はじめに:法線についてわかりやすく!
数学には特別な名前がついた線がたくさんあります。垂線や接線、法線など……。
その中でも法線は、名前から「どんな線なのか」がわかりにくい線ですが、これを知らないと微分・積分や軌跡と領域の問題でつまずくことになります!
そこで今回は法線がどんな線なのか、法線の方程式、法線が関わる例題などを解説していきます!この機会にぜひマスターしちゃいましょう!
目次
法線とは:接線との関係は?
法線とは、「曲線上のある点を通り、その点における接線に垂直な直線」です。曲線・接線・法線は同じ1点を共有するわけですね。
図にすると次のようになります。
法線は英語で「normal line」です。normalには「普通, 正常」というイメージがありますが、それ以外にも「規定の, 標準の」といった意味があります。
規定→法律→法といった具合に変わって伝わってきたのだと推測されるというわけですね。
法線の方程式の公式
ある曲線が\(y = f(x)\)の形で表されるとき、この曲線上の点\((p,f(p))\)における法線は
$$ y = -\frac{1}{f'(p)}(x-p)+f(p) ~~(f'(p) \ne 0) $$
となります(\(f'(p)\)が0のときにも対応するために \((x-p)+f'(p)(y-f(p))=0\) と書くこともあります)。
では、どうしてこうなるのか説明します。
点\((a,b)\)を通る傾きが\(m\)の直線は\(y=m(x-a)+b\)と書くことができますよね?
先ほどの定義によると、法線は接線(傾き\(f'(p)\))に垂直なので、法線の傾きは\(-\frac{1}{f'(p)}\)です(直交する2直線の傾きの積は\(-1\)だからb)。
で、法線は点\((p, f(p))\)を通るので
\begin{eqnarray}
m &\rightarrow& &-\frac{1}{f'(p)}&\\
a &\rightarrow& &p&\\
b &\rightarrow& &f(p)&
\end{eqnarray}
とすれば
$$ y = -\frac{1}{f'(p)}(x-p)+f(p) ~~(f'(p) \ne 0) $$
となるわけです。
法線の方程式の求め方:陰関数や媒介変数表示の曲線の場合
それでは曲線の式が\(y=f(x)\)と表すことができないときはどうすればいいでしょうか?
例として原点を中心とした半径\(r\)の円\(x^2+y^2=r^2\)を考えましょう。この円上の点\((r\cos\theta, r\sin\theta)\)における法線を求める方法は4通りあります。
1つ目は強引に\(y = \pm \sqrt{r^2-x^2}\)としてしまう方法。こうすれば一応\(y=f(x)\)ですから先ほどの公式が使えますね。
しかしこれを微分するのは面倒ですし、\(y\)座標が正なのか負なのかで場合わけが必要ですし、あまりオススメできない…
2つ目は\(x^2+y^2=r^2\)の両辺を\(x\)で微分する方法。そうすると
$$ 2x+2y\frac{dy}{dx} = 0 $$
となるので\(x = r\cos\theta, y = r\sin\theta\)を代入すると、この点での接線の傾き\(\frac{dy}{dx} = -\frac{1}{\tan\theta}\)がわかります。
あとは法線の定義通りに考えると…
$$ y = (\tan\theta)(x-r\cos\theta)+r\sin\theta $$
3つ目は\(x=r\cos t, y=r\sin t ~~(0≦t<2\pi)\)のように媒介変数表示にする方法です。
$$ \frac{dy}{dx} = \frac{\frac{dy}{dt}}{\frac{dx}{dt}} = \frac{r\cos t}{-r\sin t} = -\frac{1}{\tan t} $$
とすれば接線の傾きが得られますね。点\((r\cos\theta, r\sin\theta)\)では\(t=\theta\)とすればいいわけですから、接線の傾きは\(-\frac{1}{\tan\theta}\)
あとは2つ目の方法と同様です。
4つ目の方法は円の性質を使う方法です。円の法線は必ず中心を通るので、\((0,0),(r\cos\theta, r\sin\theta)\)を通る直線の式
$$ y = (\tan\theta)x $$
が得られます。これは \(y = (\tan\theta)(x-r\cos\theta)+r\sin\theta\) を整理した結果と一致します!
このように法線を求める方法は複数ありますが、結局は接線の傾きと通る点がわかれば求まります。
図形の性質が使えるときはって、それ以外では接線の傾きを求めることを目指しましょう。
ちなみに\(f(x,y)=0\)(\(f(x,y)\)は\(x\)と\(y\)の式)と表したものを陰関数表示といい、\(x, y\)を別の変数を使って表すのを媒介変数表示といいます。
法線の方程式の計算問題
ここで法線の方程式の計算を練習してみましょう!
法線の方程式の例題1
曲線\(C : y=x^3+x\)の点\((1,2)\)における法線を求めよ。
これは\(y=f(x)\)の形ですから、公式通りに計算すればOKですね!
$$ f'(x) = 3x^2+1 $$
なので、接線の傾きは\(f'(1) = 4\)
公式に当てはめると…
$$ y = -\frac{1}{4}(x-1)+2 $$
これを整理して、答えは\(y=-\frac{1}{4}x+\frac{9}{4}\)
法線の方程式の例題2
曲線\(C: \frac{x^2}{4}+y^2=1\)の点\((1,\frac{\sqrt{3}}{2})\)における法線を求めよ。
これは\(y=f(x)\)の形ではないので、公式に当てはめるだけではできませんね。
しかし結局は接線の傾きが分かればいいので、\((x,y)=(1,\frac{\sqrt{3}}{2})\)での\(\frac{dy}{dx}\)の値を求めましょう。
曲線\(C\)の式の両辺を\(x\)で微分すると、
$$ \frac{x}{2}+2y\frac{dy}{dx}=0 $$
となるので、\((x,y)=(1,\frac{\sqrt{3}}{2})\)のとき
$$ \frac{dy}{dx} = -\frac{1}{2\sqrt{3}} $$
∴法線は点\((1,\frac{\sqrt{3}}{2})\)を通り、傾きが\(2\sqrt{3}\)の直線だから、
$$ y = 2\sqrt{3}(x-1)+\frac{\sqrt{3}}{2} $$
これを整理して、答えは\(y=2\sqrt{3}x-\frac{3\sqrt{3}}{2}\)
このようにして、\(y=f(x)\)の形でなくても、焦らず接線の傾きを計算していきましょう!
ちなみに例題2の曲線は楕円ですね。
法線の方程式を利用した問題
実は法線は「法線を求めよ」という問題で聞かれることよりも、次の問題のように問題設定として用いられることの方が多いです。
法線の方程式の例題3
\(x\)軸, 曲線\(C: y=x^2\)および点\((1,1)\)における\(C\)の法線で囲まれた部分の面積\(S\)を求めよ。
この問題では法線の求め方が分かった上で、さらに積分計算がしっかりできるかが試されるわけですね。
公式通りに計算すると、法線は
$$ y=-\frac{1}{2}x+\frac{3}{2} $$
となります(ぜひ計算してみてください)。
あとは積分計算するだけです!
\begin{eqnarray}
S &=& \int_0^1 x^2 dx + \frac{1}{2}\cdot 2\cdot 1\\
&=& \frac{1}{3}+1\\
&=& \frac{4}{3}
\end{eqnarray}
答えは\(S=\frac{4}{3}\)ですね!
おわりに:法線の方程式を求めるときは、まず接線の傾きを求める!
以上見てきたように、法線の方程式は当たり前のように求められることが必須となってきます。
法線を聞かれたらまず接線の傾きを求めるのを徹底して、法線の方程式の計算をマスターしましょう!