はじめに
2次不等式とは、\(ax^2+bx+c<0\)のように表せる2次関数を含む不等式のことを言います。
1次不等式と違い、移項するだけでは解けません。また、解がないことや、全てのxが解になることもあるため、難しく感じられるかもしれません。
しかし、2次不等式をグラフに書いてしまえば誰でも解くことができます。
今回は2次不等式の問題の解き方を解説します。
目次
2次不等式の解〜判別式Dによる場合分け〜
ここでは、2次不等式の解について、判別式Dの符号(正・負・0)ごとに解説します。
「判別式ってなんだっけ……?」という人はまずこちらの記事を確認してください!
判別式Dによる場合分け①:D>0のとき
まず、2次関数 \(y=ax^2+bx+c(判別式D>0)\)をグラフに書いてみます。
aが正の場合
a>0より下に凸のグラフであり、D>0より解を2つ持つため、x軸と2つの点で交わります。
\(ax^2+bx+c>0\)となるのは、\(y=ax^2+bx+c\)と\(y=0\)、つまりx軸と比べたときに、前者が上にあるときです。
上の図で言うと、水色の部分が当たります。
(\(x<α、β<x\))
逆に\(ax^2+bx+c<0\)となるのは、\(y=ax^2+bx+c\)がx軸より下に行くときなので、
上の図の橙色の部分が満たすことになります。
(\(α< x< β\))
このようにグラフを描くことで、2次不等式のイメージが掴めたのではないでしょうか。
以上のことを整理すると次の様になります。
a>0、判別式D>0で、解をα、β(α<β)とするとき
- \(ax^2+bx+c>0\)の解は\(x<α、β<x\)
- \(ax^2+bx+c<0\)の解は\(a<x<β\)
aが負の場合
上の説明は\(x^2\)の係数が正の場合でした。係数が負の場合は何が変わるのでしょうか。
aが負のときのグラフを書いてみると、次のようになります。
aが負なので、上凸のグラフになっていますね。
注意してほしい箇所は、先程と比べて水色と橙色の部分が入れ替わっていることです。グラフの方向が変わっているので当たり前ですが。
そのため、先程のaが正の場合と比べて式の形が全て逆になります。
\(ax^2+bx+c>0\)を解くと、グラフの水色の部分を見てもらえればわかりますが、α<x<βとなります。
※aが正のときは、x<α、β<xでしたね。
また、\(ax^2+bx+c<0\)を解くと、グラフの橙色の部分を見るとわかるように、x<α,β<xとなります。
※aが正のときは、α<x<βとなっていました。
以上のように\(x^2\)の係数の正負によって向きが変わってしまうので、取り違えないように注意しましょう。
整理すると次のようになります。
a<0、判別式D>0で、解をα、β(α<β)とするとき
- \(ax^2+bx+c>0\)の解は\(a<x<β\)
- \(ax^2+bx+c<0\)の解は\(x<α、β<x\)
これをそのまま覚えても良いですが、恐らくaが正の場合と負の場合で混同してしまう恐れがあるので、グラフを書いて確認することをおすすめします!
判別式Dによる場合分け②:D=0のとき
D=0のときをグラフに描くと以下のようになります(aは正)。
D=0のとき、\(y=ax^2+bx+c\)のグラフはx軸と接することになります。
接している値をαとすると、x=αのときのみ0となり、それ以外は0より大きくなります。
よって、\(ax^2+bx+c>0\)の解は\(x≠α\)となります。
また、全てのxにおいて0以上なので、\(ax^2+bx+c<0\)は解を持たないことになります。
このように2次不等式の問題は、不等式の問題でも解が\(x<α\)のようにならないことがあるので、注意しましょう。
ちなみにaが負の場合は、正の場合の符号をひっくり返したものなるので、
- \(ax^2+bx+c>0\)は解なし
- \(ax^2+bx+c<0\)の解は\(x≠α\)
となります。実際にグラフを描いてみると、上の式のようになることが実感を持ってわかりますよ!
判別式Dによる場合分け③:D<0のとき
2方程式の判別式Dが負になるとき、\(y=ax^2+bx+c\)のグラフはx軸と交わりません。
つまり、D<0のときは常に0より大きいか、常に小さいかのどちらかです。
aが正の場合は下に凸なグラフになり、常に0より大きくなります。
よって、
- \(ax^2+bx+c>0\)の解は全ての実数
- \(ax^2+bx+c<0\)は解なし
また、aが負の場合は上に凸なグラフになるので、常に0より小さくなります。
- \(ax^2+bx+c>0\)は解なし
- \(ax^2+bx+c<0\)の解は全ての実数
文字だけを見ると混乱しそうになりますが、実際にグラフを描くと解ない場合や、全ての実数が解になる場合は一目瞭然ですね。
2次不等式の例題
\(x^2\)の係数や判別式Dの正負に気をつけて問題を解いてみましょう。
問題
次の2次不等式を解け。
\(x^2+4x-5<0\)
\(-x^2+2x+15<0\)
問題の解答・解説
\(x^2+4x-5<0\)を解いていきましょう。
\(D=4^2-4*1*(-5)=36>0\)であるので
\(x^2+4x-5=0\)は解を2つ持ちます。
\(x^2\)の係数は正ですので、解はα<x<βの形になることがわかりますね。
\(x^2+4x-5=0\)を解くと、\(x=-1,5\)となるので、
答えは、\(1<x<5\)となります。
※ 問題を解くときは判別式を確かめるまでもなく因数分解してしまうと良いでしょう。
次に\(-x^2+2x+15<0\)を解いていきましょう。
両辺に-1を掛けて符号を入れ替えることで、正の場合として解いても良いですが、そのまま解いてみます。
因数分解すると次のようになります。
\(-(x-5)(x+3)<0\)
上に凸のグラフになるので、0より小さくなるのは\((x<α,β<x)\)となる場合です。
よって解は x<-3 , 5<xとなります。
おわりに
2次不等式を解く際に大事なことは、\(x^2\)の係数と判別式Dの符号に注意することです。
これらが変わってしまうと解が全く変わってしまうので注意しましょう。
係数と判別式と問題文の符号の組み合わせで解のパターンを暗記することはほぼ不可能です。
そこで、係数と判別式をもとにグラフを簡単に描いて具体的なイメージをつかむことが必須です。
2次関数のグラフの描き方についての記事もあわせてご覧くださいね。