入試レベル! 場合の数・確率解説

はじめに

みなさん場合の数・確率という単元に、どのようなイメージを持っていますか?

場合の数・確率は、複雑な場合分けを必要とするため苦手意識を抱いている人も多いのではないでしょうか。

しかし場合の数・確率は数A範囲であるため、文理問わず様々な大学で出題される頻出単元となっています。

今回は実際に国立2次試験で出題された2問を使い、場合の数において大切な考え方を紹介します。

場合の数・確率を解く力をもっと伸ばしたいという高校生は必見です!

場合の数・確率攻略ポイント 基本編

1つ目に紹介するのは、2018年に前期九大文系で出題された場合の数の問題です。

この問題は数Aの知識のみで解くことのできる基本的な問題であるため、場合の数が習いたてである方にもおすすめです。

2018年度九州大学(文系)前期 大問4

3つの部品a,b,cからなる製品が多数入った箱がある。製品を1つ取り出したとき,部品a,b,cが不良品である確率について次のことがわかっている。
部品aが不良品である確率はpである。
部品aが不良品でないとき, 部品bが不良品である確率はqである。
部品aが不良品であるとき, 部品bも不良品である確率は3qである。
部品bが不良品でないとき, 部品cが不良品である確率はrである。
部品bが不良品であるとき, 部品cが不良品である確率は5rである。
ただし, 0<p<1, 0<q<13, 0<r<15がある。以下の問いに答えよ。
(1)製品を1つ取り出したとき, 部品a,bの少なくとも一方が不良品である確率をp,qを用いて表せ。
(2)製品を1つ取り出したとき, 部品cが不良品である確率をp,q,rを用いて表せ。
(3)製品を1つ取り出したところ部品cが不良品であった。このとき, 部品bも不良品である確率をp,qを用いて表せ。

場合の数・確率攻略ポイント①:条件や状況の図示をルーティン化する

場合の数・確率の問題は他の単元と比べると、今回の問題のように問題文が長く、一度読んだだけでは条件がわかりにくいことがあります。

そのため場合の数・確率が苦手という人も多いのではないでしょうか。

しかし場合の数・確率の問題は、図や表を使って問題の条件や状況を上手く整理できれば、格段に解きやすくなります。

毎回問題文を読んだら、すぐに図示するというルーティンを作ることがおすすめです。

一度問題を読み図や表を描くと、視覚的に分かりやすく捉えることができ、条件が整理できずに問題を何度も読むということがなくなります。

さらに毎回図示すると予めルーティン化しておけば、いちいち図示すべきか迷わず、スムーズに問題に取り組むことができます。

なお図を描く目的は、あくまでも頭を整理することなので、図を丁寧に描きすぎて時間を無駄にしないように注意しましょうね。 

場合の数・確率攻略ポイント②:公式を自分で噛み砕いて理解する

場合の数・確率を解いていくうえで身につけるべき公式は、余事象の考え方や条件付き確率など、たくさんありますよね。

この問題でも、余事象や条件付き確率といった考え方が当たり前のように出てきます。

これらの公式を楽に使いこなすため、丸暗記をしようと考えたことはありませんか?

しかし公式を丸暗記するだけでは、難易度が高い問題の方針を1から立てる時に対応できません。

場合の数・確率を解く力を伸ばすためには公式を丸暗記するのではなく、まず公式や用語を根本から自分なりに理解しましょう。

例えば場合の数・確率の解説を読むと、「排反」「独立」といったように確率特有の用語が見られます。

定義なども参考書の文言を覚えるだけでなく、ベン図などを用いて自分なりに噛み砕いて捉えると分かりやすいです。

ただ公式に代入するのではなく、今自分が行っている計算がどういう意味を表しているのか理解できるようになれば完璧です!

解答

不良品でないものを〇・不良品であるものを×として、与えられた条件を表にする。

(1)で問われている「製品を1つ取り出したとき, 部品a,bの少なくとも一方が不良品である」とは、製品を1つ取り出したとき, 部品a,bがともに不良品でない場合の余事象であるため,
1-(1-p)(1-q)=p+q-pq
製品を1つ取り出したときに, 部品cが不良品である確率は
(1-p)(1-q)r+(1-P)q×5r+p(1-3q)r+p×3q×5r
=(1-p)(1+4q)r+p(1+12q)r
=(1+4q+8pq)r  ←①
製品を1つ取り出したとき, 部品cと部品bが不良品である確率は,
(1-p)q×5r+p×3q×5r=5(1+2p)qr ←②
したがって, 製品を1つ取り出したところ部品cが不良品であるとき,
ともに部品bも不良品である条件付き確率は, ①②より
5(1+2p)qr(1+4q+8pq)r=5(1+2p)q1+4q+8pqとなる。

場合の数・確率攻略ポイント 応用編

確率を応用した形として、他の分野を組み合わせた問題は入試で良く出題されます。

2問目は入試でも頻出の、漸化式(数B)と組み合わせた確率漸化式の問題を紹介します。

2020年度一橋大学前期 大問5

nを整数とする。1枚の硬貨を投げ, 表が出れば1点, 裏が出れば2点を得る。この試行を繰り返し, 点の合計がn以上になったらやめる。点の合計がちょうどnになる確率をPnで表す。
(1)P₁, P₂, P₃, P₄を求めよ。
(2)Pn₊1-Pn<0.01を満たす最小のnを求めよ。

場合の数・確率攻略ポイント③:場合分けを丁寧にする

全ての場合の数・確率の問題で共通して言えることは、丁寧な場合分けが大切だということです。

どれだけ計算を正確に行ったとしても、場合分けの段階で見落としや重複があると必ず減点されてしまいます。

頭の中で考えると抜けがありがちなので、攻略ポイント①でもあげたように図や表を書いてカウントすることでミスを防ぎやすくなりますよ。

コツとしては、「初めから1つの公式でまとめて求めるのではなく、いくつかの場合に分けてから後で合算」を意識することです。

今回の問題の場合、点の合計が2点になる確率は、「硬貨を1回投げて裏が出る確率」と、「2回投げて表が2連続で出る確率」を合算すると求められますね。

場合の数・確率の問題を制するためには、このような細かい場合分けが必要です。

場合の数・確率攻略ポイント④:他の単元が絡んだ問題をマスターする

入試では、漸化式・数列(数B)、極限や微積(数Ⅲ)など、他の単元と融合した問題もよく見られます。

つまり場合の数・確率の範囲だけを理解していても、解けない場合が出てくるかもしれないということです。

そのため、場合の数・確率の問題に慣れてきたら、他単元との融合問題もマスターすることをおすすめします。

例えば今回取り扱った確率漸化式の問題だと、

  • nに具体的な数を代入して規則性をイメージしやすくする
  • 状況を整理するためにn,n+1の状態推移図を描く
  • 特性方程式など漸化式特有の展開方法を理解する

といったことが挙げられます。

このように他単元との融合問題への理解を深めて、しっかり点数を重ねていきましょう。

解答

点の合計が1点になるのは, 1回投げて表が出るときなので
P₁=12である。
点の合計が2点になるのは,
①1回投げて裏が出る
②2回投げて表→表
のどちらかであるため
P₂=12+12²=58
点の合計が3点になるのは,
①2回投げて表→裏, 裏→表
③3回投げて表→表→裏
のどれかであるため
P₃=2×(12)²+(12)³=58
点の合計が4点になるのは,
①2回投げ裏→裏
②3回投げ表→表→裏, 表→裏→表, 裏→表→表
③4回投げ表→表→表→表
のどれかであるため
P₄=(12)²+3×(12)³+(12)⁴=1116
点の合計がn+2点になるのは,
①1回目に表が出た後に, 2回目からの点の合計がn+1点になるとき
②1回目に裏が出た後に, 2回目からの点の合計がn点になるとき
であるため
Pn+2=12Pn+1 + 12Pn
これを隣接三項間の特性方程式を用いて変形させると
Pn+2-Pn+1 =-12(Pn+1-Pn) になり, (1)より
Pn+1-Pn =(P₂-P₁)(-12)^n-1
=(34-12)(-12)^n-1
=14(-12)^n-1
=(-12)^n+1

問題文よりPn₊1-Pn<0.01であるので
(12)^n+1100, つまり2^n>50を満たす最小のnを求めればよいので
2^5=32, 2^6=64であるため,
求める最小のnは6となる。

おわりに

いかがでしたか?

今回は実際に入試で出題された2問を使って、場合の数・確率で必要な考え方について紹介しました。 

場合の数・確率は、他の単元と比べて考えることが多く、複雑なところはありますが、考え方を理解できると安定した点を取れるようになります。

演習を重ねて場合の数・確率を解く力を伸ばし、周りのライバルと差をつけましょう! 

また合格サプリWEBでは、他にも場合の数・確率の問題を取り上げているのでぜひそちらもご覧ください!

『意外に侮れない!?難関大合格への計算力』2018年東京大学の数学入試問題に学ぶ「組み合わせ」

2022.01.20



皆さんの意見を聞かせてください!
合格サプリWEBに関するアンケート