はじめに
こんにちは、ライターのもんはんです。
文法チェック&演習シリーズ、今回は係助詞「は・も・ぞ・なむ・こそ・や・か」を取り上げます。係助詞とは、様々な語の後について疑問・反語・強意などの意味を添え、文末の活用形に影響を及ぼす(関係する)助詞のことです。
下の表では、意味がたくさん並べられていますが、それを一つ一つ覚える必要はありません。
注意して覚える所以外は、現代語の感覚と同じように、中心となるニュアンスをなんとなく理解しましょう。
目次
係助詞「は・も・ぞ・なむ・こそ・や・か」意味・訳し方・文末の形
助詞文法的意味訳し方文末の形
は | 強意・区別など | 〜は (訳さなくてよい) |
通常 終止形・命令形 |
も | 並列・列挙、同趣の一つ、強意など | 〜も、〜でも (訳さなくてよい) |
通常 終止形・命令形 |
ぞ | 強意 | (訳さなくてよい) | 連体形 |
なむ | |||
こそ | 強意 | (訳さなくてよい) こそ |
已然形 |
逆接 | 〜は〜だが | ||
呼びかけ | 〜さん、〜よ | (-) | |
や [やは] |
疑問・反語 | 〜か。(いや〜ない。) | 連体形 |
か [かは] |
「は」「も」の意味の分類は、参考書や辞書によって異なっています。
意味をはっきりと分けられないので、入試問題に出ることはないと考えてよいでしょう。
注意してほしい係助詞は、「ぞ」「なむ」「こそ」「や」「か」です。係り結びの法則により、「こそ」の結びは已然形、「ぞ」「なむ」「や」「か」の結びは連体形となります。
この法則は重要なので覚えておきましょう。
現代語にも、
「試験を受けるときは、程度の差こそあれ、みな緊張する。」
のように、「こそあれ」「こそすれ」などの形で係り結びの法則が残っています。
「こそ」の結びがわからなくなった時は、この表現を思い出しましょう。
強意・区別などの「は」
春はあけぼの。(枕・1)
春はあけぼの(が趣深い)。
「は」については、現代語の感覚でOKです。現代語と同じように、「は」を使うことで事柄を話題にあげます。
あばらなる蔵に、女をば奥に押し入れて、(伊勢・6)
がらんとした蔵に、女を奥に押し込んで、
並列・列挙、同趣の一つ、強意などの「も」
参考書や辞書にはいろいろな意味が載っていますが、「も」も基本的に現代語の感覚でOKです。
以下の例文を読んで、「確かに、そういう意味の分け方もあるかもなあ……」と思ってくれれば十分です。
☆並列・列挙
敵も味方もこれを聞いて、一度にどつとぞ笑ひける。(平家・宇治川先陣)
敵も味方もこれを聞いて、一度にどっと笑った。
☆同趣の一つ
才(ざえ)ありとて頼むべからず。孔子も時にあはず。(徒然・211)
学才があるといっても、頼みにはできない。孔子も時勢に巡り合わなかった。
☆強意
限りなく遠くも来にけるかな。(伊勢・9)
限りなく遠くまでも来てしまったなあ。
「ぞ」「なむ」「こそ」
☆強意の「ぞ」「なむ」「こそ」
基本的に訳しません。
例外として、「こそ」は現代語にもあるので訳せる場合もあります。
よろづの遊びをぞしける。(竹取・かぐや姫の出生)
いろいろな音楽の遊びをした。
その人かたちよりは心なむまさりたりける。(伊勢・2)
その人は、容姿よりは心が優れているのだった。
この女をこそ得め。(伊勢・23)
この女を(こそ)妻にしよう。
☆逆接の「こそ」
中垣こそあれ、一つ家のやうなれば、望みて預かれるなり。(土佐・2月16日)
(境の)垣はあるが、一つの屋敷のようなので、望んで預かったのである。
疑問・反語の「や」「やは」「か」「かは」
疑問か反語かは、文脈で判断しましょう。
「やは」「かは」は反語で使われる場合が多いですが、疑問の用法もあるので、文脈判断を怠ってはいけません。
☆疑問
蓑笠やある。貸したまへ。(徒然・188)
蓑笠はありますか。貸してください。
いにしへもかくやは人のまどひけむ。(源氏・夕顔)
昔もこのように人は迷ったのだろうか。
いかなる所にかこの木はさぶらひけむ。(竹取・蓬莱の玉の枝)
どんなところにこの木はありましたでしょうか。
いかなる契りにかはありけむ。(源氏・夕顔)
どんな(前世の)因縁であったのだろうか。
☆反語
近き火などに逃ぐる人は、しばしとや言ふ。(徒然・59)
近所の火事などで逃げる人は、「ちょっと(待って)」と言うだろうか。いや、言わないだろう。
よき人は、知りたることとて、さのみ知り顔にやは言ふ。(徒然・79)
高貴で教養のある人は、(自分が)知っていることであるからといって、そんなに物知り顔で言うであろうか、いや、言わない。
生きとし生けるもの、いづれか歌を詠まざりける。(古今・仮名序)
あらゆる生き物は、どれが歌を詠まなかっただろうか。いや、詠まないものはなかった。
月はくまなきをのみ見るものかは。(徒然・137)
月は曇りがないものだけを見るものであろうか、いや、そうではない。