ベクトルって高校数学の中でも難しいと感じる人が多い単元ですよね。
今回解説する内積は、ベクトルの中で最強に強力な武器となるものです。
ですので、内積をマスターしていれば、ベクトルの攻略も簡単になりますよ!
今回はベクトルの内積について、1つずつ丁寧に紹介していきます。
ぜひ、最後まで読んでいってください。
ベクトルの内積とは?(定義)
内積は言葉での説明がとても難しく、また言葉での説明を理解する必要も高校生の間はありません。
なので、この記事では内積の定義、それと内積はどのように使うのかということについて、例題を用いて解説します。
もし、どうしても「内積って何?」「定義ってなぜそうなるの?」と思う人は各自ネットで調べてみることをオススメします。
ベクトルの内積の表記:\(\overrightarrow{ a } \cdot \overrightarrow{ b }\)
まずは、内積の超基本事項から。
\(\overrightarrow{ a }\)と\(\overrightarrow{ b }\)の内積は、
\(\overrightarrow{ a } \cdot \overrightarrow{ b }\)
と表記します。
内積自体についてはこれだけです。しっかり覚えておきましょう。
ここで重要なのは、真ん中の「・(ドット)」です。
これを書き忘れて、\(\overrightarrow{ a }\overrightarrow{ b }\)とすると、これ自体に何の意味もなくなってしまい、テストでは当然減点(最悪0点)されてしまいます。
必ず「・」は、大きくはっきりと書く習慣をつけておきましょう!
あと、もう1つとても重要なルールがあります。
それは、始点を同じにしないと内積は計算できないというものです。
ですから、例えば\(\overrightarrow{ AB } ・\overrightarrow{ BC }\)のような内積を計算する場合は、
\(\overrightarrow{ AB } ・\overrightarrow{ BC }\)
\(=\overrightarrow{ AB } ・(\overrightarrow{ AC }-\overrightarrow{ AB })\)
\(=\overrightarrow{ AB } ・\overrightarrow{ AC }-\overrightarrow{ AB } ・\overrightarrow{ AB }\)
とまずは書き換えをして内積の計算をしなければ、間違いになってしまいます。
これら2つに注意して内積の計算を行えば、まず間違えることはないと思います。
ベクトルの内積の求め方①:\(\overrightarrow{ a } \cdot \overrightarrow{ b }=|\overrightarrow{ a }||\overrightarrow{ b }|cosθ\)
ここからは、内積の求め方について説明していきます。
1つ目の求め方は、次のような定義で計算できます。
2つのベクトル\(\overrightarrow{ a }\)、\(\overrightarrow{ b }\)を考え、それらのベクトルがなす角を\(θ\)とします。
すると、内積\(\overrightarrow{ a } \cdot \overrightarrow{ b }\)は、
\(\overrightarrow{ a } \cdot \overrightarrow{ b }=|\overrightarrow{ a }||\overrightarrow{ b }|cosθ\)
と定義されます。
仕組みとしては、右辺を実際に計算することで、内積が計算できるというものです。
実際に例題を解いてみましょう。
例題
下の図中の\(\overrightarrow{ AB }\)、\(\overrightarrow{ AC }\)について
\(\overrightarrow{ AB } ・\overrightarrow{ AC }\)を求めよ。
例題の解答・解説
辺の長さやその間の角度は、問題文中にすでに示してあるので、それをそのまま使います。
\(|\overrightarrow{ AB }|=4\)、\(|\overrightarrow{ AC }|=2\sqrt{ 3 }\)、\(\angle A=30°\)より、
求める内積の大きさは\[\overrightarrow{ AB } ・\overrightarrow{ AC }=|\overrightarrow{ AB }||\overrightarrow{ AC }|cos30°\]
よって、答えは
\(\overrightarrow{ AB } ・\overrightarrow{ AC }\)
\(=4×2\sqrt{ 3 }×\displaystyle \frac{ \sqrt{ 3 } }{ 2 }\)
\(=\style{ color:red; }{ 12 }\)
になります。
ベクトルの内積の求め方②:\(\overrightarrow{ a } \cdot \overrightarrow{ b }=a_1b_1+a_2b_2\)
内積にはもう1つ求め方があります。
それは、ベクトルの成分がわかっているときの求め方です。
ベクトルの成分は\[\overrightarrow{ a }=(a_1,a_2)\]のように表されます。
\(\overrightarrow{ a }=(a_1,a_2)\)、\(\overrightarrow{ b }=(b_1,b_2)\)であることがわかっているとき、内積\(\overrightarrow{ a } \cdot \overrightarrow{ b }\)は、
\(\overrightarrow{ a } \cdot \overrightarrow{ b }=a_1b_1+a_2b_2\)
で求めることができます。
これも残念なのですが、覚えてください…。
証明や理屈よりも丸暗記の方がおそらく手っ取り早いです。
文字の右下についている文字が同じもの同士でかけ算をすると覚えると良いです。
練習問題を解いてみましょう。
例題
\(\overrightarrow{ a }=(3,4)\)、\(\overrightarrow{ b }=(2,-1)\)であるとする。
内積\(\overrightarrow{ a } \cdot \overrightarrow{ b }\)の大きさを求めよ。
例題の解答・解説
\(\overrightarrow{ a } \cdot \overrightarrow{ b }=a_1b_1+a_2b_2\)を使えば、一瞬で内積が求まります。
\(\overrightarrow{ a } \cdot \overrightarrow{ b }=3・2+4・(-1)=6-4=\style{ color:red; }{ 2 }\)
内積の求め方は以上になります。
これまで解説してきたのは、基礎中の基礎ですが、とても大切な部分ですのでしっかり覚えておきましょう!
平行と垂直のときのベクトルの内積
ここまでの解説は、内積について一般的にいえることを説明してきました。
しかし、2つのベクトルが平行や垂直のときは、特殊な場合として別に暗記が必要です。
ここでは、2つのベクトルが平行のときと、垂直のときについて解説していきます。
2つのベクトルが平行のときの内積
2つのベクトルが平行という状況が想像できますか?
ここからは連想ゲームをやっていきます。
両方のベクトルの始点が\(A\)という一点ですので、平行になるには重なり合うか、真逆になるかの2通りしかありません。
重なり合うということは、2つのベクトルの間の角\(θ\)は\(0°\)になりますね。
また、真逆になるということは、2つのベクトルの間の角\(θ\)は\(180°\)になりますね。
\(θ\)が\(0°\)ならば、\(\overrightarrow{ a } \cdot \overrightarrow{ b }=|\overrightarrow{ a }||\overrightarrow{ b }|cosθ\)に代入すると
\(\overrightarrow{ a } \cdot \overrightarrow{ b }\)
\(=|\overrightarrow{ a }||\overrightarrow{ b }|cos0°\)
\(=|\overrightarrow{ a }||\overrightarrow{ b }|×1\)
\(=|\overrightarrow{ a }||\overrightarrow{ b }|\)
になります。
\(θ\)が\(180°\)のときも、\(cos180°=ー1\)ですから結果は同じになります。
つまり、2つのベクトルが平行の時は「2つのベクトルの大きさをかけてあげるだけで内積が求まる」ということです。
「平行」=「\(\overrightarrow{ a } \cdot \overrightarrow{ b }=|\overrightarrow{ a }||\overrightarrow{ b }|\)」と覚えてください!
2つのベクトルが垂直のときの内積
ベクトルにおける垂直は超重要です。使用頻度がとても高いです。
平行のときと同じように考えていきます。
こちらも連想ゲームをやっていきます。
2つのベクトルが垂直であるということは、間の角が\(90°\)であるということですね。
\(cos90°\)は\(0\)でした。
つまり、内積の定義\(\overrightarrow{ a } \cdot \overrightarrow{ b }=|\overrightarrow{ a }||\overrightarrow{ b }|cosθ\)に当てはめると
\(\overrightarrow{ a } \cdot \overrightarrow{ b }\)
\(=|\overrightarrow{ a }||\overrightarrow{ b }|cos90°\)
\(=|\overrightarrow{ a }||\overrightarrow{ b }|×0\)
\(=0\)
になります。
つまり、2つのベクトルが垂直なとき、内積は\(0\)になります。
「垂直」=「内積0」と覚えるようにしてください!
ベクトルの問題で垂直というワードが出てきたら、「内積0をどこかで使うはずだ」と考えておくとgoodです。
平行条件・垂直条件ともに、必ず覚えておきましょう!
内積を使った三角形の面積の求め方
この記事における、最後の内積の便利な公式になります。
三角形の面積の求め方には、色々な方法がありますよね。
今回は、内積を使った面積の求め方、その証明を紹介していきます。
上の図のような、\(\triangle ABC\)の面積を内積を使って求めると、
\(\triangle ABC=\displaystyle \frac{ 1 }{ 2 }\sqrt{ |\overrightarrow{ AB }|^2|\overrightarrow{ AC }|^2-(\overrightarrow{ AB } ・\overrightarrow{ AC })^2 }\)
になります。
この公式はぜひ暗記して欲しいのですが、万が一忘れた場合に備え、この公式の証明を示していきます。
証明方法は、別の公式からの変形によって示します。
面積を求める公式のうち以下のようなものがあります。\[\triangle ABC=\displaystyle \frac{ 1 }{ 2 }|\overrightarrow{ AB }||\overrightarrow{ AC }|sinθ\]
これを式変形することで、先ほどの公式の式に変形していきます。
\(\displaystyle \frac{ 1 }{ 2 }|\overrightarrow{ AB }||\overrightarrow{ AC }|sinθ\)
\(=\displaystyle \frac{ 1 }{ 2 }\sqrt{ |\overrightarrow{ AB }|^2|\overrightarrow{ AC }|^2sin^2θ}\)
\(=\displaystyle \frac{ 1 }{ 2 }\sqrt{ |\overrightarrow{ AB }|^2|\overrightarrow{ AC }|^2(1-cos^2θ})\)
\(=\displaystyle \frac{ 1 }{ 2 }\sqrt{ |\overrightarrow{ AB }|^2|\overrightarrow{ AC }|^2-|\overrightarrow{ AB }|^2|\overrightarrow{ AC }|^2cos^2θ}\)
\(=\displaystyle \frac{ 1 }{ 2 }\sqrt{ |\overrightarrow{ AB }|^2|\overrightarrow{ AC }|^2-(\overrightarrow{ AB } ・\overrightarrow{ AC })^2 }\)
最後の式変形は、内積の定義の逆
\(|\overrightarrow{ AB }||\overrightarrow{ AC }|cosθ=\overrightarrow{ AB } ・\overrightarrow{ AC }\)
を使いました。
この公式を使う例題を解いていきましょう。
例題
次の\(\triangle ABC\)の面積を求めよ。
例題の解答・解説
図から、\(|\overrightarrow{ AB }|=4\)、\(|\overrightarrow{ AC }|=6\)、\(\angle BAC=60°\)であるとわかります。
これらの情報から公式を使って面積を求めます。
\(\triangle ABC\)
\(=\displaystyle \frac{ 1 }{ 2 }\sqrt{ |\overrightarrow{ AB }|^2|\overrightarrow{ AC }|^2-(\overrightarrow{ AB } ・\overrightarrow{ AC })^2 }\)
\(=\displaystyle \frac{ 1 }{ 2 }\sqrt{ |\overrightarrow{ AB }|^2|\overrightarrow{ AC }|^2-(|\overrightarrow{ AB }| |\overrightarrow{ AC }|cos60°)^2 }\)
\(=\displaystyle \frac{ 1 }{ 2 }\sqrt{ 4^2×6^2-(4×6×cos60°)^2 }\)
\(=\displaystyle \frac{ 1 }{ 2 }\sqrt{ 24^2-12^2 }\)
\(=\displaystyle \frac{ 1 }{ 2 }\sqrt{ 12^2(2^2-1) }\)
\(=\displaystyle \frac{ 1 }{ 2 }\sqrt{ 12^2×3 }\)
\(=\displaystyle \frac{ 1 }{ 2 }×12\sqrt{ 3 }\)
\(=\style{ color:red; }{ 6\sqrt{ 3 } }\)
になりました。
ベクトルの内積のまとめ
いかがでしたか?
内積がとても便利な道具であるということは理解していただけたでしょうか?
内積が自由自在に使えるようになると、解ける問題がかなり広がっていきます。
今回扱ったのは基礎でしたが、いずれは応用問題でも対応できるように、定義・公式はきちんと暗記しておくようにしましょう!