はじめに:近代ヨーロッパの哲学に関する文化史の特徴・覚え方を徹底解説!
近代ヨーロッパの哲学に関する文化史は、内容がわかりにくくて混乱しやすいですよね。
そこでこの記事では、非常に覚えにくい近代ヨーロッパの哲学に関する文化史を攻略するために、その特徴と覚え方を徹底的に解説します。
近代ヨーロッパの哲学に関する文化史が次のテストの範囲に入っている人は、ぜひ最後まで読んでみてくださいね!
- 神余秀樹『タテヨコ総整理 世界史×文化史集中講義12』旺文社、2012年。
目次
近代ヨーロッパの哲学に関する文化史の特徴・覚え方
具体的な特徴の説明に入る前に、文化史の覚え方について1つ注意点を挙げておきます。
それは、「いきなり全て覚えようとせず、分野別に少しずつ覚える」ということです。
暗記項目が多い試験の直前になると、一夜漬けで乗り切ろうとする人がいますが、一晩で覚えられる内容なんてたかが知れています。
一気に全部覚えようとするよりは、分野ごとに覚える内容を分けて、少しずつ覚えていく方が効果的です。
この記事で紹介する覚え方のテクニックを使いながら、地道にコツコツ学習を続けてくださいね。
近代ヨーロッパの哲学に関する文化史の特徴・覚え方①:イギリス経験論
近代(17世紀頃)のヨーロッパでは、「イギリス経験論」と「大陸合理論」という2つの哲学的立場が対立し、互いに論争を繰り広げていました。
大陸合理論の「大陸」とはユーラシア大陸のことですが、ここでは特にフランスとドイツの思想を指しています。
経験論と合理論の対立は、イギリスとフランス・ドイツの思想的対立というわけです。
ここでは、まずイギリス経験論の方から説明していきます。
フランシス=ベーコン
まずはフランシス=ベーコンから説明しましょう。
フランシス=ベーコンは、イギリス・スチュアート朝の王だったジェームズ1世に仕え、『新オルガヌム』という著作を発表しました。
『新オルガヌム』の中でベーコンは、旧来の哲学が具体的な成果を挙げられていないと批判し、哲学を実りあるものにするためには実験と観察を重視しなければならないと主張しました。
実験と観察に基づいて、経験的に正しい命題を見つける推論を「帰納法」と言いますが、ベーコンの考え方はこの帰納法の基礎になっていると言えますね。
ホッブズ
お次はホッブズです。
『物体論』(覚えなくていいです)を発表したホッブズは、機械論的な自然観を唱え、近代科学の進展を後押ししました。
またホッブズは政治思想にも通じており、人間の本質的な状態を「万人の万人に対する闘争」と捉える考え方を主張して『リヴァイアサン』という著作を発表しました。
哲学者としても政治思想家としても重要な人物なので、しっかり押さえておきましょう。
ロック
『統治二論』を執筆し、社会契約説で有名になったジョン=ロックは、「人間の心の本質は白紙(タブラ=ラサ)である」と主張して、イギリス経験論を確立させました。
白紙(タブラ=ラサ)とは、「生まれてきたときの魂はまっさらである」ということを意味しています。
まっさらな魂に経験的な認識が書き込まれることによって、人は徐々に賢者になる、とロックは主張しました。
覚え方
ベーコン・ホッブズ・ロックに関して必ず覚えて欲しいのは次の3点です。
- ベーコンが『新オルガヌム』を著した
- ホッブズは「万人の万人に対する闘争」を唱え、『リヴァイアサン』を執筆した
- ロックは「社会契約論」を主張し、「タブラ=ラサ」を唱えた
ベーコンは、「オレのベーコン!」という呪文を作ると『新オルガヌム』の作者であることを覚えやすくなります。
ロックについては、「岩」(rock)というイメージから、「堅い契約を交わす」と連想すると、「社会契約論」を自然と理解できます。
「タブラ=ラサ」についても、真っ白な岩のイメージを持つと覚えやすくなるでしょう。
ベーコンとロックまで覚えれば、あとはホッブズだけです。「ホッブズ、闘争、リヴァイアサン!」と何度も唱えて頭に叩き込みましょう!
近代ヨーロッパの哲学に関する文化史の特徴・覚え方②:大陸合理論
イギリス経験論と対照的な立場を取るのが、フランスとドイツを中心とする大陸合理論です。
大陸合理論は、実験や観察に依存しない認識こそが真実であると考え、人間の経験を超越した神の認識を目指しました。
ここでは、そんな大陸合理論の立場をとった哲学者を4人紹介します。
パスカル
1人目はパスカルです。
早熟の天才だったパスカルは、数学や物理学・哲学で数多くの功績を残しました。
中でも有名なのが『パンセ』です。『パンセ』においてパスカルは
「人間は考える葦である」
という有名な格言を残し、矮小な存在としての人間の強さを謳いました。
スピノザ
以下で紹介するスピノザ・デカルト・ライプニッツは、「この世に本当に実在するものは何か?」という問題について、それぞれ違った立場を取りました。
3人の立場の違いを、1つずつ検証していきましょう。
スピノザは、「この世の真なる実体は神だけである」とする「汎神論」(はんしんろん)を唱えました。
スピノザは『倫理学(エチカ)』という著作を通して汎神論を訴えたのですが、当時の教会の思想とは食い違っていたために異端とされてしまいました。
スピノザは、才能のせいで不遇になってしまった典型的な人物と言えるでしょう。
デカルト
お次は、「我思う、ゆえに我あり」で有名なデカルトです。
「我思う、ゆえに我あり」は『方法序説』という著作に載っている格言なのですが、『方法序説』の中でデカルトは「思惟(精神)と延長(物質)が真なる実在だ」と主張しました。
精神と物質の2つが実在であるとする考え方は「心身二元論」として有名になり、近代科学の思想的基盤になりました。
ライプニッツ
最後はライプニッツです。
ライプニッツは『モナドロジー』という著作の中で、「世界の実在は無数の単子(モナド)である」とする考え方を提唱しました。
スピノザの汎神論を「一元論」、デカルトの考え方を「二元論」とすれば、ライプニッツの思想は「多元論」と言えます。3人の思想はまとめて覚えてしまいましょう。
覚え方
パスカルの「人間は考える葦である」は有名なので、自然に覚えられるでしょう。
スピノザ・デカルト・ライプニッツについては、それぞれ「一元論(汎神論)」・「二元論(心身二元論)」・「多元論(モナドロジー)」と対応づければ覚えられます。
デカルトは有名なので、スピノザとライプニッツを重点的に覚えるようにしましょうね!
近代ヨーロッパの哲学に関する文化史の特徴・覚え方③:ドイツ観念論
イギリス経験論と大陸合理論の対立を経て、18世紀ドイツで誕生したのが「ドイツ観念論」です。
ドイツ観念論はカントによって始まり、ヘーゲルによって完成します。1人ずつ見ていきましょう。
カント
ドイツの片田舎・ケーニヒスベルクに生まれたイマヌエル=カントは、世界の認識の仕方について画期的な考え方を提示しました。
カントによれば、この世界には私たちの経験に依存せず成り立っているもの(「物自体」)が存在するが、「物自体」を私たちが直接認識することはできない。
私たちが認識できるのは、「物自体」の表象(イメージ)だけであり、私たちが普段経験(認識)している世界は表象としての世界(「現象界」)である、とカントは考えました。
カントのこのような思想は「批判哲学」と呼ばれ、『純粋理性批判』・『実践理性批判』・『判断力批判』という「三批判書」に記述されています。
哲学書の中でも特に難解な著作ですが、とても魅惑的な作品なので、興味のある方はぜひ読んでみてくださいね!
ヘーゲル
カントが世界を「物自体」と「現象界」に分け、静的な体系を築いたのに対して、世界の総体に至る動的なプロセスを描いたのがヘーゲルです。
ヘーゲルは「弁証法」という考え方を提唱し、世界は弁証法的な発展プロセスによって構成されると考えました。
弁証法とは、以下のようなプロセスのことです。
まず、「テーゼ」と呼ばれる普通の命題が立てられ、テーゼが立てられると、そこに「アンチテーゼ」というテーゼを否定する内容の命題が現れます。
次に、テーゼとアンチテーゼの対立を調停する、一段レベルの高い命題(「ジンテーゼ」)が生じます。
ジンテーゼが現れたら、ジンテーゼを「テーゼ」としたときの「アンチテーゼ」が現れて……
このように、「テーゼ→アンチテーゼ→ジンテーゼ」の流れを永久に繰り返す中で、世界のあらゆる対立を包括した普遍的な命題に至る。この普遍的な命題こそが真実となる__ヘーゲルはこのように考えていました。
弁証法は国語の現代文でもよく出てくるので、ぜひチェックしておいてくださいね。
覚え方
カントとヘーゲルは思想が難しいので長めに紹介しましたが、覚えてほしいのは2点だけです。
- カントは「三批判書」を書いた
- ヘーゲルは弁証法を提唱した。
三批判書も弁証法も、内容が頭に入っていれば自然と覚えられます。
三批判書の中の「批判哲学」は「物自体」と「現象界」を区別する思想で、弁証法はテーゼ・アンチテーゼ・ジンテーゼを永久に繰り返す、というように。
わかりにくければ、Wikipediaなどの情報源を参照して、自分なりに理解して覚えるようにしてくださいね。
おわりに:近代ヨーロッパの哲学に関する文化史の特徴・覚え方のまとめ
いかがでしたか?
この記事では、近代ヨーロッパの哲学に関する文化史の特徴・覚え方について徹底的に解説しました。
文化史を覚えるときに重要なのは、前にも言ったように「いきなり全て覚えようとせず、分野別に少しずつ覚える」ということです。
急がば回れの気持ちで、ゆっくり少しずつ覚えるようにしてくださいね。
それでは!