こんにちは、ライターのもんはんです。
古典文法チェック&演習シリーズ、今回は推量の助動詞「らむ・けむ」を取り上げます。
推量の助動詞「らむ・けむ」はそれぞれ大きく分けて3つの使い方があります。それぞれの使い方を見ていきましょう!
目次
推量の助動詞「らむ・けむ」の活用
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
---|---|---|---|---|---|---|
らむ | ○ | ○ | らむ(らん) | らむ(らん) | らめ | ○ |
けむ | ○ | ○ | けむ(けん) | けむ(けん) | けめ | ○ |
活用の型は両方とも四段活用型です。
推量の助動詞「らむ・けむ」意味・訳し方・接続
助動詞 | 文法的意味 | 訳し方 | 接続 |
---|---|---|---|
らむ | 1. 現在推量 2. 現在の原因推量 3. 現在の伝聞・婉曲 |
1. (今頃)〜ているだろう 2. (どうして)〜ているのだろう、(〜だから)〜ているのだろう 3. 〜(ている)ような、〜と(か)いう、〜そうだ |
活用語の終止形(ラ変連体形)の後に続ける |
けむ | 1. 過去推量 2. 過去の原因推量 3. 過去の伝聞・婉曲 |
1. 〜ただろう。〜たのだろう 2. (どうして)〜たのだろう、〜だったからだろう 3. 〜たような、〜たと(か)いう |
活用語の連用形の後に続ける |
「うわっ、こんなに覚えるの?」と思った人、大丈夫です。
基本的に訳し方は1. 2. 3. でそれぞれ最初のものだけを覚えて、後は臨機応変に訳せばOKです。
また、「けむ」は「らむ」の過去バージョンであるとだけ覚えておけば、訳し方を覚える必要はありません。
では、実際の訳し方を見てみましょう。
1. 現在推量(らむ) 過去推量(けむ)
風吹けば沖つ白波たつた山夜半(よは)にや君がひとり越ゆらむ(古今・雑下・994)
風が吹くと沖の白波が立つ、その「たつ」と同じ名の竜田山をこの夜中にあなたは一人で越えているのだろうか。
五年(いつとせ)六年(むとせ)のうちに千年(ちとせ)や過ぎにけむ。(土佐日記)
5, 6年の間に千年も過ぎてしまったのだろうか。
2. 現在の原因推量(らむ) 過去の現在推量(けむ)
ひさかた光のどけき春の日に静心(しづごころ)なく花の散るらむ(百人一首[古今・春下・84・紀友則])
日の光がのどかな春の日に、どうして落ち着いた心もなく、桜の花が散るのだろう。
我に、などかいささかのたまふことのなかりけむ(源氏・蜻蛉)
私(=右近)に、どうして少しでも(悩みを打ち明けて)おっしゃることがなかったのだろうか。
3. 現在の伝聞・婉曲(らむ) 過去の伝聞・婉曲(けむ)
鸚鵡(あうむ)いとあはれなり。人の言ふらむことをまねぶらむよ。(枕・41・鳥は)
おうむはとてもおもしろい(鳥だ)。人が言うようなことを真似するそうだよ。
あはれ、昨日翁丸(おきなまろ)をいみじうもうちしかな。死にけむこそあはれなれ。(枕・9・上にさぶらふ御猫は)
ああ、昨日は翁丸(=犬の名)をひどくも殴ったものだなあ。死んだとかいうのは不憫だ。