練習問題
それでは実際の問題で確認してみましょう。
問題
文の赤字部分にある助動詞を抜き出して意味と活用を答え、訳しなさい。
- 春の色の至り至らぬ里はあらじ咲ける咲かざる花の見ゆらむ
春の色の至り至らぬ里はあらじ=(今ではもう)春の気配が行き渡っている里、行き渡っていない里というは差はないだろう。
咲ける咲かざる花の=咲いている花と咲いていない花が
見ゆ=見える
- 憶良らは今は罷らむ子泣くらむそれその母も我を待つらむそ
憶良が宴席を退席するときの挨拶の歌です。
憶良らは今は罷らむ=私憶良めは、もう退出申し上げよう。
子=憶良の家にいる憶良の子供のこと。
それその母も我を待つらむそ=ほら、その子の母(=憶良の母)も私を待っているだろうよ。
- 世の人もことのほかに申しけめども、
世の人も=世間の人も ことのほかに=格別に 申す=(お気の毒だと)申し上げる
- 変化の者にてはべりけむ身とも知らず、親とこそ思ひたてまつれ。
変化=神仏が仮に人間の姿になって現れること。
はべり=ございます
身とも知らず、親とこそ思ひたてまつれ。=我が身であるとも意識しないで、(あなたを)親だとお思い申し上げているのに。
解答
- らむ 現在の原因推量 終止形
(今ではもう)春の気配が行き渡っている里、行き渡っていない里という差はないだろう。(それなのに)どうして咲いている花と咲いていない花が見えているのだろう。
この例のように、いかにして(=どのようにして)・などか(=どうして〜か)などの疑問語や、原因・理由を表す句の記述がないときも原因推量で訳す場合があるので注意しましょう。
- らむ 現在推量 終止形
私憶良めは、もう退出申し上げよう。(家では今頃)子供が泣いているだろう。ほら、その子の母も私を待っているだろうよ。 - けめ 過去推量 已然形
世間の人も格別に(お気の毒だと)申し上げただろうけれども、
「ども」は逆接の仮定条件を表す接続助詞で、活用語の已然形の後に続きます。訳し方は「〜けれども」「〜でも」となります。
- けむ 過去の婉曲 連体形
神仏の化身でございましたような我が身であるとも意識しないで、(あなたを)親だとお思い申し上げているのに。
この例のように、「む」「らむ」「けむ」は名詞に続いていると婉曲になる場合が多いです。