はじめに
今回は、3倍角の公式を初めて学習する人や復習したい人に向けて、公式の覚え方、証明の方法、さらに問題の解説を丁寧に行います。
3倍角の公式は応用的な公式です。覚えていなくてもなんとかなるかもしれません。
しかし応用的な公式ほど、いざという時意外な効力を発揮します。
ぜひ最後まで読んで、3倍角の公式を完璧にマスターしましょう!
目次
3倍角の公式
3倍角の公式は以下のようになっています。
3倍角の公式の導く計算は難しくありませんが、煩雑でミスをしやすいので、丸暗記することをおすすめします。
3倍角の公式の覚え方(語呂合わせ)
\(\sin3θ=3\sinθ-4\sin^3θ\)は
「サンシャイン(3sinθ)引いて(ー)、夜(4)風が身(3)に染(sin)みる」と覚えましょう。
太陽が沈み、寒くなった情景を思い浮かべながら唱えると覚えられると思います。
また登場する数字は、左から順番になっているので\(4\sin^3θ\)の数字を間違えないようにしましょう。
3倍角の公式はsinだけ覚えていれば、十分です。
なぜならcosの3倍角の公式は、sinの3倍角の公式のsinとcosとを入れ替えて、マイナスをかけたものと同じだからです。
sinの3倍角の式だけ、語呂を駆使してなんとか覚えてしまいましょう。
3倍角の公式の証明をわかりやすく解説
公式を覚えたところで、証明をしていきましょう。
3倍角の公式の証明は、加法定理と倍角の公式を利用します。
「加法定理覚えてない……」
「倍角の公式ってどんなだっけ」
という方は、以下の記事を見てから読み進めると、理解が深まります。
sinの3倍角の公式の証明
証明の基本的な指針は、加法定理を利用して「θ+2θ」を計算することです。
それでは見ていきましょう。
sinの加法定理は「咲いたコスモス、コスモス咲いた」だったので、
\begin{align}
\sin(3θ)&=\sin(θ+2θ) \\
&=\sinθ\cos2θ+\cosθ\sin2θ
\end{align}
となります。
まずは加法定理を利用してθと2θに分解しました。
次に倍角の公式を利用してこの式をさらにθのみで表します。
sinの2倍角の公式は「庭に咲いたコスモス」です。
cosの2倍角の公式は、後の計算のために\(1-2sin^2θ\)の形を利用します。
\begin{align}
&=\sinθ(1-2\sin^2θ)+\cosθ・2\sinθ\cosθ \\
&=\sinθ-2\sin^3θ+2\sinθ\cos^2θ \\
\end{align}
最後に、残ったcosθをsinθで表しましょう。
\(cos^2θ=1-sin^2θ\)を利用します。
\begin{align}
&=\sinθ-2\sin^3θ+2\sinθ・(1-sin^2θ)\\
&=3sinθ-4sin^3θ(証明終了)
\end{align}
\(\sin3θ=3\sinθ-4\sin^3θ\)を証明することができましたね。
特別変わったテクニックを使うでもなく導くことができますが、見ての通り、計算が多く面倒です。
「加法定理を利用して証明できる」ということだけを覚えておきましょう。
cosの3倍角の公式の証明
次にcosの3倍角の公式の証明をします。
お察しの通り、sinの場合と同様に加法定理を適用してcos(θ+2θ)を計算するだけです。
cosの加法定理は「コスモスコスモス、咲いた咲いた」だったので
\begin{align}
\cos3θ&=\cos(θ+2θ) \\
&=\cosθ\cos2θ-sinθsin2θ\\
\end{align}
となります。
最後まで計算すると、
\begin{align}
&=\cosθ(2\cos^2θ-1)-\sinθ・2\sinθ\cosθ \\
&=2\cos^3θ-\cosθ-2\sin^2θ\cosθ\\
&=2\cos^3θ-\cosθ-2(1-cos^2θ)\cosθ\\
&=4\cos^3θ-3\cosθ(証明終了)
\end{align}
無事導くことができましたね。
3倍角の公式の証明のまとめ
以上のように3倍角の公式の証明は、加法定理と倍角の公式を利用することで導けます。
原理は簡単なので、是非1度自分で証明してみてください。加法定理と倍角の公式の良い練習になりますよ。
3倍角の公式の使い方
公式を覚えて、証明の仕方も学んだところで実際に3倍角の公式を用いた問題を解いてみましょう。
問題
$$ 0<α<π \\
\cosα=-\frac{3}{5} $$
のとき
$$ \sin3α,\cos3α $$
の値を求めよ。
解説
公式をそのまま利用することで答えを導けますね。
まずは\(\sinα\)の値を求めておきましょう。
\(\sin^2α+\cos^2α=1\)より
\(\sin^2α=\frac{16}{25}\)
sinの正負についてですが、問題文より
\( 0<α<π \)
という条件が与えられているので、
\(\sinα>0\)
が成り立ちます。よって
\(\sinα=\frac{4}{5}\)
sinα、cosαが出揃ったところで公式に代入していきましょう。
\begin{align}
\sin3α&=3\sinα-4\sin^3α \\
&=3・\frac{4}{5}-4(\frac{4}{5})^3 \\
&=\frac{44}{125}・・・(答)
\end{align}
\begin{align}
\cos3α&=4\cos^3α-3\cosα \\
&=4(-\frac{3}{5})^3-3・(-\frac{3}{5})\\
&=\frac{117}{125}・・・(答)
\end{align}
おわりに
以上のように3倍角の公式は、今まで習ったものの積み重ねで対応することができます。
sinの「サンシャイン引いて夜風が身にしみる」という覚え方と、cosはsinの公式の正負を入れ替えるだけということを知っておくだけ3倍角の公式はマスターしたも同然です。
もし3倍角の公式が出題されたときは、確実に得点できるようにしておきましょう!
半角の公式の覚え方や証明もあわせて確認してくださいね!