとめ①:大鏡
はじめに説明するのは、平安時代に書かれた歴史物語『大鏡』です。
『大鏡』は「四鏡」と呼ばれている作品群(『大鏡』・『今鏡』・『水鏡』・『増鏡』)の1つで、最も古い時代に書かれた作品です。
『大鏡』は単なる歴史物語ではなく、190歳の老人・大宅世継と180歳の老人・夏山繁樹と若い侍の3人が、昔話を語るという形式で展開されるストーリーになっています。
メインの語り手は大宅世継と夏山繁樹で、若い侍はときどき2人の話に感想を述べる役割になっています。
大宅世継と夏山繁樹が語るのは、藤原道長が宮廷の頂点に立つ時代の歴史秘話ヒストリアです。
普通の歴史では語られてこなかった、道長政治の裏話が紀伝体形式でたくさん詰め込まれています。
昼ドラのような人間関係の話が好きな人は、きっと『大鏡』を楽しめると思います!
それでは、簡単に『大鏡』の登場人物を見ていきましょう〜。
大鏡の登場人物の概略
まずは以下の図を見てください。
青い背景になっている3人(兼家・兼通・伊尹)が兄弟関係にあります。長男が伊尹、次男が兼通、三男が兼家です。
伊尹の孫には花山帝という人物がいます。「帝」と呼ばれている通り、一時は天皇になった人物です。
兼家は1人の女性と3人の男性をもうけました。兼家の娘が詮子、息子が道隆(長男)・道兼(次男)・道長(三男)です。
道隆は一男一女(長男・伊周、長女・定子)をもうけ、道長も同じく一男一女(長男・頼通、長女・彰子)をもうけました。
以上を踏まえて、『大鏡』で描かれている具体的な人間関係を見ていきましょう。
兼家と兼通
伊尹・兼通・兼家の3人の中で最初に関白になったのは伊尹でしたが、程なくして伊尹は死去してしまいます。
伊尹の死後、関白の地位は兄弟の順に従って兼通に与えられました。
順当に行けば、兼通の次に関白になるのは兼家のはずですが、実は兼通と兼家は、権力をめぐって争い続けてきた犬猿の仲でした。
兼通からすれば、たとえ自分が死ぬとしても、関白の地位だけは兼家には譲りたくありません。
そこで兼通は、自分が間も無く死ぬという臨終の際に、関白の地位を従兄弟である頼忠に与え、兼家の関白就任を阻止しました。
しかし結局、兼通の裏工作も空しく、兼家は頼忠の後に関白の地位につくことになります。兼通、完全に噛ませ犬キャラですね……。
花山帝の出家(道兼の策略)
伊尹の孫に花山帝という人物がいますが、この人は藤原道兼の策略で悲しい末路を迎えてしまう悲劇の人物です。
愛する妻に先立たれた花山帝は悲しみに暮れる日々を過ごしていました。
そんな花山帝の様子を見かねた道兼は、花山帝を出家に誘います。私(道兼)も出家するので、一緒にどうですか?と勧誘したわけです。
その言葉に背中を押された花山帝は出家を決意し、道兼とともに元慶寺という寺院を訪れます。
花山帝が正式に元慶寺で出家すると、道兼は「親に出家の許可をもらってくる」と嘘をついて都に戻り、二度と帰ってくることはありませんでした。
ここで花山帝は、自分がハメられたことに気がつきました。なんとも悲運な人物ですね……。
道長と伊周
『大鏡』所収のエピソードで最も有名なのが道長と伊周の競射でしょう。
藤原伊周が父・道隆やその取り巻きたちと一緒に競射(射的の競争)をしているところへ、道長がやってきました。
道長は伊周と競射で対決し、僅差で伊周に勝利します。
しかし、当時の伊周は次世代の関白と目される人物だったので、父の道隆(当時の関白)はなんとかして伊周を勝たせたいと思いました。
そこで道隆は、競射の延長戦を提案します。
道長からすれば面白くない話ですが、相手は関白なので逆らえません。そこで道長は再度伊周と競射を行い、再び勝利します。
道隆・伊周は、勝たねばならない勝負で負けてしまい、大変恥ずかしい思いをしてしまいました。
この出来事をきっかけに、次世代の関白として道長が有力視されるようになり、伊周の名声は徐々にかき消されることになっていきます。
物語的には、伊周は噛ませ犬のように見えますが、道長も甥っ子相手に大人気ないですよね……。
古文に出てくる重要な登場人物まとめ②:枕草子
次に紹介するのは、日本三大随筆の1つ『枕草子』(清少納言)です。
『枕草子』は三大随筆の中でも最も古い時代に書かれ、後の『徒然草』(兼好法師)・『方丈記』(鴨長明)にも影響を与えました。
この『枕草子』に出てくる登場人物同士の関係は、だいたい以下のようにまとめられます。
中心になるのは、書き手である清少納言と、清少納言が女房として仕えた定子ですが、その他にも定子の夫である一条帝や、定子の兄に当たる伊周はよく出てきます。
そこで以下では、『枕草子』作中でこれらの登場人物がどのように表現されているかを紹介していきます。
古文に出てくる登場人物は、必ずしも本名で呼ばれるわけではないので注意しましょう。
上・上の御前
『枕草子』で「上」・「上の御前」と書かれた人物が出てきたら、間違いなく一条帝のことを指します。
一条帝が出てくるところには、大抵定子も登場するので注意して読みましょう。
「上」と書かれていなくても、「奏す」など天皇にしか用いない敬語が出てきたらその場に一条帝がいると考えてください。
もはや名前を出す必要がないほど、宮中では重要な人物だということです。
宮・宮の御前
一条帝(上・上の御前)と一緒に頻繁に登場するのが、中宮定子です。
『枕草子』の作者・清少納言が女房として仕えた定子は、作品中では主に「宮」・「宮の御前」と呼ばれています。
定子は才色兼備な人物でした。大変な美貌を持っているのはもちろん、漢学や音楽にも精通し、ハイカルチャーな清少納言と大変仲が良かったと伝えられています。
一説によれば、清少納言が『枕草子』を書き始めたのは、定子から草子(紙)をもらったことがきっかけだったとか。
定子なしには『枕草子』はなかったかもしれない、そのくらい重要な人物なのですね。
大納言殿
定子にとって非常な重要な人物の一人として、兄・藤原伊周がいます。
伊周は大納言の地位についていたので、作中では大抵「大納言殿」と呼ばれて登場しています。
伊周は定子を大変気にかけていたようで、頻繁に定子にもとへ足を運んでいました。いいお兄さんだったのですね。
主語なし
『枕草子』作中で、特に主語が示されない文があった場合は、その文の主語が清少納言である可能性を視野に入れておきましょう。
清少納言は、『枕草子』作中では比較的身分の低い女房です。したがって、自分から名前を示すことはあまりしません。
それに、作中では基本的に清少納言の周囲の人々が描かれているのですから、清少納言自身はナレーターに徹していることがほとんどです。
特に言及はされていなくても、必ず物語の背後にいる人。それが清少納言です。
おわりに:登場人物を理解すれば、古文はもっと読みやすくなる!
いかがでしたか?
この記事では、登場人物が比較的多い古文作品『大鏡』・『枕草子』について、その人間関係をわかりやすく紹介してきました。
登場人物同士の関係を理解するだけで、古文はグッと読みやすくなります。
ぜひこの記事の内容を踏まえて、もう一度『大鏡』や『枕草子』を読んでみてくださいね。
それでは!!