正しく覚えて使い方を間違わなければ簡単に面積がわかる強力な公式です。
これからヘロンの公式を勉強する人も復習する人もぜひ最後まで読んでヘロンの公式をマスターしましょう!
ヘロンの公式について
ヘロンの公式
まずヘロンの公式が何なのか見ていきましょう。
図のように3辺の長さがわかっている(a, b, c)三角形ABCを考えます。
この三角形の面積Sは次の式で表されます。
$$S = \sqrt{ s(s-a)(s-b)(s-c) }$$
ただし、\(\displaystyle s = \frac{a+b+c}{2}\)
(大文字のSと小文字のsの違いに注意してください)
これがヘロンの公式です。
ヘロンの公式の使用例
ヘロンの公式は3辺の長さがわかっている三角形なら必ず面積が求められる公式です。
しかし、3辺がわかっているからといって必ずしもこの公式を使うのが一番いいわけではありません。
練習問題を解いてみるとわかりますが、3辺の長さすべてが整数値や小数・分数だと計算しやすく、\(\sqrt{2}\)などの無理数が入るとかなり面倒になりますね。
また大問の中で面積を求めるという場合も注意が必要です。
面積を求める過程で、ある辺の長さ・ある角のcosの値などを計算しておくと次の問題で楽になるというケースもあります。
以上を踏まえると、ヘロンの公式の使い方は
- 3辺の長さがわかっている(\(\sqrt{}\)を含まない)
- とりあえず面積の値を速く知りたい(その他の値が重要でない)
のような問題でしょう。特に小問集合などで力を発揮します。上の条件に合致している場合は本当に便利な公式なのでぜひ覚えておきましょう。
ヘロンの公式の証明
次にヘロンの公式を証明します。
ただ、「ヘロンの公式を証明せよ」といった問題はほとんど出題されないので覚えなくてもいいという人は飛ばしてしまっても構いません。
大事なのは計算問題です。
この公式の証明方法はいろいろありますが、ここでは一番シンプルなものを紹介します。
方針は「sinを使った面積の公式から上手く式変形をしてヘロンの公式の形に持っていく」と、ごく単純です。
以下では三角関数の知識を使ってjヘロンの公式を証明していきます。三角関数の基礎知識に不安がある方は以下の記事をご参照ください。
図の三角形の面積は
$$S = \frac{1}{2}ab\sin{C}$$
sinCの値は
$$\sin{C} = \sqrt{1 – \cos^2{C}}$$
余弦定理より
$$c^2 = a^2 + b^2 – 2ab\cos{C}$$
これをcosCについて解くと
$$\cos{C} = \displaystyle \frac{a^2 + b^2 – c^2}{2ab}$$
となるので\(1 – \cos^2{C}\)は
$$\displaystyle \frac{(2ab)^2 – (a^2 + b^2 – c^2)^2}{(2ab)^2}$$
ですね。
分子を見ると\(a^2-b^2\)(平方の差)の形になっているので、
\begin{eqnarray}
(2ab)^2 – (a^2 + b^2 – c^2)^2 &=& \left\{2ab + (a^2 + b^2 – c^2)\right\}\left\{2ab – (a^2 + b^2 – c^2)\right\}\\
&=& \left\{(a^2 + 2ab + b^2) – c^2\right\}\left\{c^2 – (a^2 – 2ab + b^2)\right\}\\
&=& \left\{(a + b)^2 – c^2\right\}\left\{c^2 – (a – b)^2\right\}\\
&=& \left\{(a + b + c)(a + b – c)\right\}\left\{(c + a – b)(c – a + b)\right\}
\end{eqnarray}
とできますね。(最後の変形でも(\(a^2-b^2\)の形が出てきました。)
ここで\(s = \displaystyle \frac{a+b+c}{2}\)とすると、
- a + b + c = 2s
- a + b – c = 2s – 2c
- c + a – b = 2s – 2b
- c – a + b = 2s – 2a
と変形できるので
$$(a + b + c)(a + b – c)(c + a – b)(c – a + b) = 16s(s – a)(s – b)(s – c)$$
今までのをまとめると
\begin{eqnarray}
S &=& \frac{1}{2}ab\sin{C}\\
&=& \frac{1}{2}ab\sqrt{1 – \cos^2{C}}\\
&=& \frac{1}{2}ab\sqrt{\displaystyle \frac{(2ab)^2 – (a^2 + b^2 – c^2)^2}{(2ab)^2}}\\
&=& \frac{1}{2}ab\sqrt{\displaystyle \frac{(a + b + c)(a + b – c)(c + a – b)(c – a + b)}{(2ab)^2}}\\
&=& \frac{1}{2}ab\sqrt{\displaystyle \frac{16s(s – a)(s – b)(s – c)}{4a^2b^2}}\\
&=& \sqrt{\displaystyle \frac{a^2b^2 \cdot 16s(s – a)(s – b)(s – c)}{4 \cdot 4a^2b^2}}\\
&=& \sqrt{s(s – a)(s – b)(s – c)}
\end{eqnarray}
(証明終了)
長々と書きましたが、これぶっちゃけ覚えなくていいです。
ただ万が一この証明が問題に出たときのために方針を覚えておくといいかもしれません。
ヘロンの公式を使う練習問題
ヘロンの公式を使って次の問題を解いてみましょう。
ヘロンの公式を使う問題1
辺の長さが \(4, 7, 9\) の三角形の面積Sを求めよ。
まず\(s = \displaystyle \frac{a+b+c}{2}\)の値を計算すると、
$$s = \displaystyle \frac{4+7+9}{2} = 10$$
あとはヘロンの公式に代入して、
\begin{eqnarray}
S &=& \sqrt{10(10 – 4)(10 – 7)(10 – 9)}\\
&=& \sqrt{10 \cdot 6 \cdot 3 \cdot 1}\\
&=& 6\sqrt{5}
\end{eqnarray}
ヘロンの公式を使う問題2
辺の長さが \(7, 7\sqrt{3}, 14\) の三角形の面積Sを求めよ。
まず\(s = \displaystyle \frac{a+b+c}{2}\)の値を計算すると、
$$s = \displaystyle \frac{7+7\sqrt{3}+14}{2} = \displaystyle \frac{21+7\sqrt{3}}{2}$$
ヘロンの公式より、
\begin{eqnarray}
S &=& \sqrt{\frac{21+7\sqrt{3}}{2}(\frac{21+7\sqrt{3}}{2} – 7)(\frac{21+7\sqrt{3}}{2} – 7\sqrt{3})(\frac{21+7\sqrt{3}}{2} – 14)}\\
&=& \sqrt{\frac{21+7\sqrt{3}}{2} \cdot \frac{7+7\sqrt{3}}{2} \cdot \frac{21-7\sqrt{3}}{2} \cdot \frac{-7+7\sqrt{3}}{2}}\\
&=& 49\sqrt{3}
\end{eqnarray}
問題1は楽に計算できましたが、問題2はすごく大変でしたね。やはり無理数が混ざると急激に面倒になります。
問題2ですが、実は3辺の比が\(1: \sqrt{3} : 2\)になっているので角が30°, 60°, 90°の直角三角形ですね。
これに気付けると計算がかなり簡単になります。
このように何も考えずにヘロンの公式を使うのではなく、使い方を見極めてから活用してください。