はじめに
三角関数は数2の中でも重要な分野で、他の分野と絡めた問題が出やすいことから要対策分野です。
一方で三角関数のイメージを上手く捉えきれず苦手にしてしまう人も多いです。
今回は、三角関数の基礎的事項について、初めて学習する人にもわかりやすいように丁寧に解説します。復習の際にも参考にしてください。
目次
【定義】三角関数とは
まずは三角関数の定義からマスターしましょう。
三角関数の定義は、定義そのものが東大に出題されているほど重要度が高いです。
定義というと難しそうなイメージを持つ方もいるかもしれませんが、いきなりすべてを理解する必要はありません。
まずは漠然としたイメージを持つことができればOKです。
参考:三角比の定義
三角関数を習う前に三角比を数1で学習しましたよね。三角比の定義は以下のような直角三角形を利用したものです。
それぞれの頭文字の筆記体に似せた覚え方をしたのではないでしょうか。
このように三角比では直角三角形を利用しましたが、これから習う三角関数では単位円で定義します。
単位円による定義
三角関数を、原点中心、半径1の単位円上で定義すると以下のようになります。
x軸の正の部分を始線とする一般角θの動径と、円との交点を P(x,y)とすると
点PのX座標がcosθ、Y座標がsinθとなり、tanθは
\(\tanθ=\frac{y}{x}\)、つまり
\(\tanθ=\frac{sinθ}{cosθ}\)
となります。
三角関数の定義のポイント
三角関数の定義のポイントは、cos、sinは円のX座標、Y座標であるということです。
x軸の正の向きからθの角度をつけた直線を書くと円と交わりますよね。この時のx,y座標がcosθ,sinθなのです。
半径1の単位円上の座標ということを考えると
$$-1≦cosθ≦ 1\\
-1≦sinθ≦ 1$$
という範囲の制限があることも直感的に頷けますよね。
【性質】三角関数の相互関係
定義を確認したところで三角関数の種々の性質に注目していきましょう。
三角関数の問題を解いていく上で絶対に外せないのが、三角関数の相互関係です。
これを理解することで、sinθ、cosθ、tanθのいずれかの値さえわかれば他の値を求めることができるのです。
これは三角比のときにもやりましたよね。既に知っている方は次の項目へ進んでも大丈夫です。
まずは\(\tanθ=\frac{sinθ}{cosθ}\)ですが、これは定義で紹介した
\(\tanθ=\frac{x}{y}\)
にそれぞれ代入するだけなので、大丈夫だと思います。
次に\(\sin^2θ+\cos^2θ=1\)ですが、これは円の方程式を利用します。
原点中心、半径1の円の方程式は
\(x^2+y^2=1\)です。
これらにcosθ、sinθを代入すると
\(\sin^2θ+\cos^2θ=1\)が得られますね。
最後に\(1+tan^2θ=\frac{1}{cos^2θ}\)です。
複雑な形をしていますが、実はこれ、先ほどの
\(\sin^2θ+\cos^2θ=1\)
の両辺を\(cos^2θ\)で割っただけの式です。
以上の3つの式を利用することで三角関数で相互に値を導くことができるようになります。
なお、三角関数の値の正負についてはθがどこにあるかで判断します。
繰り返しますがこれらの式は非常に重要です。
これから先に何度も登場するので早めに覚えておいて損はありませんよ。
三角関数のグラフ
次にこれらの三角関数がどういうグラフを描くのかを解説します。
三角関数のグラフの描き方は、次の記事に詳しくまとめたので、ご覧ください。
【性質】三角関数のθによる変動
相互関係と並んでこのθによる変動も重要です。
これは元のθに\(π,\frac{π}{2}\)などを足したときに三角関数がどのように変化するかとういものです。
θ+2nπ(nは整数)
まず、以下のことが成り立ちます。
2πで360°なので、θ+2πすると1回転して元の位置に帰ってくることはわかりますよね。
元の位置なので、sinやcos、tanに値の変化はありません。よって
\(\sin(θ+2π)=\sinθ\)
\(\cos(θ+2π)=\cosθ\)
\(\tan(θ+2π)=\tanθ\)
が成り立つのはわかりますね。
また、1回転だけではなく2回転、3回転しようと、また反対方向に1回転しようと、2πごとに回転する限り三角関数の値が変わることはありません。
よって、整数nにおいて
\(\sin(θ+2nπ)=\sinθ\)
\(\cos(θ+2nπ)=\cosθ\)
\(\tan(θ+2nπ)=\tanθ\)
が成り立ちます。
-θ、θ+πなど
\(-θ,θ+π,θ+\frac{π}{2}\)などについては、言葉だけで説明すると難しいですが、図を見てもらうとイメージが掴めると思います。
-θのとき上図から明らかなように、x座標はそのまま、y座標は反転となるので
$$ \sin(-θ)=-\sinθ \\
\cos(-θ)=\cosθ \\
\tan(-θ)=-\tanθ $$
注意点は、cosθだけ負にならないところです。上の図をみれば明らかですがうっかり間違えてしまいやすいので注意しましょう!
次はθ+πのときです。
上図からわかるように半回転するのでx,yともに反転していますので、
$$ \sin(θ+π)=-\sinθ \\
\cos(θ+π)=-\cosθ \\
\tan(θ+π)=tanθ $$
となります。今度はtanだけが反転していないので注意しましょう。図でもそうですが、直線は移動していないことからもわかりますね。
最後に\(θ+\frac{π}{2}\)のときです。
このときが一番に複雑なりますので注意しましょう。
\(\frac{π}{2}\)だけ動くことで、x,y座標が(-y,x)に変わります。よって
$$ \sin(θ+\frac{π}{2})=\cosθ \\
\cos(θ+\frac{π}{2})=-\sinθ \\
\tan(θ+\frac{π}{2})=-\frac{1}{tanθ} $$
となります。sin、cosが入れ替わり、マイナスがつき、分数になるなどかなり複雑になっていますよね。
これもこのまま覚えようとするよりは一度図を書いてどういう変化をしたか理解する方がわかりやすくなりますよ。
θによる変動の裏技
この後、加法定理という三角関数の重要な定理を学習します。
この定理を利用するとθ+αの三角関数の値を求めることができるようになるので、実はこれらの変化を覚える必要がないのです。
例えば、\(\sin(θ+\frac{π}{2})\)であれば
\begin{align}
\sin(θ+\frac{π}{2})&=\sinθ\cos\frac{π}{2}+\cosθ\sin\frac{π}{2}\\
&=\sinθ・0+cosθ・1 \\
&=cosθ
\end{align}
といった具合に図を書いて考えなくても計算で導くことができるのです。
まだ加法定理を知らない方もいると思いますが、この記事で習ったことで加法定理は理解できるのでもっと詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
おわりに
これからも三角関数の公式を多く勉強していくことになりますが、そのすべての定理・公式の基礎にあるのが今回学習したテーマです。
もし、加法定理や倍角の公式、半角の公式などで詰まった際はもう一度この記事で復習しなおすと学習がスムーズになりますよ。