【漢文】漢詩の形式についてわかりやすく解説!

はじめに:漢詩の形式をわかりやすく解説!

みなさん、漢詩は得意ですか?

漢文は古文に比べて授業時間が短い傾向にありますが、漢詩はその中でも扱いが小さい分野ですよね。

「七言律詩」とか「五言絶句」とか、名前は聞いたことがあるのに試験で問われると何のことかわからなくて困った、という経験をお持ちの方も多いでしょう。

そこでこの記事では、頻出なのにスルーされがちな漢詩について、その形式を初学者にもわかりやすく解説します!

漢文が苦手な人、もうすぐ漢文の試験がある人は要チェックです!

この記事で紹介する漢詩についてより深く知りたい人は、以下の参考書もチェックしてくださいね。

  • 一海知義『漢詩入門』岩波書店、1998年。
  • 前野直彬『漢文入門』筑摩書房、2015年。
  • 前野直彬『精講 漢文』筑摩書房、2018年。

漢詩の基礎形式

漢文の試験で問われる漢詩の多くは、いわゆる「近体詩」(唐代以降に成立した漢詩)です。

近体詩を理解するためには、まず漢詩の基礎的な形式を知っておかねばなりません。

そこで以下では、漢詩の最も基礎的な形式である「押韻」と「対句」について説明します。

押韻と対句は、ほぼ全ての漢詩に共通する形式なので、まずはしっかりこの部分を抑えるようにしましょう!

漢詩の基礎形式①:押韻

「押韻」はもともと中国語の表現で、日本語では「韻を踏む」といいます。

「韻を踏む」とは、漢文で詩を作るとき、一句(≒一行)の最後にくる字を同じ韻の字にすることです。

では、韻が同じになる字とはどういう特徴を持っているのでしょうか。

普通、日本語で「韻を踏む」と言ったら、母音を合わせることを言いますよね。

しかし中国語の場合は、母音を合わせるだけでは韻を踏んだことになりません。

母音以外に、「四声」というアクセントの付け方を合わせることで、初めて「韻を踏む」ことができるのです。

四声(中国語のアクセント)は

  1. 平声(ひょうしょう):高く平坦な音
  2. 上声(じょうしょう):高いトーンから一度落ちて、少し上がる音
  3. 去声(きょしょう):高いトーンから急激に落ちる音
  4. 入声(にっしょう):母音の後に p, t, kの音を持つもの

の4種類に分類できます。

母音が同じでも四声が違うことはたくさんあります。例えば、同じ “i”という母音を持つ「李」と「利」なら、「李」は②の上声ですが「利」は③の去声です。

日本人の私たちが中国語の音を聞いて分類するのは難しいので、とにかくアクセントが4種類に分類されていることをしっかりと押さえておきましょう。

漢詩の基礎形式②:対句

押韻は音に関する漢詩の形式でした。その押韻と並んで重要な漢詩の形式に「対句」があります。

「対句」と言えば「句の間で意味が対立しているのかな」と思う人もいるでしょうが、実際はそうではありません。

連続している2つの句の

  1. 字数が同じで
  2. 文法上の構成が同じ

とき、その2つの句の関係を対句と言います。

有名な、「国破山河在 城春草木深」も対句の関係にあります。どちらの句も5字で、1字目が主語、2字目が述語、3・4字目が主語、5字目が述語になっていますよね。

漢詩を読むときには、字数と文法構成を確認して対句をチェックするようにしましょう。

唐代以降の漢詩の形式

先に紹介した押韻と対句の知識を踏まえて、ここからは「近体詩」(唐代以降に製作された漢詩)の形式について説明します。

たくさんある近体詩の規則の中から、最も重要な4つの形式「平仄」・「韻」・「対句」・「用字」を取り扱います。自信のない分野から読んでみてくださいね。

唐代以降の漢詩の形式①:平仄

近体詩の形式の中で、最も基本的なのが「平仄」(ひょうそく)です。平仄の形式が守られていない場合、その詩は近体詩とは呼べません。

平仄とは、押韻の説明で紹介した「四声」のさらに細かい分類のことを指します。

四声は「平声」・「上声」・「去声」・「入声」に分けられますが、この中で「平声」だけは平坦な音で、残り3つはトーンが変化する音になっています。

そこで、平坦な「平声」を「平音」、残り3つのアクセントを「仄音」として分類したのが「平仄」です。

近体詩は五言詩(一句が5文字)と七言詩(一句が7文字)に分けられますが、五言詩の場合は各句の2字目と4字目の平仄が違っていなければなりません。

例えば、2字目が「平」(平声)ならば、4字目は「仄」(上声、去声、入声)でなければならないのです。

また七言詩の場合は、2字目と4字目の平仄と、4字目と6字目の平仄が違っていなければなりません。したがって、2文字目の平仄と6字目の平仄は同じになります。

平仄は面倒な規則ですが、覚えておくと詩句の空欄補充の問題を解くときに役立ちます。ぜひ押さえておいてくださいね。

唐代以降の漢詩の形式②:韻

平仄の次に重要なのが、の規則です。

近体詩では、基本的に偶数句末に韻を踏みます。五言絶句(各句が5文字で4句)なら2句目と4句目、七言律詩(各句が7文字で8句)なら2・4・6・8句目ですね。

なお七言詩の場合に限り、初句でも韻を踏むことがあります。確率は半々といったところでしょうか。

偶数句末では韻を踏まなければなりませんが、逆に奇数句末では韻を外さなければなりません

本来なら、母音または四声が異なる字を奇数句末におく必要があるのですが、実際には平仄が異なる字をおけば良いという緩いルールが採択されていたようです。

流石に面倒くさいでしょうからね……。

唐代以降の漢詩の形式③:対句

大多数の近体詩は、句の数によって「絶句」(句の数が4つ)と「律詩」(句の数が8つ)に分けられますが、このうち主に律詩に適用される形式として、対句があります。

律詩を構成する8句は、2句ごとに首聯(しゅれん)・頷聯(がんれん)・頸聯(けいれん)・尾聯(びれん)と分けられます。

このうち、頷聯と頸聯の2句はそれぞれ対句になっていなければなりません。律詩は大変ですね。

ちなみに、絶句にもときどき対句が発生します。その場合、初句と2句・3句と4句が対句になります。強制ではないので、対句にする詩人もいればしない詩人もいたようです。

唐代以降の漢詩の形式④:用字

最後の形式は、漢詩に用いる言葉に関する形式です。

なんと、漢詩には「同じ文字を1つの詩の中に2度以上使ってはならない」というルールがあるのです(同じ字を連続させて1つの意味を作る場合は例外として認められています)。

五言絶句なら20字、七言律詩なら56字全てを違う文字にしなければならないのは結構大変ですよね……。

これ以外に、平仄に関する用字のルールもあります。以下の3つの平仄パターンは、読んだ時の語呂が悪いので原則禁止されています。

  1. 句のラスト3字が全て平音(平声)になる(三平連
  2. 五言詩の2字目、または七言詩の4字目が平音で、その上下が仄音になる(孤平
  3. 五言詩の2字目、または七言詩の4字目が仄音で、その上下が平音になる(孤仄

三平連・孤平・孤仄が原則禁止されていることを知っていると、漢詩の空欄補充問題を解くときに役立ちます。ぜひ使ってみてくださいね。

おわりに:漢詩の形式のまとめ

いかがでしたか?

この記事では、漢詩を読むために必要な基礎的な形式から、近体詩の形式・ルールまでわかりやすく解説してきました。

最後に、漢詩の形式のキーワードチェックリストを作ったので、ぜひ確認してみてくださいね。

それでは!!

漢詩の形式に関するキーワード

  • 押韻
  • 母音
  • 四声
  • 平仄
  • 対句
  • 用字

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