はじめに
理系にとって数学が重要であるのは言うまでもありません。
それは受験にとっても然りで、東大入試でも、3割弱を数学が占めています。
しかし、今あなたが数学が苦手だからと言って、むやみに弱気になる必要はありません。
相手を正しく知り、正しく恐れることで、正しい対処法をとることができます。
今回は、現役東大生である筆者の経験をベースに東大理系数学について解説し、みなさんが数学で戦っていくための一助となるような情報をお伝えしていきたいと思います。
東大文系数学の記事はこちら!
目次
東大理系数学の概要(大問別配点、目安となるおすすめの時間配分)
【東大理系数学】出題形式、試験時間
問題は全部で6つの大問に分かれています。
出題範囲は数学Ⅰ・Ⅱ・ⅢとA・B。
ただし、数学Bは数列とベクトルのみから出題されます。
また、試験時間は150分間です。
二次試験の一日目の午後に実施されます。
【東大理系数学】出題の傾向、配点
理系数学は120点満点です。
大問ごと、小問ごとの配点は公表されていませんが、模試の採点では、全問平等に20点満点ずつとなっています。
個人で得点の算段をつけるときもこの配点で考えておけばよいでしょう。
過去の出題傾向を見ると、整数・確率・軌跡と存在領域・微積分の分野が頻出と言えそうです。
複素数が必修のカリキュラムに戻ってからは、複素数の問題も3年連続で出題されています。
【東大理系数学】合格するための目標点、合格者平均点とは?
当面は2問完答を目指しましょう。
これで40点。余った時間で残りの問題を解きます。
完答はできなくても部分点を稼ぎ、60点くらいとれるとひとまず許容ラインです。
科目別の合格者平均点は公表されていませんが、合計点では毎年およそ6割くらいになっているので、数学も6割取れると十分合格射程圏内と言えるでしょう。
ただし、入試は総合得点での勝負ですから、数学の成績が振るわなくても、ほかの科目の成績次第で合格点に達するというのも十分にあり得ます。
実は筆者も数学は50点で合格しています。
しかし2017年度の入試は例外で、数学が極端に易化したため合格者平均が80点を超えるほどだったのだとか。
近年の東大数学は易化が進んでいるので、これまでのセオリーがそのまま適応できるかどうかは慎重になる必要があるでしょう。
【東大理系数学】おすすめの解く順番
まずは全問に目を通しましょう。
解けそうな問題から解いていくことが大切です。
日本最難関である東大の入試問題ですから、受験生の多くが手も足も出ないという問題が出題されてもおかしくはありません。
もしそんな問題に直面したとき、わかりもしない問題に延々悩み続けるよりは、いっそその問題はあきらめて、別の問題を解くほうが合格に近づけます。
初見でどういう解法をとればいいかわからない問題よりは、計算を頑張れば解けそうな問題から解いてみる方がいいでしょう。
その場合も、東大では計算量がとても多い問題を出題してくることがありますから、詰まったりしたらいったん手を引いて、ほかの問題も解いてみて、時間があれば戻ってくるというようにしたほうがいいかもしれません。
【東大理系数学】おすすめの時間配分は?
150分で6問解くのですから1問あたりは25分ということになるでしょう。
とはいえ、もちろん律儀に25分ずつかけなければいけないわけではないですから、解けそうな問題になるべく時間をかけて、点数を稼ぐようにしましょう。
6問全部が25分で解けるようにできているはずがありませんから、例えばもし1問を解くのに30分かけてしまったとしても、全問完答を目指す人以外は焦らなくてもいいです。
【東大理系数学】合格点を取るための対策法
東大理系数学対策とはいっても、出題分野は毎年違いますし、問題の組み合わせ、各問題や全体の難易度もバラバラです。
また、「東大数学の頻出分野、確率の対策を完璧にしたぞ!」と息巻いていても、確率の問題が出題されなければどうしようもありません。
実際、2018年度は確率の問題は出題されていません。
特定の分野だけの対策をするのでは効果がないのです。
いろんな分野がまんべんなく出題されている東大数学ならなおさらです。
特定の分野に特化した勉強よりは、苦手な分野をなくすような勉強のほうが良いでしょう。
特に先に挙げた頻出分野の整数・確率・軌跡と存在領域・微積分が苦手という人は、もう一度基本から勉強しなおして、苦手をつぶしておきましょう。
先に述べた通り、東大数学対策と呼べるような勉強はありません。
しかし、どんな問題にも通用する、東大数学を解く上での基本はあります。
ここではそれを紹介することにしましょう。
部分点を稼ごう
東大数学は難しいですが、もちろん全問完答しなければ受からないというわけではありません。
完答が難しそうな問題では、部分点を稼ぐことを心がけましょう。
答案を白紙で提出すると間違いなく0点ですが、何か書けば、2点3点くらいもらえるかもしれません。
とはいえ、でたらめなことを書いても部分点は望めませんから、根拠があること、数学的に正しいこと、何が言いたいか採点者に伝わるように書くことを意識しましょう。
条件を式にしよう
例えば、「\(0\)でない傾きを持つ直交する2直線がある」と問題文で与えられていれば、文字は何でもいいですが、\(0\)でない実数\(p\)を定義して、2直線の傾きを\(p\)と\(-\frac{ 1 }{ p }\)と定めますよね。
もしくは直線をベクトル方程式で表現して、方向ベクトルの内積が\(0\)とする人もいるかもしれません。
このように文章で与えられた条件を数式で表現することは、問題を解くための第一歩です。
条件を式にした後どうするか全くわからなくても、この作業は必ずしてください。
部分点を稼ぐことにもつながります。
わかりやすい説明をつけよう
突然ですが、私たちは採点者に対して、答案について口頭で弁解することができません。
採点者は答案を読むことによってのみ、答案を採点します。
そのため受験生は、読むだけで、自分の意図したことが全て伝わるような答案を作るよう心掛けないといけないのです。
先ほど例として2直線の傾きを定義しましたが、答案に書くとき
と書いただけでは不十分です。
文字を含む式を分母にするときは、必ず分母が\(0\)出ないことを確認しなければなりません。
自分が問題を解きながら当たり前のように思っているからといって、答案を書くときに飛ばすのはNGです。
採点者から見れば、\(p\)が\(0\)であることを確認していない不完全な答案です。
解答者は分かっていないのだな、と判断されても仕方ありません。
と明記して、分かっているんだぞとアピールしてください。
また、答案が数式ばかりになってしまうのはあまり感心しません。
自分が何を計算しているのか、なぜその計算で答えを導けるのかをちゃんと説明しましょう。
一番楽な方法を模索しよう
問題を解き始めるとき、どんな方法で解くか、頭の中にいくつかの選択肢が思い浮かべます。
いくつか思い浮かんだ選択肢の中から、最も計算が楽な方法を模索しましょう。
東大の問題は、解法の選択によってはとんでもない計算を強いられることもあります。
問題を解きながら、常に今とっている解法が最適なのかどうかを考えてください。
初めにいくつか計算を試してみるのもいいかもしれませんね。
例えば単位円上第一象限の点を定義するにしても、
と置くか、
と置くかで計算量が大きく変わることがあります。
【東大理系数学】現役東大生おすすめの勉強法~参考書一覧~
ここではおすすめの参考書として、筆者が使っていたものを紹介します。
東大理系数学勉強法:『青チャート』
普段の勉強用として多くの学校で採用されているのが青チャートです。
青チャートの練習問題は一通り解いて、問題のレベルに関わらず全部できるようにしておきたいです。
また、青チャートはその情報の多さからして、解法辞典のように使うことも出来ます。
過去問などで問題演習をしているときに、「この分野の知識がちょっと抜けているな」と気づくことがあるでしょう。
そんなときは青チャートの該当箇所に戻るといいです。
青チャートでは、各分野の問題の基本的な取扱い方がほぼ網羅されています。
該当箇所に目を通すだけで十分な復習ができるでしょう。
しかし、読んだだけで出来るつもりになるのは危険です。
必ず、参照箇所は自分で解答を再現できるように、手を動かして覚えてください。
当然入試本番に青チャートを持ち込むことはできませんから、本番までに自分の頭の中に解法辞典を作っておくのがいいと思います。
要は分野ごとに主要な解法を整理して覚えておき、問題をみてどの解法が最適かを判断するという解き方ができるようにしておくのがいいということです。
これについては後ほど詳しく書こうと思います。
東大理系数学勉強法:『東大数学で1点でも多くとる方法(理系編)』
おそらく最も受験生の立場に立って編集されている参考書が「東大数学で一点でも多くとる方法」です。
主に東大の過去問の解説をしながら、問題を解く上での定石を紹介したり、入試本番で1点でも多く得点するにはどういう解法をとるべきかを論じています。
こちらは東大志望を志望する多くの受験生の支持を集めている参考書で、筆者も過去問を解く際はお世話になりました。
過去問を扱っているとあって内容は演習向けと言っていいと思います。
普段の勉強用、または基礎固めの参考書は別のものを見つけて使ったほうが良いでしょう。
【東大理系数学】過去問の取り扱いについて
過去問はいつから解くのがよいのか、と受験生だれもが疑問を抱くとは思いますが、過去問の解答を読んで理解できるくらいになればすぐにでも始めるのが良いでしょう。
というのも、言ってしまえば過去問と全く同じ問題はほぼ確実に本番の入試では出ないのです。
ですから、それほどありがたがって温存することに意味はないはずだからです。
しかし、過去問は受験生のほとんどが解きますから、受験生ならみんなが知っていて解けると想定されます。
過去問をおろそかにすると、過去問に似た問題に出会ったとき、自分だけ解けないなんてことにもなりかねません。
そうならないために、早めに過去問を知っておく方が賢明なのです。
では本番レベル、本番形式の演習はどうするのか、と思う方がいらっしゃるかもしれません。
そこで、模試を活用してほしいです。
模試の問題は、受験者を選別するための試験である入試の問題と異なり、受験生が問題を通して何かを学び取ることを期して作られており、学習効果が高いのです。これを活用しない手はありません。
模試は毎回全力で受けること、必ず復習、解きなおしすることを心がけましょう。
過去の模試問題を入手すればそれも本番形式の練習用として使えます。
東大理系数学の勉強法・対策法まとめ
青チャートの解説のところに書きましたが、筆者のおすすめの数学の勉強法は解法の暗記です。
これは、「勉強は知識を蓄える過程」だとする考えから来ていて、一度解いた問題は類題も含めて必ず次解けるようにするようにして演習をたくさん積むことで、対応できる問題を増やしていった結果、数学ができるようになる、という形を理想としています。
数学ができる人は「センスがある」とよく言われますが、いわゆる「センスがある」人の多くが、かなりの演習量を積んでおり、知識が豊富です。
数学におけるセンスは、この知識量の多さからくるものだと思われます。
ですから今、「センスがなくて数学ができない……。」という人も、諦めずに、地道に解法を覚えていくと必ず成長できます。
ここで、東大数学で頻出の分野、整数について、問題を解くときの典型的な解法を体系的にまとめてみました。
先ほど述べた筆者の頭の中の解法辞典を書き起こしたものです。
もちろんここにあるものがすべてではありませんが、整数問題に出会ったときこれらの方針はすぐに思い浮かんで試してほしい、という大事なものばかりですので、必ず頭に入れておきましょう。
他の分野でも、このように、問題を解くときの方針を整理して頭の中にストックしておけるといいです。
何も方針が浮かばず、パニックになることがなくなります。
ここでは整数分野しか紹介できませんので、他の分野のまとめはぜひ自分でやってみてください!
例題1:余りで分類する
\(n\)を自然数とする。\(n\)^\(2\)が\(12\)で割り切れるときの\(n\)の条件を求めよ。
例題1の解答・解説:その1
★\(12\)で割り切れるときの条件を知りたいので、まずは\(n\)を\(12\)で割った余りで分類してみます。
(解答)
\(n = 12m + k (m\)は\(0\)以上の整数、\(k = 0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11)\)とする。
\(n^2 = ( 12m + k )^2\)
\(= 144m^2 + 24mk + k^2\)
\(= 12( 12m^2 + 2mk ) + k^2\)
であるから、\(n^2\)を\(12\)で割った余りは\(k^2\)を\(12\)で割った余りに等しい。
つまり\(n^2\)が\(12\)で割り切れる条件は\(k^2\)が\(12\)で割り切れる条件ということ。
\(k\)の値ごとに\(12\)で割った余りを調べると、\(k = 0,6\)のとき\(k^2\)は\(12\)で割り切れる。
よって、\(n^2\)が\(12\)で割り切れる条件は、\(m\)を整数として
\(n = 12m,12m + 6\) のとき
(終)
例題1の解答・解説:その2
★\(n\)を\(12\)で割った商と余りで表現して、\(n^2\)の\(12\)でくくれる部分をくくり、残った部分を調べます。
上の計算を見ると、\(12m\)は\(6m\)でも\(k^2\)だけがくくった残りになることがわかります。
次に\(n\)を\(6\)で割った余りで分類してみます。
(解答)
\(n = 6m + k\) \((m\)は\(0\)以上の整数、\(k = 0,1,2,3,4,5)\)とする。
\(n^2 = ( 6m + k )^2\)
\(= 36m^2 + 12mk + k^2\)
\(= 12( 3m^2 + mk ) + k^2\)
である。
\(n^2\)が\(12\)で割り切れるには\(k^2\)が\(12\)で割り切れればよい。
それは\(k = 0\)のときである。
よって、\(n^2\)が\(12\)で割り切れる条件は、\(m\)を整数として
\(n = 6m\) のとき
(終)
例題1の解答・解説:その3
★\(k\)が6通りになって計算量が減りました。実はまだ減らせます。
\(k^2\)を考えるだけなので、\(k\)の符号は\(±\)両方でも大丈夫なんです。
(解答)
\(n = 6m ± k (m\)は\(0\)以上の整数、\(k = 0,1,2)\)とする。
\(n^2 = ( 6m ± k )^2\)
\(= 36m^2 ± 12mk + k^2\)
\(= 12( 3m^2 ± mk ) + k^2\)
である。
\(n^2\)が\(12\)で割り切れるには\(k^2\)が\(12\)で割り切れればよい。
それは\(k = 0\)のときである。
よって、\(n^2\)が\(12\)で割り切れる条件は、\(m\)を整数として
\(n = 6m\) のとき
(終)
★おそらくこれが、一番計算量の少ない簡潔な解答です。
例題2:不等式で絞りこむ
\(a,b,c\)は自然数とする。\(\frac{ 1 }{ a } + \frac{ 1 }{ b } + \frac{ 1 }{ c } = 1\)を満たす\(( a , b , c )\)の組をすべて求めよ。
例題2の解答・解説
★整数分野では、解答を書き始める前に簡単な数字で実験をするというのが常套手段です。
ですが、問題によってはちょっと工夫することで、答えになりえる数字を絞り込むことができます。
その工夫が、不等式の利用です。この問題では、自分で文字に大小を設定することで、調べる数字の数を一気に減らします。
(解答)
\(a ≦ b ≦ c\) として考える。
\(\frac{ 1 }{ a } + \frac{ 1 }{ b } + \frac{ 1 }{ c } ≦ \frac{ 3 }{ a }\)
左辺の値は\(1\)なので、\(1 ≦ \frac{ 3 }{ a }\)
\(a\)は自然数より、\(a = 1,2,3\)
\((ⅰ) a = 1\)のとき
\( \frac{ 1 }{ b } + \frac{ 1 }{ c } = 0\)
を満たす\(b,c\)はない。
\((ⅱ)a = 2\)のとき
\(\frac{ 1 }{ b } + \frac{ 1 }{ c } = \frac{ 1 }{ 2 }\)
\(\frac{ 1 }{ b } + \frac{ 1 }{ c } ≦ \frac{ 2 }{ b }\)
左辺の値は \(\frac{ 1 }{ 2 }\)なので、\( \frac{ 1 }{ 2 } ≦ \frac{ 2 }{ b }\)
\(2 ≦ b\)もあわせて\(b = 2,3,4\)
\((1)b = 2\)のとき\(c\)は存在しない。
\((2)b = 3\)のとき\(c = 6\)
\((3)b = 4\)のとき\(c = 4\)
\((ⅲ)a = 3\)のとき
\(\frac{ 1 }{ b } + \frac{ 1 }{ c } = \frac{ 2 }{ 3 }\)
\(\frac{ 1 }{ b } + \frac{ 1 }{ c } ≦ \frac{ 2 }{ b }\)
左辺の値は\(\frac{ 2 }{ 3 }\)なので、\(\frac{ 2 }{ 3 } ≦ \frac{ 2 }{ b }\)
\(3 ≦ b\)もあわせると、\(b = 3\)、このとき\(c = 3\)
\((ⅰ)(ⅱ)(ⅲ)\)より、\(a ≦ b ≦ c\) のとき
\(( a , b , c ) = ( 2 , 3 , 6 ) , ( 2 , 4 , 4 ) , ( 3 , 3 , 3 )\)
よって答えは、\(a, b, c\)の大小をなくした
\(( a , b , c ) = ( 2 , 3 , 6 ) , ( 2 , 6 , 3 ) , ( 3 , 2 , 6 ) , ( 3 , 6 , 2 ) ,\)
\(( 6 , 2 , 3 ) , ( 6 , 3 , 2 ) , ( 2 , 4 , 4 ) , ( 4 , 2 , 4 ) ,( 4 , 4 , 2 ) ,\)
\(( 3 , 3 , 3 )\)
(終)
例題3:分数にする
\(n,p\)はともに自然数とする。\(\frac{ 6n + 8 }{ n^2 + 6 } = p\)を満たす\(( n , p )\)の組をすべて答えよ。
例題3の解答・解説
★\(p\)は自然数なので、左辺の分数には、「少なくとも(分母)≦(分子)」という条件が付きます。
それを利用して\(n\)の範囲を絞り込むことができます。
(解答)
右辺は自然数なので、左辺も自然数である。
左辺が整数であるためには少なくとも(分母)≦(分子)なので、
\(n^2 + 6 ≦ 6n + 8\)
これを解くと、\(3-\sqrt{ 11 } ≦ n ≦ 3+\sqrt{ 11 }\)
\(n\)は自然数なので、\(n = 0,1,2,3,4,5,6\)
それぞれ与式の左辺に代入すると、\(n = 1\)のとき\(2\)、\(n = 2\)のとき\(2\)になる。
よって、
\(( n , p )=( 1 , 2 ) , ( 2 , 2 )\)
(終)
例題4:因数分解する(隣り合う2つの整数は必ず互いに素)
\(n\)は\(2\)以上\(9999\)以下の自然数とする。\(n^2 – n\)が\(10000\)の倍数になる\(n\)をすべて答えよ。
例題4の解答・解説
★整数問題で文字式が与えられたら、因数分解を疑ってみるといいです。
因数分解したら、「隣り合う2整数は互いに素」「連続する3整数のうち必ず1つは3の倍数」などの事柄を使って問題を解いていきます。
(解答)
\(n( n – 1 ) = 10000k\) (\(k\)は整数)とする。
\(10000 = 2^4 × 5^4\) であるが、\(n – 1\)と\(n\)は互いに素なので\(5^4\)は\(n – 1\)または\(n\)の因数である。
\((ⅰ)5^4\)が\(n\)の因数のとき
\(n=625p\)(\(p\)は整数)と表せる。
\(2 ≦ n ≦ 9999\)より\(p = 1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15\)
\(n – 1\)と\(n\)は互いに素なので\(2^4 = 16\)は\(n – 1\)の因数である。
\(p\)のそれぞれについて\(n – 1\)を考えると\(16\)の倍数になるのは\(p = 1\)のときのみ。
よって、
\(n = 625\)
\((ⅱ)5^4\)が\(n – 1\)の因数のとき
\(n = 625q + 1 (q\)は整数\()\)と表せる。
\(2 ≦ n ≦ 9999\)より\(q = 1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15\)
\(n – 1\)と\(n\)は互いに素なので\(2^4 = 16\)は\(n – 1\)の因数である。
しかし\(n – 1 = 625q\)が\(16\)の倍数になる題意を満たす\(q\)は存在しない。
よって\((ⅱ)\)を満たす\(n\)は存在しない。
\((ⅰ)(ⅱ)\)より、\(n = 625\)
(終)
例題5:ユークリッドの互除法
\(p,x,y\)は整数とする。\(25x + 16y = p\)を満たす\(( x , y )\)の組をすべて求めよ。
例題5の解答・解説
★ユークリッドの互除法は、入試問題ではあまりお目にかからない印象ですが、だからと言って出ないだろうと決めてかかるのは危険です。
長く使わなかったので忘れてしまった、なんてことがないようにしましょう。
(解答)
\(25x + 16y = 1\)を満たす\(( x ,y )\)の組を考える。
\(25=16×1+9\)
\(16=9×1+7\)
\(9=7×1+2\)
\(7=2×3+1\)
から
\(1=7-2×3\)
\(=7-(9-7×1)×3\)
\(=9×(-3)+7×4\)
\(=9×(-3)+(16-9×1)×4\)
\(=16×4+9×(-7)\)
\(=16×4+(25-16×1)×(-7)\)
\(=25×(-7) + 16×11\)
\(25×(-7) + 16×11 = 1\)
が得られる。
これを両辺\(p\)倍すると
\(25×(-7p) + 16×11p = p\)
が得られ、この式を与式から辺ごとにひくと
\(25(x + 7p) = -16(y – 11p)\)
\(16\)と\(25\)は互いに素なので、この式の値は\(16\)の倍数かつ\(25\)の倍数である。
\(k\)を任意の整数とし、式の値を\(16×25k\)と置くと、
\(x = -7p +16k
y = 11p – 25k\)
を得る。
以上より、与式を満たす\(( x , y )\)の組は、\(k\)を整数として、
\(( x , y ) = ( -7p +16k , 11p – 25k)\)
(終)
例題6:素因数分解
\(1008\)の正の約数の個数とその和を求めよ。
例題6の解答・解説
★とてもオーソドックスで、センター試験でもよく出題されていそうな問題です。
なぜ、下記の解法で答えが出るのか、説明することができますか?
(解答)
\(1008 = 2^4×3^2×7\)より正の約数の個数は、
\(( 4 + 1 )( 2 + 1 )( 1 + 1 )=30\)
その和は、
\(( 2^0 + 2^1 + 2^2 + 2^3 + 2^4 )( 3^0 + 3^1 + 3^2 )\)
\(×( 7^0 + 7^1 )=3224\)
以上より、正の約数は\(30\)個、その和は\(3224\)
(終)
おまけ問題
素数は無限に存在することを証明せよ。
おまけ問題の解答・解説
★素直に証明するのが難しそうな証明では、背理法がとても有効なことも多いです。
証明問題で方針に困ったら、背理法を疑ってみるといいかもしれません。
(解答)背理法で示す。
素数は有限である仮定する。
最大の素数を\(p\)とおき、素数をすべてかけた数\(N\)を考える。
\(N = 2×3×5×7×・・・×p\)
ここで、\(N + 1\)は\(1\)と\(N + 1\)以外のどの整数でも割り切れないので、素数である。
\(N + 1\)は\(p\)より大きいので、これは\(p\)が最大の素数であることに矛盾する。
以上より、最大の素数\(p\)は存在せず、素数は無限に存在する。
(終)
最後に
いかがだったでしょうか。
東大数学は決して簡単ではありませんが、だからと言ってむやみに恐れるのは賢明ではありません。
ましてや、ちょっとの努力もしないうちに「自分には無理だ」と諦めてしまうのはもってのほか。
東大を目指すのであれば、それ相応の覚悟と努力が必要です。
みなさんがこの記事をきっかけに、その覚悟を持ち、数学の一問一問を吸収して自分のものにする必死さで勉強してくれること、その積み重ねの結果として、本番の受験で満足のいく結果が残せることを祈っています。
東大の他の科目についても詳しく解説しているので、あわせてご覧くださいね。