はじめに
恒等式は数Ⅱの「式と証明」を学習する際に習います。
聞きなれない用語なので最初は戸惑うかもしれませんが、意味を理解すればすぐにマスターできます。
実際に問題を解く上で注意点がいくつかあるので今回の記事で押さえておきましょう。
恒等式とは
恒等式とは、含まれている文字(xが多い)にどの値を代入しても成り立つ式のことです。
「恒(つね)に等しい式」ということで恒等式という名前がついています。
わかりやすくするために、方程式と恒等式を比べてみます。
方程式は文字が特定の値を取るときのみに成り立ちます。
たとえば、\(2x-4=0\)であれば \(x=2\)のときだけ成り立ちますよね。
一方、恒等式はxの値に関わらず成り立ちます。
たとえば、\(2x-4=2(x-2)\)を考えてみましょう。
この式はxがどんな値であっても成り立ちますよね。
このとき、上の等式を恒等式と呼びます。
方程式についての記事もあわせてご覧ください!
一般に次のことが成り立ちます。
つまり、恒等式であれば係数が等しく、係数が等しければ恒等式であるということです。
この性質を覚えておくことで恒等式の理解はほぼ大丈夫といっていいでしょう。
恒等式の2つの解き方をわかりやすく
恒等式の理解を完璧にするためには恒等式の解き方を2つ覚える必要があります。
- 係数比較法
- 数値代入法
それは以上の2つ解き方です。それぞれの解き方をわかりやすく解説しているので、順番に見ていきましょう。
恒等式の1つ目の解き方:係数比較法
例えば、次のような問題が出題されたとします。
が恒等式となるようなb,c,dの値を求めよ
この問題を解くためには恒等式の各次数の係数は等しいという性質を利用します。
それが係数比較法というものです。
まずは右辺を展開しましょう。
\((x+b)(cx^2+d)=cx^3+bcx^2+dx+bd\)
この式と元の式の左辺が恒等式になるように値を考えます。
そのためには各係数が等しければ良いので、
\(3=c,6=bc,4=d,8=bd\)
これより\((b,c,d)=(2,3,4)\)だとわかります。
恒等式の2つ目の解き方:数値代入法
恒等式の解き方の2つ目は、数値代入法と呼ばれる解き方です。
恒等式がすべての値で成り立つことを利用して、特定の数字を代入し、そこから係数を求めるという方法です。
実際にやってみましょう。
が恒等式となるとき、a,b,cの値を求めよ。
この等式にいくつかの数字を代入して、a,b,cの値を求めます。
\(x=1\)のとき
\(3+4+1=c\)
よって\(c=8\)
\(x=2\)のとき
\(12+8+1=b+c\)
よって\(b=13\)
\(x=0\)のとき
\(1=2a-b+c\)
\(a=3\)だとわかります。
よって答えは\((a,b,c)=(3,13,8)\)と言いたいところですが、これだけでは不正解です。
今のままでは0,1,2のときに成り立つとしかいえず、すべてのxについて成り立つかどうかわからないからです。つまり、a,b,cの条件は恒等式であるときの必要条件に過ぎず、十分条件ではないのです。
そこで十分条件を満たすために、係数を比較する必要があります。
右辺に代入すると
\(a(x-1)(x-2)+b(x-1)+c\)
\(=3(x-1)(x-2)+13(x-1)+8\)
\(=3x^2+4x+1\)
元の等式の左辺と係数が等しいことがわかります。これより恒等式ということができるので、答えは\((a,b,c)=(3,13,8)\)となります。
この十分条件を確認する作業が余計なように感じられるかもしれませんが、これがないと恒等式といえるかどうかわからないため記述式の試験では必須であることを忘れないようにしましょう。
「必要条件・十分条件って何だっけ……?」と思った方はこちらの記事で確認しましょう!
ちなみに係数比較法では恒等式であることは確認できているので、以上の過程は必要ありません。
おわりに
恒等式という概念は式と証明を学習する上で何度も出てきます。
難しく考えすぎずに「要するに同じ式なんだ」と直感的に捉えることができればこれからの学習がスムーズになるでしょう。
また、数値代入法で求める際の十分条件の確認は多くの受験生に見逃されやすいポイントなのでぜひこの機会に覚えていってくださいね。