【確認問題で覚える古典文法】助動詞「む・むず」の活用・文法的意味

はじめに

確認問題で覚える古典文法シリーズ、今回は推量の助動詞「む・むず」を取り上げます。

推量の助動詞「む・むず」は推量のほかに3つの意味があります。それぞれの使い方を見ていきましょう!

助動詞「む・むず」の活用

基本形 未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
む(ん) む(ん) む(ん)

活用の型は四段型です。

基本形 未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
むず(んず) むず(んず) むずる(んずる) むずれ(んずれ)

活用の型はサ変型です。

助動詞「む・むず」意味・訳し方・接続

助動詞 文法的意味 訳し方 接続
む・むず 1.推量
2.意志
3.適当・勧誘 4.仮定・婉曲
1.~だろう
2..~う、~よう、~つもりだ
3.~がよい、~てください 4.~としたら、~ような
活用語の未然形の後に続ける

1.推量

少納言よ、香炉峰(かうろほう)の雪いかなら(枕草子・二九九)
少納言よ、香炉峰の雪はどんなでしょう。

かのもとの国より、迎へに人々まうで来むず(竹取物語)
あの元の国(月の都)から、人々が迎えに参上するだろう。

文中の主語が三人称のときは原則として推量の意味をとります!

2.意志

こよひは、ここにさぶらは(伊勢物語・七八)
(わたしは)今宵は、こちらにお仕えしよう。

いづちもいづちも足の向き足らむ方へ往なむず(竹取物語)
(わたしは)どこへでも足の向いた方へ行こう。

文中の主語が一人称のときは原則として意志の意味をとります!

3. 適当・勧誘

などかくは急ぎたまふ。花を見てこそ帰りたまへ(宇津保物語・梅の花笠)
どうしてこんなにお急ぎになるのですか。花を見てお帰りなさるほうがよい。

同じくは、御手にかけ参らせて、後の御孝養をこそよくよくせさせたまはむずれ(保元物語・中巻)
どうせ同じことなら、あなた御自身の手におかけ申し上げて、死後のご孝養(供養)をよくよくなさるほうがよい。

文中の主語が二人称のときは原則として適当・勧誘の意味をとります!

4. 仮定・婉曲

心あら友もがな。(徒然草・一三七)
もし情趣を解する友なら、そのような友がほしい。

(月の国という)さる所へまからむずるも、いみじくも侍らず。(竹取物語・かぐや姫の昇天)
(月の国という)そのような所へもし参るなら、そのようなことも、(今の私には)とてもうれしくはございません。

「む」「むず」が文中で連体形をとるときは、ほとんどが仮定・婉曲の意味です。

「むず」の場合は「むずる」が連体形なので分かりやすいですが、「む」の場合は連体形も「む」なので分かりにくいのが難点です、、、

でも判断する方法はちゃんとありますよ!

下に続く語が 体言(名詞) もしくは 「が」「を」「に」 もしくは 「は」「も」「ぞ」「なむ」「こそ」 のとき、直前の「む」は連体形です。

これさえ頭に入れておけば仮定・婉曲だと一発でわかりますよー!

助動詞「む・むず」の確認問題

≪1≫( )に入る助動詞「む」を適切な形に活用しなさい。
(1)花の咲か( )折は来むよ。(更級日記・梅の立枝)

(2)とくこそ試みさせたまは( )。(源氏物語・若紫)

≪1≫の解答
(1)

直後に折という体言が来ているので、連体形の「む」です。
ちなみに意味は意志です。
訳:もし花が咲いたなら、そのようなときには来るよ。

(2)

係助詞「こそ」があるので係り結びが完成します。ということで已然形の「め」になります。
ちなみに意味は適当・勧誘です。
訳:(あなたは)早くお試しなさるのがよい。

≪2≫( )に入る助動詞「むず」を適切な形に活用しなさい。
(1)船つかまつらずは、いちいちに射殺さ( )ぞ。(平家物語・逆槽)

(2)大勢の中を打ち破ってこそ、後代の聞こえもあら( )。(平家物語・御輿振)

≪2≫の解答
(1)むずる

連体形をとり、意志の意味です。
訳:もし船を出し申し上げないならば、ひとりひとりを射殺すつもりだ。

(2)むずれ

先ほどと同じ、「こそ」の係り結びのパターンなので已然形です。
ちなみに意味は推量です。
訳:大勢の中を打ち破ってこそ、後代の評判になるというものであろう。

≪3≫次の文中にある助動詞「む・むず」の文法的意味を答えなさい。
(1)この酒飲みてとて、よき所を求め行くに、天の川といふ所に至りぬ。(伊勢物語・八二段)

(2)さる所へまからむずるも、いみどくはべらず。(竹取物語・かぐや姫の昇天)
 

≪3≫の解答
(1)意志

主語が第一人称「わたし」であることが分かるので、「意志」の意味です。
訳:この酒を飲んでしまおうと思って、適当な所を探して行くと、天の川という所に着いた。

(2)婉曲

「むずる」の後ろに「こと」を意味する体言が省略されていることに気付けば、婉曲の意味であることが分かります。
訳:そのようなところへ参りますようなことも、今の私にはうれしいとはございません。

古典文法に自信がないという方は助動詞「ず」についての記事もあわせてご覧ください!

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2021.10.19

おわりに

いかがでしたか?

推量の助動詞「む」は文中に頻出するので、しっかり頭に入れておきましょうね!

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