円の接線の公式について
円の接線の方程式、あなたはすぐに求められますか?
円の接線に関しては大変便利な公式があるのですが、これをしっかり覚えている受験生は意外と多くないんですよね。
公式を覚えていなくても求められなくはないのですが、計算の手間が何倍にも増えてしまいますので、この機会に公式をマスターしてしておいたほうが良いでしょう。
円の接線を求める公式は使い方にややクセがあります。あわせて押さえておきましょう。
目次
円の接線の公式
早速、以下の式をバッチリ覚えてください。
\[(x-p)(x_1-p)+(y-q)(y_1-q)=r^2\]
一見すると複雑な形をしていますが、仕組みがわかってしまうと簡単です。
円の方程式\((x-p)^2+(y-q)^2=r^2\)を
\((x-p)(x-p)+(y-q)(y-q)=r^2\)と変形して、
\((x-p),(y-q)\)の一方をそれぞれ\((x_1-p),(y_1-q)\)に置き換えればOK。
直線の方程式のようには見えませんが、整理してみるとちゃんと\(x,y\)の1次式になっています。
さて、円の接線に関する問題には3つのパターンがあります。
- 円周上の1点が与えられて、その点を通る接線の方程式を求めさせる問題。
- 円外の(円周上にない)1点が与えられて、その点を通る接線の方程式を求めさせる問題。
- 点ではなく接線の傾きか切片が与えられ、それを満たす接線の方程式を求めさせる問題。
パターンによって公式の運用の仕方が少し違いますので、ひとつひとつ見ていくことにしましょう。
ポイントは、上に紹介した公式は円周上の点について用いることができる、ということです。
円の接線の公式を使う問題
円の接線の公式を使う問題①:円周上の点を通る円の接線を求める
一番解きやすいパターンです。円と接線との接点が与えられている場合、先に紹介した公式をそのまま使うことができます。
円の方程式が\((x-2)^2+(y-3)^2=25\)、接点の座標が\((5,7)\)なので、公式より接線の方程式は、
\[(x-2)(5-2)+(y-3)(7-3)=25\]
\[∴3(x-2)+4(y-3)-25=0\]
\[∴3x+4y-43=0\]
と、すぐに求まりますね。
公式を知らない場合、接点と円の中心を結ぶ線分の傾きを求め、それと垂直な直線の傾きを求め、切片を\(t\)とおき、円の方程式に代入して……と、大変面倒な手順を踏むことになってしまいます。
本記事の内容をおさえているか否かで解答時間が全く異なります。やはり暗記必須事項ですね。
円の接線の公式を使う問題②:円外の点を通る円の接線を求める
よくあるミスは、先ほどと同様にそのまま公式を使い、\(3x+y=2\)としてしまうというもの。
\((x-p)(x_1-p)+(y-q)(y_1-q)=r^2\)の公式に登場する\((x_1,y_1)\)は、あくまで円周上の点でなければならず、円外の点であってはいけません。
では、どのように解けば良いか。まず、求める接線と円との接点を\((s,t)\)とおきましょう。すると、公式が一応使えます。
接線の方程式は、公式より、
\[sx+ty=2…①\]
この直線は\((3,1)\)を通るので、①に\(x=3,y=1\)を代入して、
\[3s+t=2…②\]
また、接点\((s,t)\)は円\(x^2+y^2=2\)を通るんでしたね。だから、\(x=s,y=t\)を代入して、
\[s^2+t^2=2…③\]
あとは②と③を連立させて\(s,t\)の値を求め、それらを①に代入すれば接線の方程式が求まります。
\(s,t\)の求め方ですが、③が2次式なので少し扱いづらいですね。②を\(t=-3s+2\)と変形して③に代入してあげると良いと思います。
\[s^2+(-3s+2)^2=2\]
\[∴s=\frac{1}{5},1\]
それぞれ②に代入することにより、\(t=\frac{7}{5},-1\)。
これらを①に代入することにより、求める接線の方程式は、
\[x+7y=10,x-y=2\]
答えとなる接線が2本も出てきました。これは図で考えてみると当然のことなんです。
円外の点から円に接線を引こうとすると、上の図のように接点の候補は2つあるわけです。
円の接線の公式を使う問題③:傾きが指定された円の接線を求める
これも接点の座標が与えられていませんね。だからすぐに公式を使うことができません。
先ほどと同じように、接点の座標を\((s,t)\)とおきましょう。すると、接点\((s,t)\)における接線の方程式は、公式より、
\[sx+ty=9…①\]
また、接点\((s,t)\)は円\(x^2+y^2=9\)を通るんでしたね。だから、\(x=s,y=t\)を代入して、
\[s^2+t^2=9…②\]
ここまでは先ほどと同様です。
次の一手ですが、使える情報といえば接線\(y=mx+5\)の\(y\)切片が5であるということ。
①より\(sx+ty=9\)の\(y\)切片は\(-\frac{9}{t}\)なので、\(-\frac{9}{t}=5\)より\(t=-\frac{9}{5}\)。
これを②に代入すると、
\[s^2+(-\frac{9}{5})^2=9\]
\[∴s=±\frac{12}{5}\]
さて、\(sx+ty=9\)は\(y=-\frac{s}{t}x-\frac{9}{t}\)と変形できますので、\(y=mx+5\)と比較すると、
\[m=-\frac{s}{t}\]
ということがわかるでしょう。
これに求めた\(s=±\frac{12}{5},t=-\frac{9}{5}\)を代入すると、
\[m=±\frac{4}{3}\]
となりました。”±”を忘れないように注意!
ちなみにこの問題、接線の公式を知らなくてもそこまで苦労せず解くことができます。\(y=mx+5\)を\(x^2+y^2=9\)に代入してみましょう。
\[x^2+(mx+5)^2=9\]
\[∴(m^2+1)x+10mx+16=0\]
\(y=mx+5\)と\(x^2+y^2=9\)は接する、つまり接点を1つだけもつので、両者を連立させた式\((m^2+1)x+10mx+16=0\)は解を1つしか持ちません。
したがって、判別式\(D=0\)となるような\(m\)の値を求めてあげれば良いわけです。
円の接線の公式はあくまで円周上の点について使う!
以上、円の接線に関する代表的な3つの問題を取りあげました。
重要な点を繰り返すと、今回紹介した公式はあくまで円周上の接点にだけ適用できるということです。
だから、接点が与えられていない場合、自分で\((s,t)\)などと座標を設定してあげる必要があります。
図形と方程式という分野の難しい点が、今回のように自分で文字を設定してあげないといけない場面が多々あるところにあって、公式をなんとなく覚えているだけでは通用しないんですね。
公式については内容だけでなく、どの場面で用いるかを明確に覚えておくといいと思います。