はじめに
確認問題で覚える古典文法シリーズ、今回は助動詞「る・らる」を取り上げます。
助動詞「る・らる」は受身のほかに3つの意味があります。それぞれの使い方を見ていきましょう!
助動詞「る・らる」の活用
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
---|---|---|---|---|---|---|
る | れ | れ | る | るる | るれ | れよ |
活用の型は下二段活用型です。
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
---|---|---|---|---|---|---|
らる | られ | られ | らる | らるる | らるれ | られよ |
活用の型は下二段活用型です。
助動詞「る・らる」意味・訳し方・接続
助動詞 | 文法的意味 | 訳し方 | 接続 |
---|---|---|---|
る・らる | 1.受身 2.尊敬 3.自発 4.可能 |
1.~れる、~られる 2..~れる、~られる、~なさる、お~になる 3.(自然と)~れる、~せずにはいられない 4.~できる |
未然形 |
らる→それ以外の未然形の後に続ける
1. 受身
ありがたきもの、舅にほめらるる婿。(枕草子)
めったにないもの、舅に褒められる婿。
物に襲はるる心地して、驚き給へれば(源氏物語 夕顔)
物の怪に(夢の中で)おそわれる気持ちがして、はっと目をお覚ましになると
2.尊敬
かの大納言、いづれの船にか乗らるべき。(大鏡)
あの大納言は、どの船にお乗りになるのだろうか。
無下のことをも仰せらるるものかな。(徒然草)
ひどいことを仰せになるものだ。
3. 自発
住みなれしふるさとかぎりなく思ひ出でらる。(更級日記)
住み慣れた元の家がこの上なく懐かしく思い出される。
見捨てたてまつる悲しくて、人知れずうち泣かれぬ(更級日記 かどで)
(薬師仏を)あとにお残し申し上げるのが悲しくて、人に知られることなくそっと泣かないではいられなかった。
4. 可能
恐ろしくて寝もねられず。(徒然草)
恐ろしくて寝ることもできない。
涙のこぼるるに、目も見えず、物も言はれず(伊勢物語 六二)
涙があふれ出て、目も見えず、物も言うこともできない。
助動詞「る・らる」の確認問題
【1】( )に入る助動詞「る」を適切な形に活用しなさい。
(1)舎人が、寝たる足を狐に食は( )。(徒然草)
(2)軒近き荻のいみじく風に吹か( )て、砕けまどふが、(更級日記)
(1)る
( )が文末にあるので終止形の「る」がきます。意味は受身です。
訳:舎人が、寝ている足を狐に食べられる。
(2)れ
直後が助動詞なので連用形の「れ」がきます。意味は受身です。
訳:軒近くの荻が激しく風に吹かれて、砕け散るのが、
【2】( )に入る助動詞「らる」を適切な形に活用しなさい。
(1)〈朱雀院ハ〉あはれにらうたしと御覧ぜ( )。(源氏物語 澪標)
(2)なほ梅の匂ひにぞ、いにしへの事も立ちかへり恋しう思ひ出で( )。(徒然草)
(1)らる
文末なので終止形の「らる」が入ります。意味は尊敬です。
訳:(朱雀院は)しみじみといじらしいとご覧になるのである。
(2)らるる
文末なので終止形の「らる」だと思うかもしれませんが、上に係助詞の「ぞ」があるので係り結びで連体形の「らるる」が入ります。意味は自発です。
訳:やはり、梅の香りには、昔のことも(当時に)立ち返って懐かしく思い出される。
【3】次の文中にある助動詞「る・らる」の文法的意味を答えなさい。
(1)知らぬ人の中にうち臥して、つゆまどろまれず。(更級日記)
(2)「『犬島へつかはせ。ただ今』と仰せらるれば」(枕草子 うへにさぶらふ御猫は)
(1)可能
訳:知らない人たちのなかで横になって少しもうとうと眠ることができない
(2)尊敬
訳:(翁丸を)犬島へ追放せよ。すぐさま」と(帝が)お命じになるので。
自発→心情語(思ふ、泣く、驚くなど)の後につくことが多い
可能→下に打消しがある場合
受身→上に「人間+に」がある
尊敬→「仰せらる」の「らる」は絶対に尊敬
おわりに
「る・らる」はたくさんの意味がありますが、意味の判別方法さえ習得すれば、簡単に判別できるはずです。
基本的な助動詞なのでしっかりマスターしましょう!
古典が苦手という方は、古典漫画についての記事を読んでみてください!