はじめに
因数定理は3次以上の多項式を因数分解するのに必須の定理です。
これができないとグラフの問題や式の証明問題など様々な問題が解けないでしょう。
今回は因数定理が何なのか、どんなところで使うのか解説します!
目次
そもそも因数定理とは?
まずは因数定理がどういったものなのか紹介します。
つまり
- 多項式\(P(x)\)が\((x-a)\)を因数に持つならば、\(P(a)=0\)
- (\(P(a)=0\)ならば、多項式\(P(x)\)が\((x-a)\)を因数に持つ
の2つが成り立つということです。
たとえば \(P(x) = x^2 + 2x -3\) のとき、\(x=1\)を代入すると
$$
P(1) = 1^2 + 2 \cdot 1 -3 = 0
$$なので②を適用すれば\(P(x)\)は\((x-1)\)を持つことがわかりますね。
実際に\(P(x)\)を因数分解してみると
$$P(x) = (x-1)(x+3)$$となります。
因数分解のしかたはこちらをご覧ください。
このように因数定理は主に多項式を因数分解するときに使うものです。
2次の多項式の場合はたすき掛けなどで簡単に因数分解できましたが、3次以上の多項式では簡単にはいきません。
そこでこの因数定理を使って、適当な数値を\(x\)に代入して\(P(x)\)の値が0になるものを探して因数分解するのです。
因数定理の証明
では因数定理を証明していきましょう。
そのためには、
- 多項式\(P(x)\)が\((x-a)\)を因数に持つならば、\(P(a)=0\)
- \(P(a)=0\)ならば、多項式\(P(x)\)が\((x-a)\)を因数に持つ
の2つを示さなければいけません。
まずは①から証明します。
多項式\(P(x)\)を\((x-a)\)で割ったときの商を\(Q(x)\)、余りを\(R\)とすると
$$
P(x) = (x-a)Q(x) + R
$$と表せます。
\(P(x)\) が \((x-a)\) で割り切れるならば \(R = 0\) なので \(P(a) = 0\)
よって①が証明されました。次に②も証明します。
\(P(a) = 0\) ならば
\begin{eqnarray}
P(a) &=& (a – a)Q(a) + R\\
&=& 0\cdot Q(a) + R = 0
\end{eqnarray}
より \(R = 0\)なので、\(P(x)\) は \((x-a)\) で割り切れます。
これで、②が正しいことが示されたので、①と②を合わせて
が証明できました。
因数定理の問題パターン
因数定理を使って解く問題のパターンを2つ紹介します。
因数定理の問題パターン①:3次以上の多項式を因数分解する問題
問題1
\(x^3+x^2-10x+8\)を因数分解せよ。
問題1の解答・解説
まず \(P(x) = x^3+x^2-10x+8\) とおきます。
\(x = 1\)を代入すると、
\begin{eqnarray}
P(1) &=& 1^3 + 1^2 – 10 \cdot 1 + 8\\
&=& 1+ 1 – 10 + 8 = 0
\end{eqnarray}となるので因数定理の②より\(P(x)\)は\((x-1)\)で割り切れます。
ここで \(x^3+x^2-10x+8\) を \(x-1\) で割り算(多項式の割り算)しましょう。
その結果、商は \(x^2+2x-8\) となるので、
$$
P(x) = (x-1)(x^2+2x-8)
$$と因数分解できます。
残った2次の多項式は解の公式やたすき掛けで因数分解できますね。
$$
x^2+2x-8=(x-2)(x+4)
$$です。
最終的に \(P(x) = (x-1)(x-2)(x+4)\) となります。
今回はたまたますべての因数が \((x-\style{}{\text{整数}})\) の形になったので、\(P(2)=0, P(-4)=0\)に気づければ因数定理で簡単に解けましたね。
しかし、もしかしたら\(2, -4\)がなかなか見つからないかもしれないですし、一度見つけた因数で因数分解した方が次の因数を探すのが楽になります。
因数定理で因数を見つけたあとは、随時割り算・因数分解していくようにしましょう。
因数定理の問題パターン②:「〜で割り切れる/〜で割ると……余る」という情報から、未知係数を求める問題
問題2
\(x^3+ax^2-3x+b\) は \((x-1)\) と \((x+2)\)で割り切れるという。\(a, b\) の値を求めよ。
問題2の解答・解説
\(P(x) = x^3+ax^2-3x+b\) とおきます。
\(P(x)\)は\((x-1), (x+2)\)で割り切れるので、因数定理の①より
\begin{eqnarray}
P(1) &=& 1^3 + a \cdot 1^2 – 3 \cdot 1 + b &=& 0\\
P(-2) &=& (-2)^3 + a \cdot (-2)^2 – 3 \cdot (-2) + b &=& 0
\end{eqnarray}が成り立ちます。
よって
\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
a + b – 2 &=& 0 \\
4a + b -2 &=& 0
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}なので、この連立方程式を解いて\(a=0,b=2\)となります。
おわりに
因数定理がメインの問題は出題されたとしてもせいぜい小問集合の一つ。
基本的に大きな問題の中で、多項式を因数分解するための道具として使います。
しっかり覚えておきましょう。
例題の解答では逐一丁寧に\(P(x)\)に\(x = 1\)などを代入したときの計算過程を書きましたが、大きな問題の中で因数分解の道具として使うときは記述しなくても構いません。