はじめに
重解は、高次方程式における特殊な解であり、色々な問題の中で出てくるものです。
しかし、一体どういう意味のものなのか、いまいちはっきりとつかめていない人も多く、初歩的なミスをしがちです。
ここでは、特に二次方程式の重解について、いろんな角度から解説していきたいと思います。
そもそも「重解」の意味とは?
まず、そもそも重解とは何かを一度確認しておきます。
簡単に言えば高次方程式の解で2つの解が同じ値であるときのその解のことを言いますが、もう少し重解について考えてみましょう。
二次方程式\(ax^2+bx+c=0\)(ただし\(b^2-4ac≧0\)の時)を考えてみましょう。
解の公式より
\[x=\frac{ -b\pm\sqrt{ b^2-4ac } }{ 2a }\]
二次方程式の解が重解となるには\(\sqrt{ }\)(ルート)の中身が\(0\)とならねばなりませんから
\(b^2-4ac=0\)である必要があります。
したがって、二次方程式が重解を持つための必要十分条件は、\[b^2-4ac=0\]であることがわかりました。
また、この\(b^2-4ac\)を判別式\(D\)といいます。
二次方程式に限り、重解をもつかどうかを調べるには判別式が\(0\)であるかどうかを調べれば良いのです。
判別式について復習したい人は以下の記事を読んでみましょう。
さて、次は重解を別のやり方、二次関数で捉えてみたいと思います。
二次関数\(y=ax^2+bx+c\)のグラフと\(x\)軸の共有点の\(x\)座標は、二次方程式\(ax^2+bx+c=0\)の実数解で与えられます。
そして、その実数解の個数は、その二次方程式の判別式\(D=b^2-4ac\)の正負で決まります。
二次関数\(y=ax^2+bx+c\)のグラフと\(x\)軸の位置関係は、以下のような種類があります。
二次方程式\(ax^2+bx+c=0\)の解が重解になるのは、上の図で言えば真ん中の\(x\)軸と二次関数のグラフが一点で接している場合です。
この接している一点を接点といい、接点の値が二次方程式\(ax^2+bx+c=0\)の重解となります。
逆に、二次方程式が重解を持つとき、その関数のグラフは\(x\)軸とある1点で接するということになりますね。
このように、重解は二次方程式においては判別式だけでなく、二次関数のグラフから捉えることも可能です。
二次方程式、三次方程式における重解の求め方
今度は例題で確認してみましょう。まずは二次方程式の問題です。
例題
二次方程式\(x^2-6x+9=0\)を解け。
解答・解説
二次方程式の左側の辺を因数分解をすると、
\((x-3)^2=0\)となります。
よって、この二次方程式の解は\(x=3\)(重解)となります。
ちなみに、判別式の値を調べてみると、
\(\frac{ D }{ 4 }=3^2-9=0\)と、たしかに\(0\)になっていますね。
次は、三次方程式の問題に挑戦してみましょう。
三次方程式の解にも重解があります。それは三次方程式が重解と、他の1解をもつときです。
最初に断ったように、重解は二次方程式だけに関係するものではありません。
高次(二次以上)の方程式であれば重解を持ち得ます。
それでは問題へ行きましょう。
例題
三次方程式\(x^3-7x^2+15x-9=0\)を解け。
解答・解説
この問題の場合、因数定理を使います。因数定理については
を参照してください。ここで、\(f(x)=x^3-7x^2+15x-9\)とすると、\(f(1)=1-7+15-9=0\)より
\(f(x)=0\)は\(x=1\)を因数にもつ。
\(x^3-7x^2+15x-9=0\)を\((x-1)\)で割ると、 \((x-1)(x^2-6x+9)=0\)となり、
二次の部分をさらに因数分解をすると、\((x-1)(x-3)^2=0\)となります。
よって、三次方程式\(x^3-7x^2+15x-9=0\)の解は、\[x=1とx=3(重解)\]となります。
たとえ三次方程式でも四次方程式であっても、重解が解になりうるということに注意が必要です。
また、三次方程式の解には、3つの全く別の値の解、重解1つと重解とは別の値をとる解1つというパターンの他に、3つの解の値が全部同じになる3重解というものもあります。
具体的には三次方程式\(x^3=1\)の解が\(x=1\)だだひとつになる、といった具合です。
重解がからむ練習問題
解説を読んで理解したら、どんどん問題を解いて練習しましょう!
練習問題1
二次方程式\(x^2-ax+1=0\)について、\(a\)の値によって、解の個数がどのように変化するかを調べよ。
練習問題1の解答・解説
この問題をみたときに、まず思い浮かんではしいのは判別式です。
判別式を用いる問題だ、と気づくことさえできればゴールは見えてきます。
判別式を\(D\)とすると、 \(D=a^2-4\)
\(D\)の正負によって解の個数が変わってくるので、\(D\)の符号に着目します。
(Ⅰ)\(D>0\)のとき(つまり解を2個もつとき)
\(D=a^2-4>0\)より、 \(a^2>4\)
ゆえに\(a<-2,a>2\)
同様に他の場合についても調べていきます。
(Ⅱ)\(D=0\)のとき(つまり重解を持つとき)
(Ⅰ)と同様にして、\(a^2=0\) よって、\(a=\pm 2\)
(Ⅲ)\(D<0\)のとき(つまり解を1つも持たないとき)
(Ⅰ)と同様にして、\(a^2<0\) よって、\(-2<x<2\)
以上をまとめると、
\(a<-2,a>2\)のとき、解を2つ
\(a=\pm 2\)のとき、重解
\(-2<x<2\)のとき、解なし
となります。
練習問題2
二次方程式\(x^2-kx+4=0\)の解が重解となるような定数\(k\)を求めよ。
練習問題2の解答・解説
今回の問題も主役は判別式です。判別式がいかに強烈な武器になるかをわかってもらえると思います。
判別式を\(D\)とすると、 \(D=k^2-16\)
二次方程式\(x^2-kx+4=0\)の解が重解となればよいので、\(D=0\)
つまり、\(k^2-16=0\) よって、\(k=\pm 4\)のとき二次方程式は重解を持つことがわかります。
まとめ:重解と判別式
いかがでしたか?
練習問題を解いていてお気付きの方もいるかもしれませんが、二次方程式で重解が絡む問題には判別式がつきものといっても過言ではありません。
重解がどのようなもので、いつ判別式を持ち出せばよいのかをしっかり判断できるようになれば、怖いもの無しです。
ぜひ練習を重ねて、マスターしてみてください!!!
2次関数のグラフの描き方についての記事もあわせてご覧くださいね。