はじめに
みなさんこんにちは!ライターのいとぅです。
高校数学要点まとめシリーズ、今回は数学B「数列」の分野から「階差数列」をとりあげます!
授業では駆け足でさらっと流されてしまうことが多い項目なので、よくわからなかったり苦手としたりする人も少なくないと思います。
しかしセンター試験をはじめ、様々な大学の問題に少し手間のかかる計算問題などで出題されるのでしっかり定着させましょう。
階差数列の要点まとめ
階差数列とは
数列\( \{ a_n \} \)があるとき、階差数列とは \( \{ a_{n+1} – a_n \} \)です。つまり、\( b_n = a_{n+1} − a_n \)としたときの数列\( \{ b_n \} \)のことです。
図にするとこんな感じ。
え、似たような図を見たことがある?
そうです。等差数列の公差\( d \)を、ある数列\( \{ b_n \} \)に置き換えたものなんです!
こうしてみると等差数列は「階差数列\( \{ b_n \} \)が\( b_n = d \) (定数)であるような数列\( \{ a_n \} \)」と考えることができますね。
たまに「階差数列は数列\( \{ a_{n+1} – a_n \} \)のうち規則性を持つもの」と勘違いしている人がいますが、これが規則性を持つ必要はありません(階差数列関連の問題を解く上では規則性がなきゃ困りますが)。
あくまで階差数列とは数列\( \{ a_{n+1} – a_n \} \)のことです。出題されるものはこれに規則性があるというだけです。
階差数列を用いた一般項の計算
階差数列とは何か分かったところで実際にこれを用いて複雑な数列の一般項を求めてみましょう。
- \( 1, 7, 18, 34, 55, 81, …… \)
- \( 1, 4, 9, 19, 37, 66, 109, …… \)
- ぱっと見、どの項も奇数だということしかわかりませんね…ではここでこの数列の階差数列を見てみましょう。
隣り合う項の差をとると…
$$ 6, 11, 16, 21, 26, …… $$
もうお分かりでしょう。初項が6,公差が5の等差数列です。これで階差数列が\( \{ 5n+1 \} \)だと分かりました。
ではもとの数列の一般項はどうすれば求まるでしょうか?
先ほどの等差数列との関連を思い出して同じように一般項を考えると、一般項\( a_n \)は初項\( a_1 \)に数列\( \{ 2^n \} \)の初項から第\( (n-1) \)項までの和を足したものですね。
つまり、
$$ a_n = a_1 + \displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n-1 } ( 5k + 1 ) $$
となるんです!ただしこれが成り立つのは\( n ≧ 2 \)のときだけです。これがすべての\( n \)について成り立つかはまだ分かりません。
なぜかというと、\( n = 1 \)のとき\(k\)は1からスタートしているのに\( n-1 \)は0になるのでゴールがスタートよりも前にあるという状態になってしまい、\( \Sigma \)の計算ができないからです。
そこで、まず\( n ≧ 2 \)に関して
$$ a_n = a_1 + \displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n-1 } ( 5k + 1 ) $$
が成り立つことを言ってから計算し、\( a_n = \frac{1}{2} n ( 5n – 3 ) \)を得ます。次に\( n = 1 \)を先ほどの\( a_n = \frac{1}{2} n ( 5n – 3 ) \)に代入して\( a_1 = 1 \)となるかどうかを確認します。
確認したら最後に\( n = 1 \)も含めたすべての自然数\( n \)について\( a_n = \frac{1}{2} n ( 5n – 3 ) \)であることを記述すれば完璧です!
これが階差数列の問題の代表的な解き方なのでよく覚えておきましょう!
- (❶で\( n ≧ 2 \)だとか\( n = 1 \)だとかの説明はしたので❷では省略しますね。)こちらの数列も一目見ただけでは規則性がわからないので階差数列を見ましょう。
もとの数列を\( \{ a_n \} \)、階差数列を\( \{ b_n \} \)とすると、\( \{ b_n \} \)は
$$ 3, 5, 10, 18, 29, 43, …… $$
です…これでもまだよく分かりませんね。
ではもう1回階差数列を考えましょう。数列\( \{ b_n \} \)の階差数列を\( \{ c_n \} \)とすると、\( \{ c_n \} \)は
$$ 2, 5, 8, 11, 14, …… $$
となります。ここまできたらわかりますね。
そう、初項が2,公差が3の等差数列(\( c_n = 3n – 1 \))です。あとは❶でやったように\( b_n \)を求めると、
\begin{eqnarray}
b_n &=& b_1 + \displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n-1 } ( 3k – 1 ) \\
&=& 3 + 3 \cdot \frac{1}{2} (n-1)\{ (n-1)+1 \} – (n-1) = \frac{1}{2} ( 3n^2 – 5n + 8 )
\end{eqnarray}
最後にこれを使って\( a_n \)を計算するだけ!
\begin{eqnarray}
a_n &=& a_1 + \displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n-1 } \left( \frac{1}{2} ( 3n^2 – 5n + 8 ) \right) \\
&=& 1 + 3 \cdot \frac{1}{6} (n-1)\{ (n-1)+1 \}\{ 2(n-1)+1 \} – 5 \cdot \frac{1}{2} (n-1)\{ (n-1)+1 \} + 8(n-1) \\
&=& n^3 – 4n^2 + 11n – 7
\end{eqnarray}逐一、\( n = 1 \)についての確認をするのを忘れないでください。
面倒ですがひとつひとつこなしていけば難しい話ではありませんね!
共通テスト数学IAのポイントについて詳しくまとめた記事も合わせてご覧ください。
おわりに
「次の数列の一般項を求めなさい。 1, 3, 5, …」のように具体的な数列が与えられていて一般項を求める問題はだいたいの場合、受験生が規則性に気づきやすいようなものなのです。気づけないような複雑なものが出てきたときに役に立つのが階差数列です。
階差数列の問題の解き方の流れをもう一度確認しましょう。
- (規則性がわかるまで)階差数列を調べる。
- 階差数列の一般項を求める。
- \( n ≧ 2 \)において、もとの数列の一般項を計算する\( \left( a_n = a_1 + \displaystyle \sum_{ k = 1 }^{ n-1 } b_k \right) \)
- 計算した結果が\( n = 1 \)についても成り立つか確認する。
- 最終的な答えを書く。
\( n ≧ 2 \)だとか\( n = 1 \)だとかについての議論は記述式の試験では特に重要なのでしっかり書きましょう!