【古典文法】助動詞「たし・まほし・ごとし」

はじめに

こんにちは、ライターのもんはんです。

古典文法チェック&演習シリーズ、今回は願望の助動詞「たし・まほし」比況の助動詞「ごとし」を取り上げます。

今回の助動詞は簡単です。現代語にも「〜たい」がありますし、「ごとし」も聞いたことがあると思います。ただ、現代語と違う部分もあるので注意して理解しましょう。

古文の格助詞「が・の・を・に」ついて詳しくまとめた記事も合わせてご覧ください。

【古典文法】古文の格助詞「が・の・を・に」

2020.03.27

願望の助動詞「たし・まほし」比況の助動詞「ごとし」の活用

基本形 未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
たし (たく)
たから
たく
たかり
たし たき
たかる
たけれ
まほし (まほしく)
まほしから
まほしく
まほしかり
まほし まほしき
まほしかる
まほしけれ
ごとし (ごとく) ごとく ごとし ごとき

活用の型は形容詞形です。現代語の「たい」も形容詞形ですので、全く同じですね!

願望の助動詞「たし・まほし」意味・訳し方・接続

助動詞 文法的意味 訳し方 接続
たし 願望 〜たい
〜してほしい
連用形(※1)+たし
まほし 未然形(※2)+まほし
ごとし 比況 〜のようだ
〜のとおりだ
〜と同じだ
体言・連体形・助詞「の」「が」(※3)+ごとし
例示 (たとえば)〜のような
※1 正確には、動詞と、助動詞「る」「らる」「す」「さす」「しむ」の連用形に付きます。
※2 正確には、動詞と、助動詞「す」「さす」「ぬ」の未然形につきます。
※3 正確には、活用語の連体形(+助詞「が」)、体言+助詞「の」「が」につきます。中世以降は体言のあとに直接「ごとし」がつくこともあります。

訳し方

現代語と同じ「たい」だけでなく、「してほしい」と訳す場合もあるので注意!

八島へ帰りたくは、一門の中へ言ひ送って、三種の神器を都へ返し入れ奉れ。(平家・10・内裏女房)
(お前が)八島(=屋島)へ帰りたいならば、一門の中に連絡して、三種の神器を都に返し入れ申し上げよ。

「たくは」の文法的説明は、「たし」の未然形の一つ「たく」の存在を認めるか認めないかにより異なってきます。

存在を認めた場合、
願望の助動詞「たし」の未然形「たく」+接続助詞「ば」が清音化した「は」

存在を認めなかった場合、
願望の助動詞「たし」の連用形「たく」+係助詞「は」
となります。

「まほしくは」「ごとくは」の説明も同様です。

定説が定まっていない部分は大学受験で出ることはないので、この文法的説明を覚える必要はありません訳すことができればOKです。

家にありたき木は、松・桜。(徒然・139)
家にあってほしい木は、松と桜。

紫のゆかりを見て、続きの見まほしく覚ゆれど、(更級・物語)
源氏物語の若紫の巻を見て、続きが読みたく思われるけれど、

げに、千年もあらまほしき御有様なるや。(枕・23)
本当に、千年も(このままで)いてほしい(定子様の)ご様子であるよ。

おごれる人も久しからず、ただ春の夢のごとし(平家・1・祇園精舎)
驕り高ぶる人も長く続くものではなく、(その儚さは)まるで(覚めやすいと言われる)春の夢のようだ

和歌・管絃・往生要集ごときの抄物を入れたり。(方丈・3)
和歌や音楽(についての書物)や、往生要集のような書物の書き抜きを入れてある。

存続・完了の助動詞「たり」について詳しくまとめた記事も合わせてご覧ください。

【古典文法】助動詞「たり・り」

2016.09.07

練習問題

問題

文中の赤字部分から助動詞を抜き出し、文法的に説明(例:たれ 完了 已然形)したうえで訳しなさい。
古文に自信がある人は、注を見ないで解いてみましょう。

  1. 花といはば、かくこそ匂はまほしけれな
    かく=このように。こう。 匂ふ=香る。(他にも「美しく染まる・美しく照り輝く」「栄える」の意味があります。重要単語なので要チェック!)
  2. おのが行かまほしき所へ往ぬ。
    おの=自分。 往ぬ=行ってしまう。去る。立ち去る。
  3. 楊貴妃ごときは、あまり時めきすぎて悲しき事あり。
    時めく=寵愛を受ける。
  4. 帰りたければ、ひとりつい立ちて行きけり。
    ば=〜ときはいつでも。(順接の恒常条件) つい立つ=さっと立つ。 けり=〜たということだ。(過去の助動詞)
  5. 誰(たれ)もみなあのやうでこそありたけれ
  6. つひに本意のごとく逢ひにけり。
    つひに=とうとう。 本意=本来の願い。かねてからの願い。 逢ふ=結婚する。

解答

  1. まほしけれ 願望 已然形
    花というならば、このように香ってほしいものだなあ
    係り結びの法則により、「まほし」は係助詞「こそ」の結びで已然形「まほしけれ」となります。
  2. まほし 願望 連体形
    自分が行きたいところへ去る。
  3. ごとき 例示 連体形
    (例えば)楊貴妃のような人は、あまりにも寵愛されすぎて悲しいことがある。
  4. たけれ 願望 已然形
    帰りたいときはいつでも、一人でさっと立って帰ったということだ。
  5. たけれ 願望 已然形
    誰でも皆あのようであってほしい
    係り結びの法則により、「たし」は係助詞「こそ」の結びで已然形「たけれ」となります。「こそ」は普通訳しません(例外もあります)。
  6. ごとく 比況 連用形
    とうとうかねてからの望みどおりに結婚した。



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ABOUTこの記事をかいた人

東京大学文科二類一年。モンスターハンター、前にやったことがありますがクエストが多すぎて挫折しました。よろしくお願いします!