はじめに
前回に続いて格助詞を学んでいきましょう。
格助詞とは上の語に資格を与え、下の語へ関係付ける助詞のことです。
よくわからないと思うので、詳しく見ていきましょう!
目次
格助詞「が・の」
助詞 | 文法的意味 | 訳し方 | 接続 |
---|---|---|---|
が・の | 1.主格 2.連体修飾格 3.同格 4.体言の代用 5.比喩 |
1.~が 2.~の 3.~で 4.~のもの・~のこと 5.~のように・~のような |
体言・連体形などに |
1.主格
例:すずめの子を犬君(いぬき)が逃がしつる。(源氏物語・若紫)
(すずめの子を犬君が逃がしてしまったの。)
2.連体修飾格
例:二、三十人が中にわづかに一人二人なり。(方丈記・一)
(二、三十人の中でわずかに一人か二人だ。)
3.同格
例:白き鳥の、嘴(はし)と脚と赤き、鴫(しぎ)の大きさなる、水の上に遊びつつ魚(いを)を食ふ。(伊勢物語・九)
(白い鳥で、くちばしと脚が赤い、鴫ほどの大きさの鳥が、水の上で自由に動き回りながら魚を食べる。)
「(連体修飾語)+体言+の+(連体形)+(が・を・に)」
の形をとる。
この時の訳し方は、
1.「~で」「~であって」
2.連体形の下に「の」の上にある体言を補う
の2つの注意点を抑えること!
例:いと清げなる僧の、黄なる地の袈裟着たるが来て、(更級日記)
(たいそうさっぱりした感じの僧で、黄色い地の袈裟を着た僧が来て、)
4.体言の代用
例:この歌は、ある人のいはく、柿本人麻呂がなり。(古今集・九〇七)
(この歌は、ある人が言うことには、柿本人麻呂のものである。)
5.比喩
例:春日野の雪間をわけて生ひ出でくる草のはつかに見えし君はも(古今集・巻一一)
(春日野の雪の間をわけて、はえ出でくる若草のように、ほんのわずかに見えたあなたであることよ。)
格助詞「を」
助詞 | 文法的意味 | 訳し方 | 接続 |
---|---|---|---|
が・の | 1.動作の対象 2.動作の起点 3.経過する場所・時間 |
1.~を・~に 2.~を・~から 3.~を通って・~を |
体言・連体形などに |
1.動作の対象
例:翁、竹を取ること久しくなりぬ。(竹取物語)
(翁は、竹を取ることが久しくなった。)
2.動作の起点
例:境を出でて、下総(しもふさ)の国のいかたといふ所に泊まりぬ。(更級日記・かどで)
(国の境を出て、下総の国のいかたという所に泊まった。)
3.経過する場所・時間
例:伊勢・尾張の間(あはひ)の海づらを行くに、(伊勢物語・七)
(伊勢と尾張の国の間の海岸を行く時に、)
格助詞「に」
助詞 | 文法的意味 | 訳し方 | 接続 |
---|---|---|---|
に | 1.場所・時間 2.動作の対象 3.動作の目的 4.変化の結果・帰着点 5.原因・理由 6.受身・使役の対象 7.比較の基準 8.添加・列挙 9.資格・状態 |
1.~に・~で 2.~に・~と 3.~のために・~に 4.~に・~と 5.~で・~のために・~によって 6.~に 7.~に・~より 8.~のうえに 9.~として・~で |
体言・連体形などに |
1.場所・時間
例:清水のある所に伏しにけり。(伊勢物語・二四)
(清水のある所に倒れてしまった。)
2.動作の対象
例:行き行きて駿河の国に至りぬ。(伊勢物語・九)
(どんどん行って駿河の国についた。)
3.動作の目的
例:いざ給へ、出雲拝みに。(徒然草・二三六)
(さあいっしょにいらっしゃい、出雲を参拝しに。)
他の意味では体言・連体形に接続するので注意しましょうー!
4.変化の結果・帰着点
例:東(あずま)の方(かた)に住むべき国求めにとて行きけり。(伊勢物語・九)
(東国の方に住むのによい国を求めに(行こう)と思って行った。)
5.原因・理由
例:「あなや。」と言ひけれど、神鳴るさわぎに、え聞かざりけり。(伊勢物語・六)
(「あれえ。」と叫んだが、雷の鳴るやかましい音のために、聞くことができなかった。)
6.受身・使役の対象
例:見苦しとて人に書かするうるさし。(徒然草・三五)
((字が)下手だと言って、人に書かせるのは、いやみなものだ。)
7.比較の基準
例:昼の明(あ)かさにも過ぎて光りわたり、(竹取物語)
(昼の明るさにもまして一面に光って、)
8.添加・列挙
例:わが入らむとする道は、いと暗う細きに、蔦(つた)かへでは茂り、(伊勢物語・九)
(わたしたちが入ろうとする(山)道は、たいそう暗く細いうえに、つたやかえでが(うっそうと)茂っていて、)
9.資格・状態
例:都のつとに語らむ。(徒然草・二三六)
(都への土産話として語ろう。)
古文の格助詞は設問で問われやすい
いかがでしたか?
格助詞は設問になって意味を問われやすいです。
問題集などで慣れておきましょう!