はじめに:宋の文化史の特徴・覚え方を徹底解説!
約300年もの間中国に君臨した唐が滅んだ後、10世紀から12世紀にかけて中国を支配した宋の歴史は、とても複雑で覚えにくいですよね。
通史を覚えるのも大変ですが、流れのない文化史を覚えるのはもっと大変です。
そこでこの記事では、非常に覚えにくい宋の文化史を攻略するために、宋の文化史の特徴と覚え方を徹底的に解説します。
宋の文化史が次のテストの範囲に入っている人は、ぜひ最後まで読んでみてくださいね!
- 神余秀樹『タテヨコ総整理 世界史×文化史集中講義12』旺文社、2012年。
目次
宋の文化史の特徴・覚え方
具体的な特徴の説明に入る前に、文化史の覚え方について1つ注意点を挙げておきます。
それは、「いきなり全て覚えようとせず、分野別に少しずつ覚える」ということです。
暗記項目が多い試験の直前になると、一夜漬けで乗り切ろうとする人がいますが、一晩で覚えられる内容なんてたかが知れています。
一気に全部覚えようとするよりは、分野ごとに覚える内容を分けて、少しずつ覚えていく方が効果的です。
この記事で紹介する覚え方のテクニックを使いながら、地道にコツコツ学習を続けてくださいね。
宋の文化史の特徴・覚え方①:儒学
唐代から宋代に時代が移り、中国における伝統的な学問である儒学に大きな変化が訪れました。
唐代までは、家柄で人を差別する考え方(門閥貴族)が当たり前でしたが、宋代になると「学べば人は誰でも聖人になれる」という考え方が広まるようになりました。
そこで、万人が学ぶべき学問として登場したのが「朱子学」です。
唐代まで、儒学と言えば「訓詁学」(儒教の経典を解釈する学問)でしたが、宋代ではそこから一歩進んで、儒教の考え方によって宇宙の根本原理(「理」)を探究しようとする学問である「朱子学」が生まれたのです。
朱子学に関連して覚えておいてほしい思想家は、周敦頤・朱熹・陸九淵の3人です。順番に説明していきましょう。
周敦頤
周敦頤(しゅうとんい)は、朱子学の始まりとなった書物『太極図説』を執筆した思想家です。
『太極図説』はわずか250字程度の小さな論文なのですが、陰陽・五行など易の世界観や仏教哲学・道家の思想を導入した斬新な論文として注目を浴びました。
朱熹
周敦頤が開拓した朱子学の思想を大成されたのが朱熹(しゅき)という思想家です。
朱熹の思想で押さえてほしいポイントは、「性即理」・「大義名分論」の2つです。順に見ていきましょう。
朱熹は、宇宙の原理(「理」)が、人間的な社会の原理(「性」)も形成しているので、「性とはすなわち理である」と主張しました。これが「性即理」の考え方です。
また、朱熹の考える「理」(宇宙の原理)によれば、君主と臣下の間の上下関係は絶対的であるとされていました。この上下関係の絶対性を保証するのが「大義名分論」です。
宇宙の原理こそが社会の原理であるとする朱熹の考え方は、極めて理性的だと言えますね。
陸九淵(陸象山)
徹底的に理性的な朱熹の考え方に異論を唱えたのが陸九淵(陸象山)(りくきゅうえん、りくしょうざん)です。
陸九淵は、朱熹の「性即理」に対して「心即理」という学説を主張しました。
「心即理」とは、人間のありのままの心性こそが宇宙の原理であるとする考え方です。
朱熹の考え方が理性重視だったのに対して、陸九淵の考え方は感性重視だったわけですね。
覚え方
周敦頤は『太極図説』の著者ですが、「太極図」が韓国の国旗になっている特徴的な円であることを知っていれば、「周敦頤→周→円→太極図→太極図説」と連想できますね。
朱熹が「性即理」を主張したことは、「性的な色は赤色」と考えれば一発で覚えられます。
あとは、「性」の反対が「心」だと考えれば、陸九淵が「心即理」だと覚えられますね。
宋の文化史の特徴・覚え方②:歴史学
北宋第6代皇帝・神宗の時代に、王安石という人物が「王安石の新法」を提案し、従来の旧法と激しい対立を生みました。
その王安石の新法を批判したのが、歴史家の欧陽脩と司馬光です。
欧陽脩
欧陽脩(おうようしゅう)は、「唐宋八大家」の一人で、『新唐書』や『新五代史』などの歴史書(歴史書の名前は覚えなくて良い)を「紀伝体」という形式で著しました。
紀伝体とは、個人の伝記を連ねて歴史を作るやり方で、起こった出来事の順に歴史を作る「編年体」と共に、メジャーな歴史の方法論として知られています。
司馬光
王安石の新法に対抗する旧法党の中心にいたのが司馬光です。
司馬光は、中国の戦国時代から五代十国時代までの通史を、編年体の形で『資治通鑑』にまとめました。
欧陽脩の「紀伝体」と司馬光の「編年体」は頻出なので必ず覚えましょう。
覚え方
まず、司馬光が『資治通鑑』を著したということを覚えましょう。同じ「し」から始まるので覚えやすいですね。
「資治通鑑」というタイトルが「治めるに資する時代を通じた鑑」であることを理解すれば、「通史を扱う(人物中心ではない)ので編年体」だと覚えられます。
司馬光が編年体であることを覚えれば、もう片方の欧陽脩は紀伝体だとわかりますよね。
宋の文化史の特徴・覚え方③:文学
蘇軾
欧陽脩と同じく「唐宋八大家」の一人で、旧法党の一員として王安石に抵抗したのが蘇軾(そしょく)です。
作品の名前などは覚えなくてもいいので、唐宋八大家の一人であることをしっかり理解しておきましょう。
王安石
ここまで紹介してきた欧陽脩・司馬光・蘇軾のライバルというべき人物が、新法党を立ち上げた王安石です。
王安石も実は唐宋八大家の一人で、名文家として知られています。
欧陽脩や蘇軾とは、同じ名文家として通じ合う部分があるからこそ敵対したのかもしれませんね。
覚え方
蘇軾・王安石は「唐宋八大家」であることをとにかく覚えておいてほしいので、何度も音読して覚えましょう。
宋の文化史の特徴・覚え方④:宗教
全真教
宋代になると、儒教だけでなく道教にも大きな変化が訪れました。全真教という、新たな宗派が登場したのです。
全真教は王重陽(おうじゅうよう)が創始した道教の一派で、瞑想によって不老を目指す神秘的な考え方を持っていました。
主に金国が統治する中国北部で流行し、南宋(中国南部)での「天師道」と並ぶ二大宗派となりました。
仏教
仏教は、民衆を中心として浄土宗が流行し、官僚を中心として禅宗が流行しました。
シンプルな教えで受け入れられやすい浄土宗は大衆向けで、難解な禅宗は官僚向けだったのでしょうね。
覚え方
全真教については、王重陽が創始したというポイントを覚えてほしいと思います。
「全真教」と「王重陽」はなんとなく漢字が似ているので、「ぱっと見が似ているもの同士」と考えると覚えやすくなります。
禅宗と浄土宗は、わかりやすいものが大衆向けで、難解なものがインテリ(官僚)向けだと考えれば覚えられますね。
宋の文化史の特徴・覚え方⑤:芸術
院体画と文人画
宋代には、対極的な傾向を持つ2つの絵画が流行しました。
一方が、写実的で緻密なプロの絵画である「院体画」で、他方が自由気ままなアマチュアの絵画である「文人画」です。
「院体画」の代表格として有名なのが、北宋の皇帝・徽宗(きそう)が描いた「桃鳩図」です。
徽宗は芸術に熱心で政治に無頓着な皇帝として有名で、あまりに政治を軽んじた結果「靖康の変」によって自国を金国に滅ぼされてしまいました。
政治史でもたびたび登場する困った皇帝なので、ぜひ覚えておきましょう。
清明上河図
宋代の芸術でもう1つ覚えておいてほしいのが「清明上河図」です。
清明上河図は、国の祝日の一つである「清明節」で賑わう首都・開封の様子を描いた作品です。
写真から絵画のタイトルを答えさせるタイプの問題でも頻繁に出題されますが、人が多い市場の絵を選んでおけばまず間違いないでしょう。
覚え方
プロの絵が「院体画」で、アマチュアの絵が「文人画」なのは、なんとなく字面からわかると思います。
「清明上河図」も、タイトルの通りなので写真を見ればわかるでしょう。
ですから、「徽宗が『桃鳩図』を描いた」ということを何度も口に出して覚えてください。
「徽宗」も「桃鳩図」も珍しい名前なので、10回程度音読すれば全部頭に入るはずです。
宋の文化史の特徴・覚え方⑥:科学
宋代における科学は、後に「ルネサンスの三大発明」へと継承される3つの技術を産み出しました。
宋代の科学が産んだ3つの技術とは「火薬」・「羅針盤」・「木版印刷」です。
これら3つの技術は、イスラーム世界を経てヨーロッパへもたらされ、近代の科学技術の発展を後押しすることになる極めて重要な技術です。
「火薬!羅針盤!!木版印刷!!!」と何度も唱えて頭に叩き込みましょう。
おわりに:宋の文化史の特徴・覚え方のまとめ
いかがでしたか?
この記事では、宋の文化史の特徴・覚え方について徹底的に解説しました。
文化史を覚えるときに重要なのは、前にも言ったように「いきなり全て覚えようとせず、分野別に少しずつ覚える」ということです。
急がば回れの気持ちで、ゆっくり少しずつ覚えるようにしてくださいね。
それでは!