はじめに
化学を習い始めて1ヶ月、突然出てくる「mol」。
物質量・molは高校の化学でとても大切な考え方ですが、新しい単位に戸惑う人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、molを基礎からわかりやすく解説します。
原子量や分子量、モル濃度についても最後に説明しているので、ぜひ最後まで読んでくださいね。
molの考え方が理解できれば、化学の他の単元もぐっと理解しやすくなりますよ。
目次
教科書の定義をわかりやすく解説!「物質量」「モル(mol)」って何?
物質量・モル(mol)の定義:炭素12gの中の原子の数を数えてみた
物質量の単位であるmolは、個数を表します。
例えば、「水素が1molある」ということは「水素分子が6.02×1023個ある」ということと同じ意味です。
この「6.02×1023」は特別な数字で、アボガドロ数という名前がついています。ちなみに計算問題では、6.0×1023を使うことが多いですよ。
6.02×1023は、炭素の塊12gの中に含まれる炭素原子の数が6.02×1023個だったことに由来します。
そしてこの12という数字は、自然界に多く存在する炭素の質量数(陽子の数+中性子の数)が12であることから来ています。
質量数12の炭素1molが12gになるように定義したので、他の元素も質量数と1molあたりの質量が一致してわかりやすいですよ。
お米の「合」と物質量の「モル(mol)」は同じ考え方の単位
お米を計るときに使う単位である「合」と物質量の「mol」は、どちらも小さくて扱いづらいものを、一定の量にまとめて扱いやすくするために使われている単位です。
もし「合」という単位がなかったら、お米を炊くときは「お米1粒と水30分の1mlを反応させて……」と考えることになってしまいます。
実際は「合」というちょうどいい量の単位を使って「お米1合と水200mlを反応させる」と考えますよね。
原子や分子も、米粒と同じで、1個2個で考えるには小さすぎるのです。
「ある程度たくさんの数を集めてそれを1とする」基準を定めた方が、実際に実験するときに扱いやすいということです。
混同しやすい!「原子量」「分子量」「物質量」の違い
原子量・分子量とは、その原子・分子を1mol(6.02×1023個)集めると何gになるかを表した値です。
例えば酸素Oの原子量は16なので、O原子は1mol(6.02×1023個)集めたら16gになるということです。
お米の例えでいえば「お米1合あたり何gか」が米の品種によって決まっているということですね。
分子量は、分子に含まれる原子の原子量を足すと求められます。
例えば水H2Oの分子量は、Hの原子量が1・Oの原子量が16なので、水素2つ分と酸素1つ分を足して1+1+16=18と求められます。
同じ○○量なので混同する人が多いですが、物質量は個数で、分子量と原子量は質量であるという違いがあります。
物質量は「物」の「質量」ではなく「物質」の「量」であると意識すると良いでしょう。
原子や分子は、化学反応の時に決まった個数の比率で反応するので、個数の単位molを使う必要があります。
分子は使われている原子の種類によって質量が異なるので、質量の比で反応を考えると、反応しない余りが出るなど不都合があります。
例えば、水H2Oの生成式は2H2+O2→2H2Oです。
つまり、水素分子2個と酸素分子1個から、水分子2個ができます。
これを「水素2gと酸素1g」で考えると上手くいきません。なので、質量ではなく個数である物質量で考える必要がありますね。
モルを使った単位をわかりやすく解説!モル質量・モル体積・モル濃度
モル質量(g/mol)
モル質量とは、物質1molあたりの質量(g)です。
先ほど出てきた「原子量」「分子量」は、その原子・分子のモル質量を表す数字です。
1molの個数を質量数12の炭素12gに含まれる原子の数と定義したので、原子量・分子量とモル質量が一致するようになっています。同じにしたので便利ですね!
例えば、水の分子量は18なので、モル質量は18g/molです。ちなみに原子量・分子量には単位がないので気をつけましょう。
モル体積(L/mol)
モル体積とは、気体物質1molあたりの体積(L)です。
例えば、酸素1molもアンモニア1molも標準状態(0℃、1気圧)では22.4Lです。
酸素とアンモニアの分子量は異なるのに、体積が等しいのは驚きですよね!
22.4Lという数字は、大変ですが問題を解きながら覚えましょう。
モル濃度(体積モル濃度)(mol/L)
モル濃度とは、溶液1Lに含まれる溶質のmol数です。
物質は水に溶かして反応させることが多いので、モル濃度は問題を解くときに一番頻繁に登場します。
例えば「モル濃度2mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液」と言ったら、その水溶液1Lには水酸化ナトリウムが2mol溶けているということです。
単位が違うだけで、質量パーセント濃度の考え方と同じですね!
これができれば大丈夫!練習問題2選
紙とペンが無くてもできるので、このまま解いてみましょう!
練習問題1
Q:窒素(N2)1mol、水素(H2)3molが反応するとアンモニア(NH3)は何mol生成するか求めよ。また、生成したアンモニアがすべて気体であるとき、標準状態で何Lになるか。
注:「窒素1mol」というのは「窒素分子1mol」という意味です。
練習問題1の解答・解説
A:2mol、44.8L
まず反応式N2+3H2=2NH3を書いて、反応する窒素・水素・アンモニアの物質量の比を確認します。
下の図のように考えると、アンモニアは2molできることがわかりますね。
1molの気体物質は気体の種類に関わらず、標準状態で22.4Lなので、生成した2molのアンモニアは22.4×2=44.8Lであると求められます。
練習問題2
Q:水酸化ナトリウム(NaOH)20gを水に溶かして5Lにした。この水溶液のモル濃度(mol/L)を求めよ。原子量はH:1、O:16、Na:23とする。
練習問題2の解答・解説
A:0.1mol/L
まず溶かした水酸化ナトリウムは何molかを求めましょう。
水酸化ナトリウム(NaOH)の分子量は23+16+1=40
つまり、水酸化ナトリウム(NaOH)は1mol集めたら40gになるということですね。
よって水酸化ナトリウム20(g)は20÷40=0.5(mol)とわかります。
次に水溶液のモル濃度を求めます。
5Lに0.5molの水酸化ナトリウムが溶けているので、モル濃度(溶液1Lに含まれる溶質の物質量)は
0.5(mol)÷5(L)=0.1(mol/L)
おわりに
molの定義や使い方は理解できましたか?
わからなくなったら何度でもこの記事を読み直して、molをマスターしましょう!