はじめに:方べきの定理とその逆、証明や使い方について!
みなさん、方べきの定理は数学Aの範囲だしどうせ難しい入試問題じゃ使う機会ないよ、とか思ってませんか?
いえいえそんなことはありません。方べきの定理はセンター試験で頻出であるだけに留まらず、難関大の入試問題においても、方べきの定理が解決の糸口になったりする場合があるのです。
今回は、そもそも方べきの定理、またその逆とは何か、加えてその証明や使い方などを基本から説明していこうと思います。
最後には練習問題もつけましたので、ぜひ理解に役立ててください!
目次
方べきの定理とは?
まず、方べきの定理には2つのパターンがあります。それぞれ説明していきます。
方べきの定理の1つ目のパターン
1つ目は下図のようになる場合です。
このとき、PA・PB=PC・PDが成り立ちます。
これが方べきの定理の1つ目のパターンです。
方べきの定理の2つ目のパターン
2つ目は下図のように片方の線分が円の接線になる場合です。
このとき、PA・PB=PT\(^2\)が成り立ちます。これが方べきの定理の2つ目のパターンです。
(1つ目のパターンの右側の場合のCとDが一致したパターンだと考えれば、覚えやすいですね!)
方べきの定理の証明
一般的に、図形問題の証明は三角形の相似を利用することが多いので、証明における基本的な手法として覚えておきましょう。
ここでも相似を利用した証明を紹介したいと思います。
まずは1つ目のパターンの証明から示していきたいと思います。
方べきの定理の証明:1つ目のパターン
まず、対頂角は等しい(または共通している)ことより、\(\angle\) APC=\(\angle\) DPBが成り立つ。
また、円周角の定理より、(円周角の定理について詳しくは下のページを参照)
\(\angle\) PAC=\(\angle\) PDB(または\(\angle\) PCA=\(\angle\) PBD)が成り立つ。よって、2角が等しいことより\(\triangle\) PAC ∽ \(\triangle\) PDBである。
このとき、PA:PD=PC:PBが成り立つから、外項の積と内項の積の関係より、PA・PB=PC・PDが成り立つ。(証明終わり)
次に2つ目のパターンの証明です。こちらも相似を利用して示していきます。
方べきの定理の証明:2つ目のパターン
まず、\(\angle\) APT=\(\angle\) TPB(∵共通している)
次に、接弦定理より、(接弦定理について詳しくは下のページを参照)
\(\angle\) PTA=\(\angle\) PBTが成り立つ。よって、2角が等しいことより\(\triangle\) PTA ∽ \(\triangle\) PBTである。
このとき、PT:PB=PA:PTが成り立つから、外項の積と内項の積の関係より、PA・PA=PT\(^2\)が成り立つ。(証明終わり)
方べきの定理の逆
方べきの定理の逆とは
「2本の線分ABとCD、またはABの延長とCDの延長が点Pで交わるとき、PA・PB=PC・PDが成り立つならば、4点A、B、C、Dは同一円周上にある。」
というものです。
こちらの証明も簡単に示しておきます。
(上と同様、相似を利用します。証明は覚えなくても、理解する程度で大丈夫です。)
方べきの定理の逆の証明
PA・PB=PC・PDより、PA:PD=PC:PBが成り立つ。
また、\(\angle\) APC=\(\angle\) DPB(対頂角、または共通していることより)である。
よって、\(\triangle\) PAC ∽ \(\triangle\) PDB。
したがって、\(\angle\) PAC=\(\angle\) PDBが成り立つことから、円周角の定理の逆より、4点A、B、C、Dは同一円周上にある。(証明終わり)
また、2つ目のパターンの逆として次の定理があります。
「同一直線上にない3点A、B、Tがある。線分ABの延長上にPA・PA=PT\(^2\)が成り立つような点Pが存在するとき、PTは3点A、B、Tを通る円に接する。」
これを使う場面はあまりないので、こんなものもあるんだ、という程度で大丈夫だと思います。
証明も、2つ目のパターンの証明の逆をたどるようにすれば(上記の1つ目のパターンの逆の証明のように)、簡単に示せます。(ここでは割愛します。)
ただ、最初に述べた方べきの定理の逆は、
4点が同一円周上にあることを示すことができる便利なものなので、
ぜひ理解して使いこなせるようにしておきましょう!
方べきの定理を用いる練習問題
まずは、1つ目のパターンを使う問題です。
問題1
次の図中の\(x\)の値を求めよ。
問題1の解答・解説
(1)
方べきの定理より、4・6=3・xであるから
3x=24
∴x=8(答え)
(2)
方べきの定理より、5・(5+7)=6・(6+x)であるから
x+6=10
∴x=4(答え)
次は、2つ目のパターンを使ってみましょう。
問題2
次の図中の\(x\)の値を求めよ。ただし、Oは円の中心とする。
問題2の解答・解説
方べきの定理より、3・(3+x)=\(\sqrt{24}\)\(^2\)であるから
3(3+x)=24
3+x=8
∴x=5(答え)
最後に、方べきの定理の逆を使った簡単な応用問題にチャレンジしてみましょう。
問題3
下図においてPA・PB=PC・PDが成り立つとき、\(\angle\)Xを求めよ。
問題3の解答・解説
PA・PB=PC・PDが成り立つことから、方べきの定理の逆より、4点A、B、C、Dは同一円周上にある。
よって四角形ABCDは円に内接し、円に内接する四角形の性質より、対角の和は180°になることから\(\angle\)BAC+\(\angle\)BDC=180°が成り立つ。
\(\angle\)BDC=80°より\(\angle\)BAC=100°となり、内角と外角の和は180°、すなわち\(\angle\)X+\(\angle\)BAC=180°であるから、\(\angle\)X=80°(答え)
まとめ:方べきの定理を適切に使えば、難しい図形問題も解けるようになる!
いかがでしたか?
ここでは基本的な問題にしか触れませんでしたが、冒頭で述べたように難関大で出題されるような一見難しい図形問題も、方べきの定理や方べきの定理の逆を適切に使うことで一気に解決への道が開けることがあります。
上で述べた基本事項をしっかり理解した上で、余力のある人はぜひ難しい問題にもチャレンジしてみましょう!