はじめに
微分と積分は、高校数学では最も苦手な人が多い分野の一つです。
しかし、微分・積分は共通テストでも必ず出題される分野で、特に理系なら避けて通ることはできません。
今回は微分の基本の基本。導関数を定義通り求める方法について解説します!
最後には理解を深めるための練習問題も用意しました。
ぜひ最後まで読んで、導関数についてマスターしてください!
目次
導関数とは?導関数とその意味をわかりやすく解説
ここでは微分の定義と「導関数とは何なのか」について説明していきます。
導関数の意味そのものが入試で問われることはありませんが、これを知っていれば今後の微分の学習をする上で理解が深まるはずです。
まずは微分の定義から。
微分とは、変数の微小な変化に対応する、関数の変化量を求めることです。
言葉だけだと難しいので図で解説してみます。
関数\(f(x)\)の\(x=a\)の点と\(x=a+h\)の点を結ぶ直線を考えます。
この直線の傾きは、\[\frac{yの増加量}{xの増加量}\]\[=\frac{f(a+h)-f(a)}{(a+h)-a}\]\[=\frac{f(a+h)-f(a)}{h}\]となります。
ここで、\(a+h\)を\(a\)に近づけてみます。
\(h\)を\(0\)に近づけていくのと同じです。
するとこの直線は、\(f(x)\)の\(x=a\)における接線になります。
そしてこの接線の傾きは極限を用いて\[\displaystyle \lim_{ h \to 0 } \frac{f(a+h)-f(a)}{h}\]と書けます。
この\(x=a\)での\(f(x)\)の接線の傾きが\(f'(a)\)なのです。\[f'(a)=\displaystyle \lim_{ h \to 0 } \frac{f(a+h)-f(a)}{h}\]
\(f'(a)\)は、\(x=a\)から\(x\)が少しだけ増えたとき、\(f(x)\)がどのように変化するかの指標になります。
ここまでで、\(f'(a)\)の求め方、その意味が分かりました。
しかし、「これで万事解決!」とはいきません。
それぞれの点ごとに\(f'(a)\)を求めるのは面倒なんですよね。
そこで、どんな\(a\)に対しても、\(x\)に代入するだけで\(f'(a)\)が求まってしまう魔法の式があるんです。
それが導関数です。
導関数は普通\(f'(x)\)と表し、さきほどの\(f'(a)\)の式の\(a\)を\(x\)に変えたもの、つまり\[f'(x)=\displaystyle \lim_{ h \to 0 } \frac{f(x+h)-f(x)}{h}\]で求めることができます。
微分とは、この導関数を求める操作なのです。
先ほどの、\(x=a\)での\(f(x)\)の接線の傾きを求める操作は、
\(f(x)\)の導関数\(f'(x)\)を求めて、\(x\)に\(a\)を代入することと同じだったのですね。
導関数の求め方
それでは、実際にいくつかの関数を定義通りに微分してみましょう。
【導関数①】定数の微分
もちろん定数も微分できます。
ここでは定数関数\[f(x)=a\]を考えましょう。
関数の値は\(x\)によらないので、\(f(x)\)も\(f(x+h)\)も\(a\)になります。
したがって
\[f'(x)=\displaystyle \lim_{ h \to 0 } \frac{f(x+h)-f(x)}{h}\]
\[=\displaystyle \lim_{ h \to 0 }\frac{a-a}{h}\]
\[=\displaystyle \lim_{ h \to 0 }\frac{0}{h}\]
\[=0\]
このように、定数は微分すると\(0\)になります。
\[(a)’=0\]
【導関数②】\(x^n\)の微分
\(n=0\)のときは定数関数なので、\(1≦n\)のときを考えましょう。
\[f(x)=x^n\]
とすると
\[f'(x)=\displaystyle \lim_{ h \to 0 } \frac{f(x+h)-f(x)}{h}\]
\[=\displaystyle \lim_{ h \to 0 } \frac{(x+h)^n-x^n}{h}\]
\[=\displaystyle \lim_{ h \to 0 } \frac{(x^n+nhx^{n-1}+h^2(xの多項式))-x^n}{h}\]
\[=\displaystyle \lim_{ h \to 0 } \frac{nhx^{n-1}+h^2(xの多項式)}{h}\]
\[=\displaystyle \lim_{ h \to 0 } (nx^{n-1}+h(xの多項式))\]
\[=\displaystyle nx^{n-1}\]
となります。\((x+h)^n\)は、二項定理を使って展開しました。
この結果はもう公式として覚えてしまいましょう。
\[(x^n)’=nx^{n-1}\]
【導関数③】\(f(x)+g(x)\)の微分
関数が関数の和で表される場合はどうなるのでしょうか?
\(F(x)=f(x)+g(x)\)
と表される場合を考えます。
\[F'(x)=\displaystyle \lim_{ h \to 0 } \frac{F(x+h)-F(x)}{h}\] \[=\displaystyle \lim_{ h \to 0 } \frac{f(x+h)+g(x+h)-(f(x)+g(x))}{h}\] \[=\displaystyle \lim_{ h \to 0 } \frac{f(x+h)-f(x)+g(x+h)-g(x)}{h}\] \[=\displaystyle \lim_{ h \to 0 } \frac{f(x+h)-f(x)}{h}+{\frac{g(x+h)-g(x)}{h}}\] \[=\displaystyle f'(x)+g'(x)\]
それぞれの関数の微分を微分してそのまま足したのと同じ結果になりました。
\[(f(x)+g(x))’=f'(x)+g'(x)\]
【導関数④】\(af(x)\)の微分
関数が、定数\(a\)と関数\(f(x)\)の積で表されるときはどうなるでしょう。
\(F(x)=af(x)\)
と表される場合を考えます。
\[F'(x)=\displaystyle \lim_{ h \to 0 } \frac{F(x+h)-F(x)}{h}\] \[=\displaystyle \lim_{ h \to 0 } \frac{af(x+h)-af(x)}{h}\] \[=\displaystyle \lim_{ h \to 0 } a\frac{f(x+h)-f(x)}{h}\] \[=\displaystyle af'(x)\]
定数部分はそのままで、関数のみ微分すればよいのですね。
\[(af(x))’=af'(x)\]
また、積分についての記事もあわせてご覧くださいね。
微分・導関数の練習問題
それでは練習問題を解いて理解を深めましょう!
問題1
\[f(x)=x^2\]を定義に従って微分しなさい。
問題1の解答・解説
この「定義に従って」と言われた場合は、\[f'(x)=\displaystyle \lim_{ h \to 0 } \frac{f(x+h)-f(x)}{h}\]を使って導関数を求めなければいけません。
\[f'(x)=\displaystyle \lim_{ h \to 0 } \frac{f(x+h)-f(x)}{h}\]\[=\displaystyle \lim_{ h \to 0 } \frac{(x+h)^2-x^2}{h}\]\[=\displaystyle \lim_{ h \to 0 } \frac{x^2+2xh+h^2-x^2}{h}\]\[=\displaystyle \lim_{ h \to 0 } \frac{2xh+h^2}{h}\]\[=\displaystyle \lim_{ h \to 0 } 2x+h\]\[=2x\]
この定義に従って微分する問題は入試で出題されることは少ないですが、定期試験では問われることがあります。定義もきちんと覚えておきましょう。
問題2
\(f(x)=x^5+3x^2+3\)を定義に従って微分しなさい。
問題2の解答・解説
これはもう計算問題です(笑)
ひたすら展開しましょう。
\(f(x+h)\)
\(=(x+h)^5+3(x+h)^2+3\)
\(=x^5+5hx^4+10h^2x^3+10h^3x^2\)
\(+5h^4x+h^5+3x^2+6hx+3h^2+3\)
なので、
\[f'(x)=\displaystyle \lim_{ h \to 0 } \frac{f(x+h)-f(x)}{h}\]
\[=\displaystyle \lim_{ h \to 0 } \frac{5hx^4+6hx+h^2(xの多項式)}{h}\]
\[=\displaystyle \lim_{ h \to 0 } 5x^4+6x+h(xの多項式)\]
\[=\displaystyle 5x^4+6x\]
よって
\[f'(x)=5x^4+6x\]
おわりに
いかがでしたか?
微分を定義通り計算させる問題は、過去にセンター試験でも出題されています。
微分の問題は特に指示がない限り、暗記で解くことがほとんどですが、定義もきちんと知っておかないと、いざ問われたときに困ってしまいます。
必ず確認しておきましょうね。
原理を理解したら、実際に使うために公式を暗記してしまいましょう。
こちらに微分の公式をまとめましたので、ご参考にしてください。