はじめに:軌跡の解き方をわかりやすく解説!
軌跡の問題とは、例えば以下のような問題のことです。
「2点(2,1)と(4,6)からの距離の比が2:1になるような点の軌跡を求めよ」
初見の人には「そもそも何を答えればいいの?」となる問題ですよね。
そこでこの記事では、「軌跡」という言葉の意味から具体的な問題の解き方までわかりやすく解説します!
これから軌跡を学習する人にも、一通り学んだ後に改めて知識を確認したい人にも有益な内容になっていますので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね〜。
目次
軌跡という言葉の意味と、軌跡の基本的な解き方
軌跡とは?
筆者が初めて軌跡の問題を見たときは、「軌跡……?」と困惑したものですが、同じような感想を抱いた方も多いと思います。
大抵の学校では「軌跡」という言葉の意味を説明しないまま問題の解説に移ってしまうので、「『軌跡』って、結局どういう意味だっけ?」と疑問に思っている人も少なくないでしょう。
そこで、軌跡の解き方の解説に入る前に、まずは「軌跡」の言葉の意味を確認しておきましょう。
大辞林第3版によると、数学用語としての「軌跡」の意味は、
「点が一定の条件に従って動くときに描く図形。一定の条件を満たす点全体の集合」
と規定されています。注目すべきは、軌跡とは点の条件を反映した図形であるということです。
よりシンプルに言い換えれば、「軌跡とは点の条件」なのです。
ですから、数学においては「軌跡=点の条件」と覚えておきましょう。
軌跡の基本的な解き方
「軌跡」という言葉の意味が理解できたところで、早速解き方を見ていきましょう。
軌跡の問題の解き方は至ってシンプルです。
- 求めたい点を(x, y)とおく。
- 求めたい点の条件を方程式にする。
- 与えられている条件をもとに、出てきた方程式をyとxの関係がわかるように書き直す。
要は点の条件を求めればいいわけです。もちろん問題によっては、簡単に条件を式に直せないこともありますが、大抵は練習の積み重ねでなんとかなります。
というわけで、早速実践しましょう!
軌跡の解き方の練習問題
軌跡の解き方の練習問題①:アポロニウスの円
問題
2点A(-3,0), B(0,6)からの距離の比が2:1になる点Pの軌跡を求めよ。
解答・解説
2点間の距離の比が一定になるような点の軌跡を、古代ギリシアの天文学者アポロニウスの名をとって「アポロニウスの円」と呼びます。
この「アポロニウスの円」の問題は軌跡の最も基本的な問題として頻出なので、最初に確認しておきましょう!
問題演習を始めるに当たって、もう一度解き方の基本を確認しておきます。
- 求めたい点を(x, y)とおく。
- 求めたい点の条件を方程式にする。
- 与えられている条件をもとに、出てきた方程式をyとxの関係がわかるように書き直す。
まず点Pを(x,y)とおきます。これで1つ目のステップは完了したので、2つ目のステップ「点の条件を方程式にする」に進みます。
今与えられている条件は、APとBPの距離の比が2:1になるということです。
したがって、AP = 2BPなので、
が成り立ちます。
ここまでで2つ目のステップが完了したので、最後のステップ「与えられている条件をもとに、出てきた方程式をyとxの関係がわかるように書き直す」に移りましょう。
上式を、xとyを使って書き直すと
このxとyについての2次式をさらに整理すると
という、中心(1,8)、半径2√5の円の方程式が得られました。
点Pの条件を式にすると円の方程式になるので、条件を満たす点Pは中心(1,8)、半径2√5の円上にあることがわかります。
しかしこれだけでは十分ではありません。
ここまでの考察では、「点Pが中心(1,8)、半径2√5の円上にある」ということがわかっただけで、「点Pは中心(1,8)、半径2√5の円の円周全体を動く=点Pの軌跡は円である」ということはまだわかっていないからです。
幸いなことに、この問題では特に距離の比以外の点Pの条件が与えられていないので、他の条件を確かめなくても「点Pの軌跡は円である」ということが言えます。
ですからこの問題の答えは「点Pの軌跡は中心(1,8)、半径2√5の円である」になります。
他の問題では複数個条件があることが多いので、しっかり確かめてくださいね。
軌跡の解き方の練習問題②:放物線の頂点の軌跡
問題
以下の放物線における頂点Pの軌跡を求めよ。
(このサイトの問題から改題)
解答・解説
上の問題と同じように、まずは頂点Pを(x, y)とおきましょう。
次に、求めたい点の条件を式に直します。
この問題の点の条件は「放物線の頂点であること」なので、平方完成してこの条件を式に直せばいいですね。
というわけで、頂点P(x, y)の条件式は
になります。
さあ、点の条件を式にできたので、条件式をyとxの関係に直すステップに移りましょう。
2つ目の式を「y= f(x)」という式にしたいのですが、yを含む式にxが出てきません。そこで、1つ目の式からaをxで表し、yの式に代入します。
と、このようにして 点Pの条件式をy = f(x)の式に変更することができました。
ただし、この問題には a ≧ 0という条件があるので、この条件式をxの式に置き換えて定義域とする必要があります。
したがって、「x ≦ 5」という定義域が導かれます。
以上から、この問題の答えは
です!
軌跡の解き方の練習問題③:三角形の重心の軌跡
問題
kを実数とする。以下の二つの曲線は異なる共有点P, Qを持っている。
ただしPとQのx座標は正である。また、原点をOとする。このとき、△OPQの重心Gの軌跡を求めよ。(2016年、筑波大、改題)
解答・解説
上の問題と同じく、最初は重心Gを (x, y)とおきます。
さて、それでは点の条件を考えましょう。今与えられている条件は、「二つの曲線が異なる共有点を持っている」ということです。
「二つの曲線が異なる共有点を持ち、かつそれらは共にx座標が正である」
=「yを消去した2次式が異なる2つの正の実数解を持つ」
=「yを消去した2次式の判別式の値が正になり、かつ2つの実数解の和と積が共に正である(※解と係数の関係を使います)」
というわけで、まずyを消去した2次式の判別式を調べ、その上で解と係数の関係を分析します。
2つの曲線の方程式からyを消去すると……
この2次方程式の判別式Dが正になるので、
この条件式を整理すると、
-√2 < k < √2 …①
になります。
続いて解と係数の関係を見ていきましょう。
この2次方程式の2つの実数解をα、βとおくと、α + βとαβがともに正なので、
この2つの条件式を整理すると、
k > 0 …②
-1 < k, k > 1 …③
が成り立ちます。①〜③から、kの条件は
1 < k < √2 …④
になりますね。
ここで求めたkの条件をもとに、△OPQの重心G(x, y)の軌跡を求めていきます。
点Pと点Qのx座標は、2つの曲線の方程式からyを消去して得られた以下の方程式の実数解α、βに相当します。
また、点Pと点Qはそれぞれ放物線 y=x^2上の点なので、
と表せますね。
点G(x, y)は△OPQの重心なので、
という式が成り立ちます。
この2次方程式における解と係数の関係から、
なので、
となります。
さらに、
が成り立つので、α + β = kから、
したがって、
なんと、yは定数になるんですね!
以上から、
が成り立ち、④より 1 < k < √2なので、求める軌跡は、
になります。軌跡が線分になるという、割と珍しいパターンの問題でしたね。
おわりに:軌跡の解き方のまとめ
いかがでしたか?
この記事では、「軌跡」という言葉の意味から具体的な問題の解き方までを網羅的に解説しました。
最後に、「軌跡」の意味と軌跡の基本的な解き方について改めてまとめておきましょう。
- 「軌跡」の意味:点の条件を表した図形
- 軌跡の基本的な解き方:
- 求めたい点を(x, y)とおく。
- 求めたい点の条件を方程式にする。
- 与えられている条件をもとに、出てきた方程式をyとxの関係がわかるように書き直す。
「軌跡」という言葉の意味と基本的な解き方を理解すれば、あとは練習あるのみです。
この記事で取り上げた練習問題と解説を読み込んで、類似の問題をスラスラ解けるようにしましょう!