はじめに:平行四辺形について
平行四辺形は小学校からのおなじみの図形だと思います。
しかし、平行四辺形の具体的な特徴を挙げてみろといわれると答えに困る人も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、平行四辺形について知っておくべき事柄を総まとめしてみました!
これまで平行四辺形について曖昧にしか理解できていなかった人はぜひ確認してみてくださいね。
目次
平行四辺形とは?(定義)
まずは、平行四辺形と呼ばれる図形とはどのようなものなのかを説明していきます。
平行四辺形とは、「2組の向かい合う辺(対辺)が、それぞれ平行な四角形」のことを指します。
また、平行四辺形は台形の一種です。
さらに、平行四辺形の中には特別に名前のついている四角形があり、それが正方形やひし形、長方形と呼ばれる四角形のことです。
図にまとめたので確認してみてください。
平行四辺形の定義はとても重要なので、次に紹介する性質と混同しないようにしっかり覚えましょう!
平行四辺形の性質
では次に平行四辺形の3つの性質について1つずつ確認していきましょう。
性質には証明がついていますが、証明をいちいち覚える必要はありません。
ただし、性質はきちんと覚えてくださいね!
平行四辺形の性質その1:対辺の長さが等しい
対辺とは「向かい合う辺」のことです。
証明は対角線によって、平行四辺形を2つの三角形に分け、その三角形の合同を示すことでできます。
図\(1\)を証明するために、図\(2\)のように対角線\(AC\)を引く。
\(\triangle ABC\)と\(\triangle CDA\)について
平行四辺形の定義「2組の対辺がそれぞれ平行」より、錯角が等しいので
\(\angle BAC =\angle DCA・・・①\)
\(\angle ACB =\angle CAD・・・②\)
また、\(AC\)は共通\(・・・③\)
①〜③より、「1辺と2つの角がそれぞれ等しい」ので\[\triangle ABC \equiv \triangle CDA\]
よって、\(AB=CD\)、\(BC=DA\)が成り立つので対辺の長さが等しい。
平行四辺形の性質その2:対角の大きさが等しい
対角は対辺同様、「向かい合う角」のことです。
これは、先ほど「平行四辺形の性質その1」で出てきた\(\triangle ABC \equiv \triangle CDA\)を使います。
よって、\(\triangle ABC \equiv \triangle CDA\)の証明はここでは省略します。
上の図のように\(\angle ABC =\angle CDA\)、\(\angle DAB =\angle BCD\)となることを証明します。
\(\triangle ABC \equiv \triangle CDA\)より、\[\angle ABC =\angle CDA・・・①\]
また、\(\angle BAC =\angle DCA\)、
\(\angle ACB =\angle CAD\)より
\(\angle BAC +\angle CAD=\angle DCA+\angle ACB\)
よって、\(\angle DAB =\angle BCD\)・・・②
①、②より、平行四辺形の対角の大きさが等しいことが示された。
平行四辺形の性質その3:対角線が他の対角線の中点を通る
少しわかりにくいと思いますので、もう少し詳しく説明します。
「対角線が他の対角線の中点を通る」とは、上の図でいえば\(AO=CO\)、\(BO=DO\)となることを意味します。
以下はこれを証明していきます。
\(\triangle AOB\)と\(\triangle COD\)について
平行四辺形の定義「2組の対辺がそれぞれ平行」より、錯角が等しいので
\(\angle OAB =\angle OCD・・・①\)
\(\angle OBA =\angle ODC・・・②\)
「性質その1:対辺の長さが等しい」より\[AB=CD・・・③\]
①〜③より、「1辺と2つの角がそれぞれ等しい」ので\[\triangle AOB \equiv \triangle COD\]
よって、\(AO=CO\)、\(BO=DO\)なので対角線が他の対角線の中点を通ることが示された。
冒頭でもいいましたが、証明は覚えなくても良いですが、性質は必ず覚えるようにしましょう!
平行四辺形の上の3つ以外の性質として、「平行四辺形は点対称な図形」というものがあります。
点対称とは図形を\(180°\)回転させても同じ図形になるようなもののことをいいます。
また、対称の中心(回転の軸)は、対角線の交点(中点)に等しいということも特徴の1つです。
平行四辺形の面積(公式・証明)
平行四辺形の面積の求め方についてです。
平行四辺形の面積は、「底辺×高さ」で求めることができます。
証明はとても簡単です。平行四辺形を面積を変えずに長方形の形にするという方法です。
長方形の面積の求め方は「たて×横」でしたね。
「たて×横」は「底辺×高さ」としても変わりはありませんから、平行四辺形の面積が「底辺×高さ」で求まるというわけです。
平行四辺形の成立条件
最後に平行四辺形の成立条件について説明します。
これから紹介する成立条件の中でどれか1つでも当てはまっている四角形は平行四辺形になります。
成立条件は全部で5つあります。
平行四辺形の成立条件その1:2組の対辺がそれぞれ並行
これは四角形が平行四辺形になる定義で、当たり前なので説明は略します。
後の4つの証明は四角形が平行四辺形の定義を満たすことがゴールになります。
平行四辺形の成立条件その2:2組の対辺がそれぞれ等しい
かなり簡単に証明をします。今回の条件は「2組の対辺がそれぞれ等しい」ということです。
\(\triangle ABC\)と\(\triangle CDA\)について
条件と\(AC\)が共通なことより、「3つの辺が全て等しい」ので\[\triangle ABC \equiv \triangle CDA\]
よって、\(\angle BAC =\angle DCA\)となり、平行線の錯角は等しいので、\[AB /\!/CD・・・①\]
同様にして、\[BC /\!/ DA・・・②\]
①と②より、2組の対辺がそれぞれ等しければ、平行四辺形となることが示された。
平行四辺形の成立条件その3:2組の対角がそれぞれ等しい
今回の条件は「2組の対角がそれぞれ等しい」ということで、これを使います。
四角形の内角の大きさは\(360°\)であり、
\(2(\)●\(+\)✖️\()=360°\)である。
よって、●\(+\)✖️\(=180°\)である。
このことにより、\(\angle D\)の外角の大きさ\(\angle CDD’\)は\(●\)となり、\(\angle A\)と等しくなる。
平行線の同位角の大きさは等しいので、\[AB /\!/ CD・・・①\]
同様にして、\[BC /\!/DA・・・②\]
①と②より、2組の対角がそれぞれ等しければ、平行四辺形となることが示された。
平行四辺形の成立条件その4:2本の対角線がともに、互いの中点で交わる
今回の条件は「2本の対角線がともに、互いの中点で交わる」ですね。
\(\triangle AOB\)と\(\triangle COD\)について
条件と対頂角は等しいことより、「2辺と1つの角がそれぞれ等しい」ので\[\triangle AOB \equiv \triangle COD\]
よって、\(\angle BAC =\angle DCA\)となり、平行線の錯角は等しいので、\[AB /\!/CD・・・①\]
同様にして、\[BC /\!/ DA・・・②\]
①と②より、2本の対角線がともに、互いの中点で交わるならば、平行四辺形となることが示された。
平行四辺形の成立条件その5:1組の対辺が平行であり、かつその長さが等しい
最後です。もちろん条件は「1組の対辺が平行であり、かつその長さが等しい」ということです。
\(\triangle ABC\)と\(\triangle CDA\)について
まず\(AC\)は共通\(・・・①\)で、条件から\[AB=CD・・・②\]
条件の\(AB /\!/ CD\)から平行線の錯角が等しいので、\[\angle BAC =\angle DCA・・・③\]
①〜③より、「1つの辺と2つの角がそれぞれ等しい」ので\[\triangle ABC \equiv \triangle CDA\]
条件より\[AB /\!/ CD・・・④\]
\(\triangle ABC \equiv \triangle CDA\)より、\[\angle ABC =\angle CDA\]
平行線の錯角は等しいので、\[BC /\!/ DA・・・⑤\]
④と⑤より、1組の対辺が平行であり、かつその長さが等しならば、平行四辺形となることが示された。
平行四辺形の練習問題
平行四辺形の面積についての問題を用意しました。
最終チェックとして使ってみてくださいね!
問題
次の平行四辺形の面積を求めよ。
問題の解答・解説
これまでの説明を読んできた人は少し戸惑うかもしれません。
なぜなら、平行四辺形の高さに当たる値が問題の図では見当たらないからです。
これでは面積は求められそうもありません。
しかし\(AD=13\)と\(DH=5\)、\(\angle AHD=90°\)に注目してみてください。
ここで三平方の定理が使えることに気づかなくてはいけません。
三平方の定理について確認したい人はこちら↓
\(\triangle ADH\)に三平方の定理を用いて\(AH=12\)
よって、平行四辺形の面積は\((5+11)×12=\style{ color:red; }{ 192 }\)となります。
まとめ:平行四辺形の定義・性質・成立条件は、覚えておくと便利!
いかがでしたか?
意外にも、平行四辺形についてとても多くの特徴があったのではないかと思います。
これまでに挙げてきた特徴は問題を解く上で、とても大きなヒントになったりします。
少しずつでも良いので、確実に平行四辺形の定義・性質・成立条件を覚えていくようにしましょう!