余弦定理の公式・証明・使い方
余弦定理は数1Aの図形分野において基礎となる、とても重要な定理です。
そこで今回は、余弦定理の公式と証明、使い方のコツを具体的な例題を紹介しながら徹底的に解説します!
余弦定理の公式は覚えづらいと悩む人も多いのですが、本記事では証明のやり方も詳しく解説してあります。
もし公式を忘れてしまっても証明のやり方を学んでおけば自分で導き出すことができるということも覚えておいてください。
ぜひ最後まで読んで、余弦定理を完璧にマスターしましょう!
また余弦定理と合わせて覚えておきたい定理として、正弦定理があります。
正弦定理については、以下の記事をご覧ください。
また、余弦定理と正弦定理の使い分けについては、以下の記事で詳しく解説しています。
余弦定理と正弦定理について理解したら、使い分けについてもマスターしてみてください!
目次
余弦定理の公式
余弦定理の公式は以下の通りです。まずは覚えることが大切ですので、しっかり暗記してください。
上記の公式は辺の長さを求めるときに使いますが、角の大きさを求めることも良くあります。
角度を素早く求められるようにするために上記の公式に加えて、cos=の形式に書き換えた形も一緒に覚えましょう。
上記の公式から導き出すこともできますが、毎回毎回導き出すのは大変なので、丸暗記してしまうのが良いです。
余弦定理の証明
では次に、余弦定理の公式を証明していきます。
まず以下のような△ABCを考えます。
このときAからBCに垂直な線(垂線)を下ろし、BCとの交点をPとすると、△ABPと△ACPという2つの直角三角形ができます。
この2つの直角三角形について考えていきます。
余弦定理の公式の証明①:Cが鋭角(90°より小さい角)のとき
△ABPで三平方の定理を使うと、
$$AB^2 = AP^2 + BP^2…①$$
また、△ACPにおいて、
$$\sin C= \frac{ AP }{ b } \ より \ AP=b \sin C…②$$
$$\cos C= \frac{ CP }{ b } \ より \ CP=b \cos C$$
よって、
$$BP= BC-CP\\
=a-b \cos C…③$$
①の式に、②・③とAB=cを代入すると、
$$c^2 = (b \sin C)^2 + (a-b \cos C)^2\\
=b^2 \sin ^2 C + a^2-2ab \cos C+ b^2 \cos ^2 C\\
=a^2 + b^2(\sin ^2 C + \cos ^2 C) – 2ab \cos C$$
となる。
三角比の相互関係の公式より
$$\sin ^2 C + \cos ^2 C = 1$$
であるから代入すると、
$$c^2 = a^2 + b^2 – 2ab \cos C…④$$
となる。
余弦定理の公式の証明②:Cが鈍角(90°より大きい角)のとき
Cが鈍角の場合でも、Aから辺BCの延長に垂線を下ろすことにより、④式は成り立つ。
余弦定理の公式の証明③:Cが直角(90°)のとき
Cが直角の場合も、④式は成り立つ。
同様にして、
$$a^2 = b^2 + c^2 – 2bc \cos A\\
b^2 = c^2 + a^2 – 2ca \cos B$$
も成り立つ。(余弦定理の証明終了)
余弦定理・正弦定理の証明をするときは、∠の大きさが
- 鋭角のとき
- 鈍角のとき
- 直角のとき
と3つに場合分けをするのが一般的です。
もし試験問題に「証明せよ」という問題が出た場合、余弦定理において②・③でも成り立つことは①の証明から明らかです。
しかし、「②・③の場合もちゃんと考えている」ということを試験監督を示すために、②・③の場合もそれぞれ①の結果が成り立つということまで書くようにしましょう。
余弦定理の使い方
ではここからは、実際の問題を使って余弦定理の使い方を解説していきます。
余弦定理は以下の2つの場合、使うことができます。
- 2辺の長さと1つの角度が分かっているとき
- 3辺の長さが分かっているとき
余弦定理の使い方①:2辺の長さと1つの角度が分かっているとき
問題1
△ABCにおいて、∠A=60°、b=6、c=10、のとき、aの長さを答えなさい。
問題1の解答・解説
まずは図を書いてみましょう。
図を書いて、問題文で示されている値を書き込むと以下のようになります。
今回はaの長さを聞かれているので、
$$a^2 = b^2 + c^2 – 2bc \cos A$$
を使いましょう。
$$a^2 = b^2 + c^2 – 2bc \cos A\\
= (6)^2 + (10)^2 – 2 \times 6 \times 10 \times \cos 60°\\
= 36 + 100 – 2 \times 6 \times 10 \times \frac{ 1 }{ 2 }\\
= 36 + 100 – 60\\
= 76 = 2 \times 2 \times 19$$
a > 0であるから、
$$a = 2 \sqrt{19}$$
となります。
余弦定理の使い方②:3辺の長さが分かっているとき
問題2
△ABCにおいて、a=√2、b=1、c=√5、のとき、∠Cの大きさを答えなさい。
問題2の解答・解説
まずは図を書いてみましょう。
図を書いて、問題文で示されている値を書き込むと以下のようになります。
今回は∠Cの大きさを聞かれているので、cos=の形になっている余弦定理の公式
$$\cos C = \frac{ a^2 + b^2 – c^2 }{ 2ab }$$
を使いましょう。
$$\cos C = \frac{ a^2 + b^2 – c^2 }{ 2ab }\\
= \frac{ (\sqrt{2})^2 + (1)^2 – (\sqrt{5})^2 }{ 2 \times \sqrt{2} \times 1}\\
= \frac{ 2 + 1 – 5 }{ 2 \sqrt{2} }\\
= \frac{ -2 }{ 2 \sqrt{2} }\\
= – \frac{ 1 }{ \sqrt{2} }$$
したがって、
$$C = 135°$$
となります。
図形問題のほとんどは文章題で出題されます。問題に丁寧な図が書いてあることはほとんどありません。
そこでまずは文章題を読みながら、自分で図にしてみましょう。
図を書いて、文章題で示された値を入れていくと、視覚的に問題を整理することができ、どんな公式を使えば良いのかの見通しが立てやすくなります。
「図形問題はまず図を書く」という癖を、しっかりと身に付けていきましょう!
余弦定理の公式の使い方は正弦定理と合わせてマスターしよう!
今回は余弦定理の公式と証明、使い方のコツを詳しく解説しました。
計算過程も、どの参考書よりも詳しく書いたので、ぜひスマホを片手に自分で実際に手を動かして解いてみてください。
余弦定理は公式だけ覚えても、三角比の値、三角関数の基礎知識を理解していないと使えません。
また正弦定理との使い分けも重要なポイントとなってきます。
三角関数の基礎知識と、正弦定理の解説、余弦定理と正弦定理の使い分けも一緒にマスターしましょう!