確率は場合の数と同じ!
確率は場合の数より少し抽象的になるため苦手意識を持つ人も少なくありません。
しかし、当てはまる事象を数えるという点で本質的には場合の数と変わりません。
今回は確率を学習する上で誤って理解しやすいポイントをとりあげ解説していきます。
確率を初めて学習する人や理解が曖昧な人はこの記事で確率の基礎をマスターしましょう。
目次
確率の定義
確率の定義は以下のようになっています。
つまり、全事象の場合の数に対するある事象の場合の数の割合が確率です。
確率を割合というイメージで捉えるとこれからの説明が理解しやすくなります。
例えば、1から6の目があるサイコロで1の目がでる確率は\(\frac{1}{6}\)です。
これは全事象6通りに対して、1の目が出る事象が1通りあり、その割合が\(\frac{1}{6}\)ということです。
学習が進むにつれて事象が複雑になってきますが、結局のところは割合であると捉えましょう。
区別できないものも,区別する
次のポイントは「区別できないものも、区別する」ということです。
区別するとは、「赤玉1つと白玉3つ」があれば、「赤玉1、白玉1、白玉2、白玉3」と把握するということです。
なぜわざわざ区別する必要があるかというと、それぞれ事象が起きる確率が等しくなければ正しく割合を計算することができないからです。
事象の起きる確率が同じ程度だと期待できることを「同様に確からしい」というので、覚えておきましょう。
例えば、上の例で玉を1つ取り出すときに、「赤玉が出る」事象と「白玉が出る」事象では同様に確からしいとは言えません。
白玉の方が多いため、白玉が出る可能性の方が高いですからね。
それぞれの事象を「同様に確からしい」とするために、「白玉1が出る」事象を考えてみましょう。
白玉自体は3つありますが、「白玉1」としたものは1つしかありません。
よって「赤玉が出る」事象と同様に確からしいといえます。
区別したところで、赤玉がでる確率を求めてみましょう。
全事象は、「赤玉1、白玉1、白玉2、白玉3」のそれぞれが出る4通りでなので、赤玉が出る確率は\(\frac{1}{4}\)となります。
このように「同様に確からしい」といえて初めて確率を計算できます。
そのために区別できないものを区別するということを覚えておきましょう。
順列・組み合わせと確率
確率を求める際に、順列と組み合わせが関わってくることがよくあります。
ポイントは、全事象を順列で求めた際は事象Aも順列で数え、組み合わせを用いたときは、組み合わせで数える、ということです。
①順列の場合
例えば、A,B,Cの三人が順番に並ぶときに、Aが先頭になる確率を考えます。
このとき全事象は\({}_3 P _3=6\)通り。
Aが先頭になるのは2,3番目のB,Cの順列なので\({}_2 P _2=2\)通り。
よって求める確率は
\(\frac{{}_2 P _2}{{}_3 P _3}=\frac{1}{3}\)となります。
順列/順列となっていることがわかりますね。
②組み合わせの場合
赤玉が2つ、白玉が6つ袋のなかに入っています。
ランダムに2個取り出したときに両方赤玉である確率を求めます。
区別できないものも区別するので、全事象は
\({}_8 C _2\)通り
両方赤玉である事象は
\({}_2 C _2\)通り
よって求める確率は
\(\frac{{}_2 C _2}{{}_8 C _2}=\frac{1}{28}\)
組み合わせ/組み合わせで求めることができました。
また、ここでも区別できないものを区別していることにも注意しておきましょう。
確率の加法定理
確率の加法定理というものがあり、以下が成り立ちます。
排反とは「同時に起こることがない」という意味の用語です。
例えば、1つのサイコロを振ったときに、1の目と2の目が同時に出ることはありませんので、サイコロの目は互いに排反と言えます。
またコインの裏表も同時に起きることはないので、互いに排反です。
確率の加法定理は当たり前のことを言っているだけですので気構えなくても大丈夫です。
要するに、事象が互いに排反のとき確率を足し算することができるというものです。
たとえば、サイコロの1の目、2の目がでる確率はそれぞれ\(\frac{1}{6}\)です。
「サイコロの1または2の目が出る確率」は確率の加法定理より
\(\frac{1}{6}+\frac{1}{6}=\frac{1}{3}\)
となる、ということを言っているに過ぎません。
「排反のときに単純に確率の足し算ができる」ということを覚えておきましょう。
和事象の確率
それでは排反でないときはどうでしょうか。
例えば、トランプを1枚引くときに「7が出る事象」と「スペードが出る事象」を考えます。
確率はそれぞれ\(\frac{1}{13},\frac{1}{4}\)となっています。
注意するべきなのはこれが排反ではないことです。
「スペードの7」が出るときに、両方が同時に起こります。
よって先程のように「7が出る、またはスペードが出る事象」を
\(\frac{1}{13}+\frac{1}{4}\)
と足すことはできません。スペードの7の\(\frac{1}{52}\)分のダブルカウントが起きていることになります。
そこで和事象の確率を足す際に、次のことが成り立ちます。
これは難しいように思えるかもしれませんが、具体的に考えれば難しいことはありません。
要するに「被った分(A∩B)を和から取り除く」ということです。
トランプの例で言えば「スペードの7」になります。
排反のときは、両方が同時に起きることはなかったため単純に足すことができましたが、排反でない場合は同時に起きる事象があります。
そこで、同時に起きる事象の分だけ和から引くことで正しい確率を求めることができます。
ここで例題を解いてみましょう。
問題
1から100までの整数をランダムで取り出すとき、5または6の倍数となる確率を求めよ。
解答・解説
「5の倍数となる事象A」と「6の倍数となる事象B」は互いに排反ではありません。
なぜなら5と6の公倍数の30の倍数のときに同時に起きるからです。
単純にP(A)+P(B)としてしまうと、30の倍数の分だけ二重にカウントしてしまうことになるので、その分だけ減らす必要があります。
そのため、求める確率はP(A)+P(B)-P(A∩B)となります。
5の倍数となるのは100÷5=20通り
よって確率は\(\frac{20}{100}\)
6の倍数となるのは100÷6=16.6・・・より16通り
よって確率は\(\frac{16}{100}\)
30の倍数となるのは100÷30=3.3・・・より3通り
よって確率は\(\frac{3}{100}\)
よって求める確率は
\(\frac{20}{100}+\frac{16}{100}-\frac{3}{100}=\frac{33}{100}\)
となります。途中の計算は約分しない方が後の計算が楽になるのであえてしていません。
余事象の確率
確率を求める際に欠かせないのが余事象の確率です。
余事象の確率を上手く使いこなせるかどうかで計算時間が段違いに変わります。
余事象とは次のようなものです。
これは「事象Aが起きない確率」を求める際に利用します。
例えば、サイコロを振って1の目がでない確率を考えてみましょう。
余事象の確率を利用しなければ、「2,3,4,5,6のどれかが出る確率」ということで
\(\frac{1}{6}+\frac{1}{6}+\frac{1}{6}+\frac{1}{6}+\frac{1}{6}=\frac{5}{6}\)
という計算をして求めることになります。少し面倒くさい計算になってしまいますね。
そこで余事象を利用してみましょう。余事象の式は以下の通りです。
\(P(\bar{A})=1-P(A)\)
実際に当てはめてみると
\(1-\frac{1}{6}=\frac{5}{6}\)
といったように簡単に求めることができます。
余事象の確率を求めることは難しくありませんが、いざ実際の問題を解いているときは余事象の確率を利用することに気づきにくいです。
問題文中の「~でない」「少なくとも~である」といった文言があれば余事象の確率を疑いましょう。
たとえば、次の例はどちらも余事象を使ったほうが楽に計算できます。
- トランプを1枚引いてハートマークが出ない確率
- サイコロを2回振ったときに、少なくとも1が1回以上出る確率
問題文中の否定の文言に注意して余事象の確率を積極的に利用していきましょう。
確率の基本は数えること
場合の数から確率に変わっても、結局のところは数え上げることに変わりはありません。
全事象が何通りあるか、事象Aが何通りあるかを数えてその割合を求めることが確率の本質です。
その上で和事象の確率や、余事象の確率といった知識を学んでいきましょう。