【パターン別】難関大で頻出!「不等式の証明問題」の定石や解法を紹介

はじめに

難関大学を目指している受験生は、数学の過去問や問題集を演習する中で不等式の証明問題を数多く目にしていませんか?

不等式の証明問題は、旧帝大や医学部の入試で頻出であるにも関わらず、解法を整理できている受験生は多くはありません。

そこでこの記事では、不等式の証明問題の解法の手順を紹介します。不等式問題に自信をもって取り組めるようになりましょう。

不等式の証明問題の解法の整理

不等式の証明問題を目の前にして、「何を考えればよいか」がわからず、手が止まってしまうことはありませんか?

不等式の証明問題は、全ての問題に共通した解法と関数によって使い分ける解法に整理されています。

解法の整理ができていないと、不等式問題でつまづくことが多くあります。

ここからは、不等式の証明問題の具体的な解き方について解説します。

まずは不等式の証明問題の定石を使う:(左辺)\(-\)(右辺)

多くの不等式問題が、「\(f(x)>g(x)\)を示せ。」のような出題形式をとります。

不等式の問題を見たら、とりあえず「(左辺)\(-\)(右辺)」を考えるようにしましょう。

これが不等式の証明問題の定石です。

具体的な方針としては、まず「(左辺)\(-\)(右辺)」つまり、\(h(x)=f(x)-g(x)\)を考えます。

その後、\(h(x)>0\)を示すことで、\(f(x)>g(x)\)を証明します。

紹介した定石は不等式の最も基本的な考え方です。もちろん、定石を使わない問題もありますが、この定石は使えるようになるまで学習しましょう。

次に証明する関数が有理式なのかどうか見分ける

次に、「(左辺)\(-\)(右辺)」を考えた後の証明方法について解説します。

証明の方針は、フローチャートのように関数によって大きく2パターンに分かれています。

パターン1:証明する関数が有理式

証明する関数が有理式の場合における解法を紹介します。

有理式とは、整式分数式をまとめた総称です。例えば、\(x,\frac{1}{x}\)が有理式に分類されます。

関数が有理式の場合は、因数分解を続けたり、基本対称式をヒントにした解法で考えてみましょう。

また、\(f(x)>0,g(x)>0\)の場合、両辺の二乗\(f(x)^2-g(x)^2>0\)を考えたり、相加相乗平均を考えたりする場合もあります。

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2020.08.16

パターン2:証明する関数が複雑な関数の場合

次に、\(\log x,\sin x,\cos x\)など複雑な関数が出てきた場合の解き方を紹介します。

この場合の有効な解法の一つに、\(h(x)\)の微分を考え、関数の増減を調べる方法があります。

1次導関数だけでは証明できず、2次導関数まで考える必要がある問題もありますね。

複雑な関数の問題では、微分が基本的な解法です。微分を用いた解き方は、有理式にも使えます。

不等式の証明問題をパターンごとに演習

紹介した定石とパターン分けが、あまりピンときていない高校生もいるはずです。

例題を通して、解法を実際にどのように使うのか学んでいきましょう!

パターン1を用いる問題

問題

実数x,y,z,a,b,cについて\((a^2+b^2+c^2)(x^2+y^2+z^2)≧(ax+by+cz)^2\)が成立することを示せ。

  • 解法の方針

まずは不等式の証明問題の定石である「(左辺)\(-\)(右辺)」を考えます。

次に、式が有理式なので、パターン1を用います。フローチャートにあるように、展開して因数分解を行います。

証明

まず、「(左辺)\(-\)(右辺)」を考える。
\begin{gather}
(a^2+b^2+c^2)(x^2+y^2+z^2) – (ax+by+cz)^2 \notag \\
= a^2y^2+a^2z^2+b^2x^2+b^2c^2+c^2x^2+c^2y^2-2abxy-2bcyz-2cazx \notag \\
=(ay-bx)^2+(bz-cy)^2+(az-cx)^2 ・・・⓵
\end{gather}
\((実数)^2≧0\) より、⓵について
\begin{gather}
(ay-bx)^2+(bz-cy)^2+(az-cz)^2 ≧ 0 ・・・⓶
\end{gather}
が成り立つ。

⓶より、(左辺)\(-\)(右辺)≧0が示された。

よって、\((a^2+b^2+c^2)(x^2+y^2+z^2) ≧ (ax+by+cz)^2\)が成立する。

等号成立条件は、\((ay-bx)=0\)かつ\((bz-cy)=0\)かつ\((az-cx)=0\)である。

パターン2を用いる問題

問題

x≧0において \(\cos x ≧ 1-\frac{x^2}{2}\)が成立することを示せ。

  • 解法の方針

今回の問題は、\(\cos x\)という複雑な関数が出てくる場合ですね。この場合も先ほどと同じく、不等式の証明問題の定石である「(左辺)\(-\)(右辺)」を考えます。

次に、パターン2の分類にあるように、微分して増減を調べます。

証明

\(h(x)=\)(左辺)\(-\)(右辺)とおく。

\begin{gather}
h(x) = \cos x -(1-\frac{x^2}{2})
\end{gather}
\(h(x)\)を微分して
\begin{gather}
h'(x) = -\sin x + x \\
h”(x) = -\cos x + 1 ≧ 0
\end{gather}

\(0 ≦ x ≦ \frac{\pi}{2}\)において
\(h”(x) = -\cos x + 1 ≧ 0\)より、\(h'(x)\)は単調増加である。
\(h'(0) = 0\)より、\(h'(x) = -\sin x + x ≧ 0\)よって、\(h(x)\)は単調増加である。

\( x ≧ \frac{\pi}{2} \)において
\(\sin x ≦ \frac{\pi}{2}\)だから、\(h'(x) = -\sin x + x ≧ 0\)である。よって、\(h(x)\)は単調増加である。

以上から、\(x ≧ 0\)において、\(h(x)\)は単調増加であり、\(h(0)=0\)であるから、\(h(0) ≧ 0\)が示された。

よって、 \(\cos x ≧ 1-\frac{x^2}{2}\)が示された。

例外編:定石を使わない問題

問題

次の等式が成り立つことを示せ。
\[ \sum_{k=1}^\infty \frac{1}{k}=\infty\]

最後に不等式の応用問題を紹介します。この問題は、自分で証明に必要な不等式を導き出す必要があるところが難しいですよ。

  • 解法の方針

まずは、\(y=\frac{1}{x}\)を図示しましょう。この問題は、解法が一目見てわからないので、図示から方針を得ていきます。

次に、解法に必要な不等式 \(\frac{1}{k} > \int_{k}^{k+1} \frac{1}{x} dx \)を自分で用意します。

証明

\(k=1,2,3…\)において\(\frac{1}{k} > \int_{k}^{k+1} \frac{1}{x} dx \)が成立する。

両辺の和を考えて、
\[\sum_{k=1}^n \frac{1}{k} > \sum_{k=1}^n \int_{k}^{k+1} \frac{1}{x} dx \]

\[\sum_{k=1}^n \frac{1}{k} > \int_{1}^{n+1} \frac{1}{x} dx \]

\[ \sum_{k=1}^n \frac{1}{k} > \log (n+1) \]が求まる。

追い出しの原理から、\[\sum_{k=1}^\infty \frac{1}{k}= \infty \]が示される。

このように、「(左辺)\(-\)(右辺)」の定石を使わない場合もあります。

とくに、難関大の入試では例題のように、証明に必要な不等式を用意するテクニックが求められます。

不等式では積分二項定理を使う解法もあることを、例題から学んでほしいです。

おわりに

不等式の証明問題で使われる解法は、問題によってまちまちです。

その分難易度が高くなりがちですが、紹介した定石やパターン分けは、問われる頻度が高く基本となる考え方です。

問題演習を通して、定石パターン分けを理解して、実践できるようになりましょう。

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