はじめに:逆数について
突然ですが、次の質問にきちんと答えられますか?
- 0に逆数が存在しないのはなぜですか?
- 分数の割り算の際に、逆数をかけるのはなぜですか?
小学校で習う逆数ですが、意外と奥深いものなのです。
そこで今回は、基礎に立ち返って、逆数について学んでいきましょう!
目次
逆数とは何か?
それでは基礎の基礎である、逆数とは何かについて確認していきましょう。
逆数の定義は、「ある数に掛け合わせると\(1\)になる数」となっています。
もっと数学チックにいうと、「ある数\(a\)に対して、\(ab=1\)となるような数\(b\)のこと」となります。
例を2つほど挙げて、確認をしましょう。
例題
次の数の逆数を求めよ。
(1)\(\displaystyle \frac{ 2 }{ 5 }\)
(2)\(\displaystyle \frac{ 17 }{ 23 }\)
例題の解答・解説
ポイントは、逆数の定義をどのように言い換えるかということだと思います。
かけて\(1\)になるような数を求めるので、分母・分子を入れ替えてあげれば良いことになりますね。
これだけで、逆数を攻略したも同然です。
よって、(1)の答えは\[\style{ color:red; }{ \displaystyle \frac{ 5 }{ 2 } }\]
(2)の答えは\[\style{ color:red; }{ \displaystyle \frac{ 23 }{ 17 } }\]になりますね。
逆数については以上になります。とっても単純なので、ここまではクリアできると思います。
ここから少し、面倒なことが出てくるのですが、しっかりついてきてくださいね!
逆数の求め方:3パターン
逆数の求め方のパターンは、上のオーソドックスなものの他に、以下の3つがあると考えます。
- 帯分数の逆数
- 小数の逆数
- 整数の逆数
そのそれぞれを紹介していきます。
帯分数の逆数
分数は分数でも、帯分数を逆数にする際には要注意です。
先ほどの説明では、分数の逆数は分母と分子を入れ替えるだけと言いました。
しかし、帯分数の場合は少し工夫が必要です。例題で確認していきましょう。
例題
次の帯分数の逆数を求めよ。\[4\displaystyle \frac{ 4 }{ 5 }\]
例題の解答・解説
ここまでの流れからわかると思いますが、この問題ではいつものように分母と分子を入れ替えて\[4\displaystyle \frac{ 5 }{ 4 }\]としても正しくありません。
ここでは、帯分数を「仮分数」に直す作業をしてから分母と分子を入れ替えねばなりません。
仮分数とは、「分子の方が分母より大きくなっている分数」のことをいいます。
逆に、「分母の方が分子より大きくなっている分数」のことを真分数といいます。
まず、\(4\displaystyle \frac{ 4 }{ 5 }\)を仮分数に直します。
\(4\displaystyle \frac{ 4 }{ 5 }\)は、\(\displaystyle \frac{ 24 }{ 5 }\)に変形できます。
この変形は大丈夫ですよね?
ここで、分母と分子を入れ替えます。
よって、\(4\displaystyle \frac{ 4 }{ 5 }\)の逆数は\[\style{ color:red; }{ \displaystyle \frac{ 5 }{ 24 } }\]になります。
帯分数の逆数についての説明は以上になります。
小数の逆数
次は、小数の逆数についてです。
小数の逆数ですが、これは「小数を分数にしてから逆数にする」というやり方で求めることができます。
例題で確認しましょう。
例題
次の小数の逆数を求めなさい。\[0.125\]
例題の解答・解説
まずは、小数を分数にします。
\(0.125\)は\(\displaystyle \frac{ 125 }{ 1000 }=\displaystyle \frac{ 1 }{ 8 }\)に変形できます。
よって、\(\displaystyle \frac{ 1 }{ 8 }\)の逆数を求めれば、\(0.125\)の逆数を求めたことになるので\[\style{ color:red; }{ \displaystyle \frac{ 8 }{ 1 }=8}\]が答えになります。
整数の逆数
整数には、分母も分子もないので逆数など作りっこないと思っていませんか?
そんな時は逆数の定義に戻ってみましょう。
逆数の定義は「ある数とかけて1になるような数のこと」でした。
このことを使って例題を解いてみましょう。
例題
次の数の逆数を求めよ。\[7\]
例題の解答・解説
\(7\)とかけて\(1\)になるような数を求めるのが、今回の問題です。
直感でもなんとなくはわかりますが、確実に正解するには直感だけだと不安です。
そんな時は、\(7\)を分数の形に変えてあげるとわかりやすくなります。
\(7\)を分数にすると\(\displaystyle \frac{ 7 }{ 1 }\)です。
そして、分母と分子を入れ替えます。
すると、求める答えは\[\style{ color:red; }{ \displaystyle \frac{ 1 }{ 7 } }\]だとわかります。
整数も分数の形にしてあげると、逆数はグッと求まりやすくなりますよ。
逆数についてのよくある疑問
ここでは、冒頭に挙げた質問に答えを出していこうと思います。
冒頭に挙げた質問とは、
- 0に逆数が存在しないのはなぜか?
- 分数の割り算の際に、逆数をかけるのはなぜか?
という2問でした。
それぞれを証明してみようと思います。
\(0\)に逆数が存在しない理由
この疑問に対しては、証明を与えてみようと思います。
使う事柄は、逆数の定義だけです。
そして使う証明方法は背理法です。
背理法について、知りたい人はこちらの記事を参考にしてください。
(証明)
\(0\)に逆数があるとする。
逆数の定義は「ある数\(a\)にかけて、\(ab=1\)となるような数\(b\)」である。
ここでは\(b\)が逆数であり、\(a=0\)である。
\(ab=1\)に\(a=0\)を代入して、\(0・b=1\)
よって、\(0=1\)となるがこれはありえない。
これは\(0\)に逆数があるとしたためである。
よって、\(0\)に逆数はない。
(証明終了)
分数の割り算で、逆数をかける理由
こちらの質問の意味は、例えば\[\displaystyle \frac{ 2 }{ 7 }÷\displaystyle \frac{ 3 }{ 4 }=\displaystyle \frac{ 2 }{ 7 }×\displaystyle \frac{ 4 }{ 3 }\]のようにして計算できるのはなぜか?という質問です。
この質問の答えは、言葉での説明になるので、イメージしながらみてください。
まず、例を出してみます。
例題
ジュースを\(5\)本買って、合計で\(550\)円支払いました。
\(1\)本あたりは、いくらでしょうか?
例題の解答・解説
これは、簡単ですね。
\(550÷5=110\)という式で、\(1\)本あたり\(\style{ color:red; }{ 110円 }\)という値段を求めることができます。
同様に次の例題ではどうでしょう?
例題
鉛筆を\(1\)本買って、\(120\)円支払いました。
\(1\)ダース(\(12\)本)はいくらでしょう?
例題の解答・解説
鉛筆\(1\)本は、\(\displaystyle \frac{ 1 }{ 12 }\)ダースです。
よって、問題を言い換えると
「鉛筆を\(\displaystyle \frac{ 1 }{ 12 }\)ダース買って、\(120\)円支払いました。\(1\)ダースあたりは、いくらでしょう?」
という問題に変えることができます。
ジュースの例題と同じように計算してみましょう。
対応関係は下のグラフのようになっています。
よって、\(120÷\displaystyle \frac{ 1 }{ 12 }\)という式で答えが求まることになりますね。
この求め方を①とします。
次に、\(\displaystyle \frac{ 1 }{ 12 }\)とは、1つを12個に分けた中の1つ分なので、元の量(つまり\(1\)ダース)は\(12\)倍である、と考えると\(120×12\)という式でも求めることができますね。
こちらの求め方を②とします。
①と②は、同じものを求めているので、①=②です。
よって、\[\style{ color:red; }{ 120÷\displaystyle \frac{ 1 }{ 12 }=120×12 }\]になります。
どうでしたか?
少し複雑なので、説明がわかんないという人は、「分数の割り算は、逆数をかける」とだけでも覚えておきましょう。
おわりに:逆数のまとめ
いかがでしたか?
一見簡単そうに見える逆数も、意外と奥深い数でしたよね?
当たり前のように使っている計算方法や公式には、全部きちんとした証明があります。
もし小学生から、「なんで\(0\)に逆数がないの?」と質問されてもきちんと説明できるようにしておくことが必要ですよ!