はじめに:領域の解き方をわかりやすく解説!
領域の問題とは、
「tがt≧0を満たす実数であるとき、直線 y = tx + tが通過する領域を求めよ」
というような問題のことを言います。
初見の人には「そもそも何を答えればいいの?」となる問題ですよね。
そこでこの記事では、「領域」という言葉の意味から具体的な問題の解き方までわかりやすく解説します!
これから領域を学習する人にも、一通り学んだ後に改めて知識を確認したい人にも有益な内容になっていますので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね〜。
目次
「領域」という言葉の意味と基本的な解き方
「領域」という言葉の意味
領域の解き方の解説に入る前に、まずは「領域」の言葉の意味を確認しておきましょう。
数学用語としての「領域」は、辞書的には「ある条件を満たす点の集合(=範囲)」と規定されています。
ですから、「領域を求めよ」という言葉は「条件を満たす点の範囲を示せ」という言葉に言い換えられます。
まだイマイチしっくりこないという人は、「領域=点の条件」と覚えましょう。問題を解く上では、この定義で十分です。
領域の基本的な解き方
「領域」という言葉の意味が理解できたところで、早速解き方を見ていきましょう。
領域の問題の解き方は至ってシンプルです。
- 求めたい点を(x, y)とおく。
- 求めたい点の条件を不等式にする。
- 与えられた条件を、yとxの関係がわかるように書き直す。
要は点の条件を求めればいいわけです。
もちろん問題によっては、簡単に条件を式に直せないこともありますが、大抵は練習の積み重ねでなんとかなります。
というわけで、早速実践しましょう!
領域の解き方の練習
領域の問題
0でない実数a, b,cは以下の条件ⅰとⅱを満たしながら動くものとする。
$$1 + c^2 \leq 2a …ⅰ$$
2つの放物線 \(C_{1}: y = ax^2\) と \(C_{2}: y = b(x-1)^2 + c\) は接している …ⅱ
ただし、2つの曲線が接するとは、ある共有点において共通の接線を持つことであり、その共有点を接線と言う。
⑴\(C_{1}\)と\(C_{2}\)の接点の座標をaとcを用いて表せ
⑵\(C_{1}\)と\(C_{2}\)の接点が動く範囲を求めよ
(出典:2018年度京都大学理系数学第1問から改題)
領域の問題の解答・解説
領域の問題の解答・解説①:解き方の方針
問題演習に入る前に、領域の問題の解き方をもう一度確認しておきましょう。
- 求めたい点を(x, y)とおく。
- 求めたい点の条件を不等式にする。
- 与えられた条件を、yとxの関係がわかるように書き直す。
この問題の場合、求めたい点は\(C_{1}\)と\(C_{2}\)の接点です。
⑴と⑵の前半で求めたい点の条件を不等式にするように誘導されているので、問題の指示に従って解けば自ずと領域が導き出せるはずです。
というわけで、⑴から順番に解いていきましょう!
領域の問題の解答・解説②:点の座標を求める
⑴
求めたい点は\(C_{1}\)と\(C_{2}\)の接点なので、当然 \(C_{1}: y = ax^2\)上にあります。したがって、求める点のx座標を\(t\)とおくと、y座標は\(t^2\)になります。
点の座標をおけたら、求めたい点の条件を考えましょう。
条件ⅰ「2つの放物線 \(C_{1}: y = ax^2\) と \(C_{2}: y = b(x-1)^2 + c\) は接している」を言い換えると、接点のx座標がtなので、
「\(C_{1}: y = ax^2\) と \(C_{2}: y = b(x-1)^2 + c\)は、\(x = t\)における接線の傾きが等しく、かつ\(x = a\)におけるy座標が等しい」…①
になります。
\(y’ = 2ax\)
\(C_{2}: y = b(x-1)^2 + c\)を微分すると
\(y’ = 2b(x-1)\)
になるので、
①の条件を式に直すと、
\(2at = 2b(t-1) ∴ at = b(t-1)\)…②
\(at^2 = b(t-1)^2 + c\)…③
となりますね。
今求めたいのはtなので、③の\( b(t-1)\)に②式の右辺を代入して整理します。
\(at^2 = at(t-1) + c ∴ at = c\)
aは0でない実数なので、\(t = \frac{c}{a}\)。
接点の座標は\((t, t^2)\)なので、求める点の座標は
$$(\frac{c}{a}, \frac{c^2}{a})$$
になります。
領域の問題の解答・解説③:点の条件を不等式にする
⑵
⑵を解くに当たって、改めて求める点の座標を(x, y)とおきましょう。
⑵では、yとxの関係式を示すことが求められているからです。
座標を(x, y)とおいたら、次は「求めたい点の条件を不等式にする」というステップに入ります。
⑴から、xとyは以下のように表せますね。
$$x= \frac{c}{a}$$
$$ y =\frac{c^2}{a}$$
したがって、aを用いてyとxの関係を式に表すと、\(y = ax^2\)になります。
さて、ここで問題文の条件ⅰに戻りましょう。
$$1 + c^2 \leq 2a …ⅰ$$
今、\(a= \frac{y}{x^2}, c^2 = ay = \frac{y^2}{x^2} \)と表せられるので、ⅰ式は
$$1 + \frac{y^2}{x^2} \leq \frac{2y}{x^2} $$
$$\Leftrightarrow x^2 + y^2 \leq 2y, x \neq\ 0$$
$$\Leftrightarrow x^2 + (y-1)^2 \leq 1, x \neq\ 0$$
と変換できます。
領域の問題の解答・解説④:点の条件を全てxとyの関係式に落とし込む
これで完成!……と思ったあなたは要注意です!
実はまだ見落としている条件が隠されています。みなさん、お分かりでしょうか?
この問題文の一番最初をみてください。以下のように書いてあります。
「0でない実数a, b, c」
ひっそりと
$$a \neq\ 0, b \neq\ 0,c \neq\ 0$$
という条件が隠されていました。この条件を、xとyによって表す必要があります。
\(a \neq\ 0\)が成り立つ条件は、
$$y = ax^2$$
から
$$a = \frac{y}{x^2} \neq\ 0$$
が成り立つ条件なので、\(x \neq\ 0\)かつ\(y \neq\ 0\)。
\(b \neq\ 0\)が成り立つ条件は、⑴の②式
$$at = b(t-1)$$から$$b = \frac{at}{t-1} \neq\ 0$$が成り立つ条件なので、\(t \neq\ 0\)かつ\(t \neq\ 1\)。
tはxと同義なので、要するに\(x \neq\ 0\)かつ\(x \neq\ 1\)になります。
また\(c \neq\ 0\)が成り立つ条件は、$$x= \frac{c}{a}, y =\frac{c^2}{a}$$から
$$c = ax \neq\ 0, c = \sqrt{ay} \neq\ 0$$
が成り立つ条件なので、\(x \neq\ 0\)かつ\(y \neq\ 0\)。
以上から、「\(a \neq\ 0, b \neq\ 0,c \neq\ 0\)」が成り立つ条件は、
\(x \neq\ 0\)かつ\(y \neq\ 0\)かつ\(x \neq\ 1\)。
したがって、求める範囲は、
$$ x^2 + (y-1)^2 \leq 1, x \neq\ 0, y \neq\ 0, x \neq\ 1$$
になります!与えられた条件を全てxとyの関係式に落とし込むのが難しい問題でしたね。
おわりに:領域の解き方のまとめ
いかがでしたか?
この記事では、「領域」という言葉の意味を確認した上で、領域の問題の基本的な解き方を整理し、その基本的な解き方を使って京都大学の入試問題にチャレンジしました。
今一度、ここで領域の問題の解き方を再確認しておきましょう。
領域の問題の基本的な解き方
- 求めたい点を(x, y)とおく。
- 求めたい点の条件を不等式にする。
- 与えられた条件を、yとxの関係がわかるように書き直す。
この基本さえしっかりと押さえられていれば、旧帝の入試問題も問題なく解けます。困ったときは基本に立ち返って、演習を積んでくださいね。
それではっ!