点と直線の距離の公式は図形と方程式の問題に必須
点と直線の距離の公式は見た目は複雑ですが、図形と方程式の問題を解く上で欠かせない公式です。
2013年の大阪大学の入試で点と直線の距離の公式の証明がそのまま問題になるなど、きちんと証明できるかどうかも問われています。
今回の記事では点と直線の距離について証明や使い方を解説するので参考にしてくださいね。
目次
点と直線の距離の公式
点と直線の公式は以下の通りです。
公式を利用することで任意の直線と点の距離を求めることができるのです。
この公式を利用する上での注意点は直線の一般形を用いることです。
もし、\(y=\frac{4}{3}x+2\)という直線であれば、
\(4x-3y+6=0\)と変形して利用しましょう。
実際にこの公式を利用する前に、証明を確認しておきましょう
点と直線の距離の公式の証明
点と直線の距離の公式の証明は冒頭でも述べた通り、2013年の大阪大学の2次試験でも出題されています。
しかし、公式の証明の中でも難しい部類に入りますので、2次試験で数学を利用しない人などは方針を確認する程度でも十分だと思います。
証明の仕方もベクトルを用いるものなど複数あるので、数学が得意な人はいろんな証明にチャレンジしてもいいですね。
点と直線の距離の公式の証明の流れ
直線\(ax+by+c=0\)と点\((x_1,y_1)\)の距離を求めます。
図にすると下図のようになります。
計算を簡単にするために点が原点になるように、点と直線を平行移動させます。
「証明なのに勝手に移動してもいいの?」と思うかもしれませんが、点と直線の両方を同じ距離だけ平行移動しても、間の距離は変わらないため問題ありません。
x軸方向に\(-x_1\)、y軸方向に\(-y_1\)だけ平行移動したので
点の座標は(0,0)となります。
直線の方程式は
\(a\{x-(-x_1)\}+b\{y-(-y_1)\}+c=0\)
つまり
\(a(x+x_1)+b(y+y_1)+c=0\)
となります。
さて、これからの証明がどのように進んでいくのか説明します。
最終的に求めるのは移動した後の直線と原点との距離です。
それは下図の点Pの座標がわかれば2点間の距離の公式で求めることができます。
点Pとは直線の原点を通る垂線と直線の交点です。
点Pの座標を求めるために、両方の直線の方程式を連立して交点を出します。
元の直線の方程式は\(a(x+x_1)+b(y+y_1)+c=0\)とわかっていますが、垂線がまだわからないので計算して導きます。
以上を整理すると以下のようになります。
- 垂線の方程式を求める
- 2直線を連立して点Pの座標を求める
- 原点と点Pの距離を求める
①垂線の方程式を求める
まずは垂線の方程式を求めましょう。実はこの垂線の方程式は簡単に求まります。
まずは傾きについて検討しましょう。
元の直線の垂線なので当然直交しています。
よって直交条件より傾きの積は-1になります。
a≠0,b≠0のとき直線の方程式は
\(y=-\frac{a}{b}x-\frac{a}{b}x_1-\frac{c}{b}-y_1\)
これより傾きは\(-\frac{a}{b}\)です。
よって垂線の傾きは
\(-1÷-\frac{a}{b}=\frac{b}{a}\)
となります。
よって原点を通り、傾き\(\frac{b}{a}\)の直線は
\(y=\frac{b}{a}x\)
となります。
②2直線を連立して点Pの座標を求める
次に直線と垂線の方程式を連立して交点を求めます。
\begin{equation}
\begin{cases}
\;y=-\frac{a}{b}x-\frac{a}{b}x_1-\frac{c}{b}-y_1 \\
\; y=\frac{b}{a}x
\end{cases}
\end{equation}
これを解くと
\(x=-\frac{a}{a^2+b^2}(ax_1+by_1+c)\)
\(y=-\frac{b}{a^2+b^2}(ax_1+by_1+c)\)
となります。
これが点Pの座標です。
③原点と点Pの距離を求める
ここまでくれば難しいことはありません。2点間の距離の公式を利用するだけです。
2点間の距離の公式についてはこちらの記事を確認してください!
実際に計算すると
\(\sqrt{\{-\frac{a}{a^2+b^2}(ax_1+by_1+c)\}^2+\{-\frac{b}{a^2+b^2}(ax_1+by_1+c)\}^2}\)
これより
\(\frac{|ax_1+by_1+c|}{\sqrt{a^2+b^2}}\)
以上よりa≠0,b≠0のときについて点と直線の距離の公式を証明することができました。
a=0,b≠0のとき、直線は\(y=-\frac{c}{b}\)となりx軸と平行となるので点と距離はy座標だけで計算でき、
距離は\(|-\frac{c}{b}-y_1|\)となります。
これを距離の公式に代入すると
\begin{align}
\frac{|ax_1+by_1+c|}{\sqrt{a^2+b^2}}&=\frac{|by_1+c|}{\sqrt{b^2}}\\
&=|\frac{c}{b}+y_1|
\end{align}
となり、a=0,b≠0のときでも成り立つことがわかります。
同様にa≠0,b=0のときでも成り立ちます。
よってすべての直線について点と距離の公式が成り立つことが証明できました。
以上のように少し計算が複雑で難しい証明ではありますが、数学を得点源にしたい人はチャレンジしてみましょう。
点と距離の公式の使い方
実際に問題を解いて公式の使い方を覚えましょう。
点と直線の距離の公式を使う問題
点(4,-2)と直線\(y=2x-3\)の距離を求めよ。
点と直線の距離の公式使う問題の解答・解説
点と距離の問題なので、早速公式を利用していきましょう。
まずは直線の形を一般形に変形させましょう。
yを移項して
\(2x-y-3=0\)
それでは点と直線の距離の公式に代入していきましょう。
代入する値が多いので間違って代入しないように注意しましょう。
\begin{align}
\frac{|ax_1+by_1+c|}{\sqrt{a^2+b^2}}&=\frac{|2・4+(-1)・(-2)+(-3)|}{\sqrt{2^2+(-1)^2}}\\
&=\frac{|8+2-3|}{\sqrt{4+1}}\\
&=\frac{7}{\sqrt{5}}・・・(答)
\end{align}
証明は大変でしたが、公式を使うにあたっては特に問題なく求めることができましたね。
点と直線の距離をまずは正しく使えるように
点と直線の距離の公式は証明も覚えることが望ましいですが、公式の証明は何度も出題されるものではありません。
そのため、まずは公式を利用できるようにするほうが良いでしょう。
点と直線の距離の公式は多くの値が登場するので、誤って代入しやすいです。
毎回公式を書いて丁寧に代入するようにしましょう。
ちなみに大阪大学では、こんな問題も出ていますよ!