こんにちは、ライターのありさです。
古典文法チェック&演習シリーズ、今回は推量の助動詞「べし」を取り上げます。
推量の助動詞「べし」は推量のほかに5つもの意味があります。それぞれの使い方を見ていきましょう!
目次
推量の助動詞「べし」の活用
べし | (べく) | べく | べし | べき | べけれ | ー |
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
---|---|---|---|---|---|---|
べから | べかり | ー | べかる | ー | ー |
活用型は形容詞型です。
推量の助動詞「べし」意味・訳し方・接続
助動詞 | 文法的意味 | 訳し方 | 接続 |
---|---|---|---|
べし | 1.推量 2.意志 3.可能 4. 当然 5. 命令 6. 適当 |
1. ~だろう 2. ~つもりだ、~よう 3.(自然と)~ことができる 4. ~はずだ、〜なければならない 5. 〜なさい 6. 〜がよい |
終止形・ラ変型は連体形+べし カリ活用は直後に助動詞が続く(断定「なり」は除く) |
6つの意味の頭だしをゴロ暗記してしまいましょう!
テ…適当
ス…推量
ト…当然
メイ…命令
カ…可能
イ…意志
ずばりテスト明解です!
1. 推量
長くとも、四十に足らぬほどにて死なむこそ、めやすかるべけれ。(徒然草・七)
(長く生きても、四十歳に足りないくらいで死ぬようなのが、見た目によいだろう。)
咲きぬべきほどの梢、散りしをれたる庭などこそ、見どころ多けれ。(徒然草・一三七)
(今にも咲きそうな頃の梢、花びらが散りしおれている庭などが、見どころの多いものだ。)
2. 意志
毎度ただ得失なく、この一矢に定むべしと思へ。(徒然草・九二)
(毎回、ただ、当たりはずれを考えることなく、この一矢で決めようと思へ。)
いかか他の力を借るべき。(方丈記)
(どうして他人の力を借りるのだろうか。)
3. 可能
羽なければ、空をも飛ぶべからず。(方丈記・二)
(羽がないので、空を飛ぶことができない。)
さりぬべき折をも見て、対面すべくたばかれ。(源氏物語・空蝉)
(ふさわしい機会を見て、逢うことができるように取り計らってくれ。)
4. 当然
人、死を憎ませば、生を愛すべし。(徒然草・九三)
(人は、もし死を憎むなら、生を愛さなければならない。)
人の歌の返し、疾くすべきを、え詠みえぬほども、心もとなし。(枕草子・心もとなきもの)
(人からもらった和歌への返歌は、早くしなければならないのに、うまく詠むことができないときも気がかりである。)
5. 命令
ゆめゆめ疎略を存ずまじう候ふ。御疑ひあるべからず。(平家物語・忠度都落)
(決しておろそかには扱わないつもりです。お疑いにならないようになさい。)
これは汝が髻と思ふべからず、主の髻と思ふべし。(平家物語)
(これはおまえの髻と思ってはならない、主人の髻と思え。)
6. 適当
家の作りやうは、夏をむねとすべし(徒然草・五五)
(家の作り方は、夏を中心とするのがよい。)
世の常のすきずきしき筋には、おぼしめし放つべくや。(源氏物語・橋姫)
((私を)世間普通の浮気な人間と思い捨ててなさってよいものでしょうか。)
推量・意志・可能・命令は、意味さえ覚えておけば、訳はその場で思い出せます。
「べし」の意味の判別法
主語の人称によって判別
(1)一人称…意志(おもに終止形)
必ず救い参らすべし。(雨月物語)
(必ずお救い申し上げよう。)
(2)二人称…適当・勧誘(おもに終止形)・命令
いかにしても忍び入らせ給ふべし。(御伽草子)
(何とかして忍び入りなさるがよい。)
(3)三人称…推量(用例多数)
人々は途中に立ちならびて、後かげの見ゆるまではと見送るなるべし。(奥の細道)
(人々は途中に立ち並んで、後ろ姿の見える限りはと見送っているようだ。)
人称意外で判別
(4)「…はずの」と訳せる場合…当然
必ず来べき人のもとに車をやりて待つに、(枕草子・二五)
(必ず来るはずの人のところへ車をやって待っていると、)
(5)「…できる」と訳せる場合…可能
影だに踏むべくもあらぬこそ、くちをしけれ。(大鏡)
(影さえ踏むことができそうにないのが、残念だ。)