タンジェント(tan)の加法定理について
正接(tan)の加法定理は正弦(sin)、余弦(cos)の加法定理から簡単に導き出すことができ、公式も簡単に覚えられます。
これからタンジェント(tan)の加法定理を理解する人から復習のために勉強する人まで、わかりやすく公式とその証明、使い方を解説します。
ぜひ最後まで読んで、タンジェント(tan)の加法定理を完璧にマスターしましょう!
またこのタンジェント(tan)の加法定理は、sin・cosの加法定理の理解が前提となります。
sin・cosの加法定理の理解が曖昧な方は以下の記事を参考にしてください。苦手な人でもわかるように丁寧に解説しています。
目次
タンジェント(tan)の加法定理
タンジェント(tan)の加法定理の公式
タンジェント(tan)の加法定理の公式は以下の通りです。
α+β、α-βと2種類ありますが、tan(-β)=-tanβであることを知っていれば下の式は導けるので、上の式だけを覚えていれば大丈夫です!
sin(-α)、cos(-α)、tan(-α)がそれぞれどうなるか曖昧な方は三角関数の性質を確認し直しましょう。
タンジェント(tan)の加法定理の覚え方
タンジェント(tan)の加法定理は「1マイタンタン、タンプラタン♪」と覚えましょう。
3回ぐらい口ずさめばもう忘れないと思います!
この公式を利用すると、tanα、tanβの値がわかっているときに、tan(α±β)の値を求めることができます。
タンジェント(tan)の加法定理の具体例
たとえば、\(tan75°\)を求めるとします。
75°=30°+45°であることから
\begin{align}
tan75°&=tan(30°+45°) \\
&=\frac{tan30°+tan45°}{1-tan30°・tan45°} \\
&=\frac{\frac{1}{\sqrt{3}}+1}{1-\frac{1}{\sqrt{3}}・1} \\
&=2+\sqrt{3}
\end{align}
このように公式を当てはめることで簡単に求めることができましたね。
タンジェント(tan)の加法定理の証明
タンジェント(tan)の加法定理の証明のプロセス
公式を覚えたところで、これから加法定理を証明します。sin・cosの加法定理を利用すると簡単に導けるのでぜひ理解してください。
また、説明が必要なところには補足を加えていますので、数学が苦手な方でもぜひ読んでみてください。
\(tan(α+β)=\frac{sin(α+β)}{cos(α+β)} (1)\)
\(tanθ=\frac{sinθ}{cosθ}\)は三角関数の性質の1つを利用したものです。
(1)の右辺は正弦・余弦の加法定理より
\(\frac{sin(α+β)}{cos(α+β)}=\frac{sinαcosβ+cosαsinβ}{cosαcosβ-sinαsinβ} (2)\)
sin・cosの加法定理は「咲いたコスモス、コスモス咲いた」「コスモスコスモス、咲いた咲いた」でしたね。また、cosの場合、符号が負であることに注意しましょう。
(2)の右辺の分母分子をcosαcosβで割ると
\begin{align}
\frac{sinαcosβ+cosαsinβ}{cosαcosβ-sinαsinβ}&=\frac{\frac{sinαcosβ}{cosαcosβ}+\frac{cosαsinβ}{cosαcosβ}}{\frac{cosαcosβ}{cosαcosβ}-\frac{sinαsinβ}{cosαcosβ}} \\
&=\frac{tanα+tanβ}{1-tanα・tanβ}
\end{align}
よって、\(tan(α+β)=\frac{tanα+tanβ}{1-tanα・tanβ}\)が示された(証明終了)
タンジェント(tan)の加法定理の証明の注意点
cosαcosβで割ることに注意しましょう。
\(tanθ=\frac{sinθ}{cosθ}\)を思い出すことができても、「この先どうやって公式の形にまでつなげるんだっけ?」とやり方を忘れてしまいやすいです。
そこで、思い出せるようにこの式の左下の「cosαcosβ」に注目しましょう。
\(\frac{sinαcosβ+cosαsinβ}{cosαcosβ-sinαsinβ}\)
分母を観察することで、「cosαcosβで割ったら、公式が出てきそう」ということに気づくことができます。
以上のように、tan(α+β)をsin,cosで表し加法定理を適用し、分母分子をcosαcosβ割ることで公式を導くことができます。cosαcosβで割ることさえ忘れなければ証明できるので、ぜひ一度自分の手で証明してみてください。
タンジェント(tan)の加法定理の使い方
タンジェント(tan)と直線の傾きとの関係をご存知ですか?
例えば、y=axとx軸との間の角がθであった場合
a=tanθが成り立ちます。
また、x軸との間の角がそれぞれα、βであるy=axとy=bxとの間の角をθとすると
\(tanθ=tan(β-α)=\frac{b-a}{1+ba}\)が成り立ちます。
このようにタンジェント(tan)と直線とx軸の間の角度を関連させて問題が出題されます。
一見難しそうですが、実は公式をそのまま適用する場合が多く美味しいポイントです。
それでは、実際に問題を通して解説します。
問題
2直線y=2x+3、y=5x-4があり、x軸の正の向きとなす角度をそれぞれα、βとする。
この2直線がなす角をθとするとき、tanθを求めよ。
それでは実際に解いていきましょう。
まずはtanα、tanβを求めます。
タンジェント(tan)とは直線の傾きなので、
tanα=2、tanβ=5が成り立つ。
y=2x+3、y=5x-4と切片がありますが、平行移動してもx軸となす角度は変わらないので関係ありませんね。
次に、tanθを求めましょう。
θ=β-αなので
\begin{align}
tanθ&=tan(β-α) \\
&=\frac{tanβ-tanα}{1+tanβtanα} \\
&=\frac{5-2}{1+5・2} \\
&=\frac{3}{11} ・・・(答)
\end{align}
以上のように、加法定理を利用することで簡単にtanθを求めることができるのです。
もしtanθが有名角の値(\(tan60°=\sqrt{3}\)など)であればθも具体的に導くことができます。
直線の傾きがm,nなどの文字になっていても同じことなので慌てないようにしましょう!
タンジェント(tan)の加法定理は意外と簡単
タンジェント(tan)の加法定理は最初はとっつきにくく難しいと思う方もいるかもしれませんが、一つ一つ理解していけば難しいことはありません。
公式の覚え方が「1マイタンタン、タンプラタン♪」であること。
公式の証明は、cos・sinの加法定理を利用すること。
直線の間の角などで利用する機会があること。
この3つを必ず覚えておくといいですよ。