【3分でわかる生物基礎】混同しやすい遺伝の用語をわかりやすく整理

はじめに

生物基礎の授業で、遺伝について習った覚えはあるものの、あまり理解できていないという人は多いのではないでしょうか。

私自身も高校時代に、遺伝に関する用語の多さとその使い分けに苦戦しました。

そこで今回は、生物基礎の序盤で習う範囲「遺伝子とその働き」について、混同しやすい用語の使い分けを詳しく解説します。

遺伝はすべての生物に共通している重要な仕組みなので、しっかりマスターしましょう!

【生物基礎】混同しやすい遺伝の用語①:DNA・遺伝子・染色体・ゲノム

DNA:遺伝子の本体

DNAは地球上のすべての生物が共通して持つ物質で、デオキシリボ核酸ともいいます。

核酸とは、糖・リン酸・塩基からなるヌクレオチドが連なった物質のことを指し、具体的にはDNAとRNAが該当します。

リン酸が酸性なので、ヌクレオチドおよび核酸は酸性を示すということですよ。

DNAの塩基は4種類あり、それぞれグアニンG、シトシンC、アデニンA、チミンTという名前がついています。

生物の持つ情報はすべて4種類の塩基の並びに変換され、DNAに保存されています。

例えば、……GCGTAATGCTTA……と塩基が並んでいる時、ヒトはこの塩基配列を髪の毛がストレートヘアであるという情報に変換できるということです。

また、DNAは髪色などの形質を子孫に伝える働きを持つことから、よく「遺伝子の本体」と表現されます。

遺伝子:タンパク質の設計図

遺伝子とは、DNA上にあり転写と翻訳が行われる部分のことです。

転写と翻訳によってタンパク質が作られるので、遺伝子は「タンパク質の設計図」と表現されることが多いです。

転写と翻訳の詳しい内容については後ほど説明します。

「DNA=遺伝子」と思われがちですが、それは間違っていますよ。

DNAの塩基配列には、遺伝情報を持っている部分と持っていない部分があり、遺伝情報を持っている部分を遺伝子と呼ぶのです。

遺伝情報を持っていない残りの塩基配列は、RNAなどの設計図となって、体内の反応を調節しています。

ヒトではDNAの全塩基数の約1.5%しか遺伝子として働いていません。意外と少ないですね。

染色体:DNA+タンパク質

染色体とは、線のような形をした遺伝情報の担い手を指す言葉です。

染色体はDNAとタンパク質からなる複合体で、核の中に存在しています。

ヒトの場合、それぞれ父親・母親由来の2組の染色体が体細胞に存在しています。

1組は23本の染色体で構成されているので、1個の体細胞には46本の染色体が含まれていることになります。

染色体は、染色されやすいことから名前がつきました。

酢酸オルセイン酢酸カーミンといった染色液の名前は、よく細胞観察などの実験で登場しますよね。

染色体を観察できるのは細胞分裂の時のみですが、核の中に存在する遺伝物質という意味で、分裂期以外も染色体という用語を使用します。

ゲノム:遺伝情報の単位

ゲノムとは、生物が自らを形成・維持するのに必要な最小限の遺伝情報を表す単位のことです。

1ゲノムに含まれる塩基対数は生物によって異なっていて、例えばヒトは約30億塩基対、大腸菌は約500万塩基対です。

減数分裂後の生殖細胞には1ゲノムが含まれ、体細胞には2ゲノムが含まれます。

ここで混乱が生じがちなので、注意してくださいね。

【生物基礎】混同しやすい遺伝の用語②:DNA・RNA

DNA(デオキシリボ核酸)とRNA(リボ核酸)はどちらも核酸で、ヌクレオチドから構成される高分子化合物であるという点では共通しています。

しかし名前が異なるように、両者には大きな違いがありますよ。

DNAとRNAの構成成分の違い:糖と塩基

DNAとRNAは、ヌクレオチド中の糖と塩基に違いがあります。

DNAの糖がデオキシリボースであるのに対し、RNAの糖はリボースです。

この違いは、デオキシリボ核酸とリボ核酸の名前の前半部分に表れていますね。

RNAの塩基は、グアニンG、シトシンC、アデニンA、ウラシルUです。

DNAの塩基と異なり、RNAの塩基には、チミンTの代わりにウラシルUが使用されていますよ。

DNAとRNAの構造の違い:二重らせん構造かどうか

塩基には結合しやすい組み合わせがあるという性質を「塩基の相補性」といいます。

具体的には、グアニンGとシトシンC、アデニンAとチミンT(RNAの場合はウラシルU)が特異的に結合します。

2本の相補的な塩基配列を持ったヌクレオチド鎖が結合することでDNAが形作られています。

立体的にみると、ヌクレオチドの位置が少しずつずれているため、DNAは2本の鎖が二重らせん構造をとります。

一方でRNAの役割は、DNAの塩基配列を写し取り核の外に情報を運ぶことです。

RNAはDNAの片方のヌクレオチド鎖の塩基配列を写し取ったものなので、常に1本の鎖で存在しています。

【生物基礎】混同しやすい遺伝の用語③:転写・翻訳・セントラルドグマ

転写:RNAの合成

転写の目的は、核内に保管されている遺伝情報の必要なところだけをRNAの形で取り出すことです。

RNA合成は、DNAの2本鎖の一部がほどけ、一方の鎖の塩基に相補的なRNAのヌクレオチドが結合するという手順で行われます。

このようにして合成される、DNAの塩基配列を写し取ったRNAの完成形は、mRNAと呼ばれます。

mはMessengerの頭文字で、核内のDNAの情報を細胞質基質に持ち出す運び屋というイメージですね。

翻訳:タンパク質の合成

翻訳の目的は、DNAから写し取った遺伝情報(mRNA)に基づいてタンパク質を合成することです。

mRNAが核から細胞質基質に出ると、リボソームと呼ばれる酵素の働きによって、遺伝情報に対応するアミノ酸が結合します。

これらのアミノ酸同士がさらに連結してタンパク質になります。

ちなみに、細胞質基質内のアミノ酸をリボソームまで運ぶ行程にもRNAが用いられていますよ。

セントラルドグマ:生物共通の原則

まず核内で遺伝情報がDNAからRNAに写し取られます。

そして転写によって写し取られたRNAの情報が翻訳を経てアミノ酸を作り、アミノ酸が結合してタンパク質になります。

このような全ての生物に共通する、DNA→RNA→タンパク質という一連の流れをセントラルドグマと呼びます。

【生物基礎】混同しやすい遺伝の用語④:アミノ酸・タンパク質

アミノ酸:タンパク質の構成成分

アミノ酸が連なって鎖状になったものが、立体的な構造を取ることで、タンパク質としての働きを持つようになります。

つまりアミノ酸はタンパク質の構成成分です。

生物が利用するアミノ酸は20種類存在していて、アミノ酸の種類とその位置がタンパク質の働きを左右しています。

タンパク質:生物を構成する主成分

タンパク質は生体内に多く含まれていて、主に筋肉、臓器、皮膚、骨、毛髪などとして働きます。

運動をしている人で、プロテイン(=タンパク質)を飲む人は多いですよね。

これは、タンパク質が筋肉増強や体づくりのために必要な成分だからです。

またタンパク質は酵素の主成分で、その酵素は体内のすべての化学反応に関与しています。

遺伝子が酵素の主成分であるタンパク質の設計図なので、すべての化学反応が遺伝情報にコントロールされているとも言えますね。

おわりに

遺伝という単元の全体像と用語の使い分けのイメージは掴めたでしょうか。

最後に、混同しやすい用語をまとめた図を掲載しておきます。参考にしてみてくださいね。

用語の使い分けをマスターした上で問題に取り組むことで、さらなる実力アップを図りましょう!

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