はじめに
正弦定理は数ⅠAの図形分野において基礎となる、とても重要な定理です。
今回は、これから正弦定理の勉強を始める人にはもちろん、理解が曖昧で復習したい人にも分かりやすく正弦定理の公式と証明、使い方のコツを具体的な例題を紹介しながら徹底的に解説します!
ぜひ最後まで読んで、正弦定理を完璧にマスターしましょう!
目次
正弦定理の公式
正弦定理の公式は以下の通りです。まずは覚えることが大切ですので、しっかり暗記してください。
暗記する際のポイントは2つあります。
まず、最後の2Rまでしっかり覚えること。(外接円の半径の2倍)外接円の半径を求めよという問題も良く出題されます。
そして、三角形の内角の和が180度であることも、問題を解く時によく使いますので、頭の片隅に入れておいてください。
正弦定理の証明
では次に、正弦定理の公式を証明していきます。
証明で使う文字は以下の通りです。
- △ABCにおいて、△ABCの3つの角∠A、∠B、∠Cの大きさをそれぞれA、B、Cとする。
- また、それぞれの角の対辺の長さをそれぞれa,b,cとする。
- △ABCの外接円(三角形の3つ頂点を通る円)の中心を0、半径をRとする。
正弦定理の証明:[1] Aが鋭角(90°より小さい角)のとき
長辺が中心Oを通る三角形A’BCは∠Bを90°とする直角三角形になる。
よって、
$$\sin A’ = \frac{ a }{ 2R }$$
整理すると
$$\frac{ a }{ \sin A’ } = 2R$$
円周角の定理より、∠A’=∠Aであるから、
$$\frac{ a }{ \sin A } = 2R…①$$
正弦定理の証明:[2] Aが直角(90°)のとき
$$\sin A = \sin 90° = 1$$
であるから、
$$\frac{ a }{ \sin A } = \frac{ a }{ 1 } = a$$
また∠Aが90°であることから、BCは中心Oを通る直線であり、a=2Rとなることから
$$\frac{ a }{ \sin A } = 2R…②$$
正弦定理の証明:[3] Aが鈍角(90°より大きい角)のとき
上図で、∠BPC=Pとすると、2P+2A=360°より、
$$P+A = 180°$$
よってD=180°-Aより
$$\sin D = \sin (180°-A) = \sin A…③$$
また、Dは鋭角(90°よりも小さい角)であることから、[1]の結果①より
$$\frac{ a }{ \sin D } = 2R $$
③より
$$\frac{ a }{ \sin A } = 2R…④$$
①②④より、Aはいずれの角でも、
$$\frac{ a }{ \sin A } = 2R$$
が成り立つ。
同様にして、
$$\frac{ b }{ \sin B } = 2R\\
\frac{ c }{ \sin C } = 2R$$
が成り立つ。
以上より、
$$\frac{ a }{ \sin A } = \frac{ b }{ \sin B } = \frac{ c }{ \sin C } = 2R$$
が成り立つ。(正弦定理の証明終了)
正弦定理の使い方(練習問題)
ではここからは、実際の問題を使って正弦定理の使い方を解説していきます。
図形問題のほとんどは文章題で出題されます。
問題に丁寧な図が書いてあることはほとんどありません。
そこでまずは文章題を読みながら、自分で図にしてみましょう。図を書いて、文章題で示された値を入れていくと、視覚的に問題を整理することができ、どんな公式を使えば良いのかの見通しが立てやすくなります。
図形問題はまず図を書くこと。この癖をしっかりと付けていきましょう!
問題1
△ABCにおいて、∠B=30°、∠C=105°、b=5のとき、aの長さと外接円の半径Rの長さを答えなさい。
問題1の解答・解説
まずは図を書いてみましょう。
図を書いて、問題文で示されている値を書き込むと以下のようになります。
図を書くと、どの角やどの辺の長さを求めるべきなのかがはっきりと分かるようになります!
図を見て、まず気づくのがB・Cの大きさが分かっているので、Aの大きさがわかりますね。
三角形の内角の和が180°であることから、Aの大きさは以下で求められます。
$$A=180°-(B+C)\\
=180°-(30°+105°)=45°$$
正弦定理の公式より、
$$\frac{ a }{ \sin A } = \frac{ b }{ \sin B } = 2R$$
$$\frac{ a }{ \sin 45° } = \frac{ 5 }{ \sin 30° } = 2R$$
となります。
$$\sin 30°=\frac{ 1 }{ 2 }$$
$$\sin 45°=\frac{ 1 }{ \sqrt{2} }$$
より、
$$\frac{ a }{ \frac{ 1 }{ \sqrt{2} } } = \frac{ 5 }{ \frac{ 1 }{ 2 } } = 2R$$
$$\sqrt{2}a = 10 = 2R$$
$$a = \frac{ 10 }{ \sqrt{2} } = \frac{ 5 \times \sqrt{2} \times \sqrt{2}}{ \sqrt{2} } = 5\sqrt{2}$$
$$R = 5$$
となります。
問題2
△ABCにおいて、∠A=60°、a=3√2、b=2√3、のとき、∠B・∠Cそれぞれの大きさを答えなさい。
問題2の解答・解説
問題1と同様、まずは図を書いてみましょう。
図を書いて、問題文で示されている値を書き込むと以下のようになります。
図を書けば、どの角とどの辺で正弦定理の公式を使えば良いのかが、一目瞭然ですね!
まず∠Aと∠Bとその対角の辺の長さで、正弦定理の公式が使うと∠Bの大きさが求められます。
∠Bの大きさが分かれば、三角形の内角の和が180°であることから、∠Cの大きさは以下で求められます。
$$C=180°-(A+B)$$
では実際に解いていきます。
正弦定理の公式より、
$$\frac{ a }{ \sin A } = \frac{ b }{ \sin B }$$
$$\frac{ 3 \sqrt{2} }{ \sin 60° } = \frac{ 2 \sqrt{3} }{ \sin B }$$
となります。
$$\sin 60°=\frac{ \sqrt{3} }{ 2 }$$
より、
$$\frac{ 3 \sqrt{2} }{ \frac{ \sqrt{3} }{ 2 } } = \frac{ 2 \sqrt{3} }{ \sin B }$$
少しわかりづらい式になってしまいましたね。
そこで、逆数を取ると(左辺・右辺の分母・分子をひっくりかえすと)
$$\frac{ \sin B }{ 2 \sqrt{3} } = \frac{ \frac{ \sqrt{3} }{ 2 } }{ 3 \sqrt{2} }$$
かなり式が見やすくなりました!
2√3を右辺に移動して計算すると
$$\sin B = \frac{ \frac{ \sqrt{3} }{ 2 } \times 2 \sqrt{3}}{ 3 \sqrt{2} } = \frac{ 3}{ 3 \sqrt{2} } = \frac{ 1}{\sqrt{2} }$$
よって、
$$\sin B = \frac{ 1}{\sqrt{2} } = \sin 45°$$
$$B = 45°$$
$$C=180°-(A+B)\\
=180°-(60°+45°)=75°$$
となります。
正弦定理は三角関数の基礎・余弦定理と合わせてマスターしよう!
今回は正弦定理の公式と証明、使い方のコツを詳しく解説しました。
計算過程も、どの参考書よりも詳しく書いたので、ぜひスマホを片手に自分で実際に手を動かして解いてみてください。
正弦定理と合わせて覚えておきたい定理として、余弦定理がありますが、余弦定理については、以下の記事をご覧ください。
また、正弦定理と余弦定理の使い分けについては、以下の記事で詳しく解説しています。正弦定理と余弦定理について理解したら、使い分けについてもマスターしてみてください!