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共通テスト利用入試とは
共通テスト利用入試(以下、共テ利用)とは、共通テストの成績によって合否判定が行われる私立大学の入試のことです。
通常、私大の入試は大学で個別に実施される一般入試のみで、共通テストの受験は必須ではありません。
しかし、共テ利用では、共通テストの結果だけで合否が決定されることが一般的で、大学の個別入試を受ける必要がありません(個別試験との併用型もあり)
共通テスト一つ受けるだけで複数の私大に出願することができるので、手軽で効率がよく利用価値の高い入試方法として知られています。
共通テスト利用を導入している私大は年々増加しており、2023年度入試で共通テスト利用入試を実施した私立大学は535以上の大学で、なんと全私立大学の約8割にのぼります。
このようにメジャーな方式となっている共通テスト利用ですが、一体どのくらいの人が出願しているのでしょうか?
今回は、現在難関大(東大・一橋・早慶など)に通う学生に共通テスト利用に関するアンケートを行いました。
Q:私立大学の共通テスト利用(センター試験)入試に出願しましたか?
およそ7割の人が共通テスト利用(センター利用)に出願したと回答。
それもそのはず、共テ利用には他の入試とは違った数多くのメリットがあるのです。
共テ利用入試のメリット
【共テ利用入試のメリット】①大学ごとの入試対策をする必要がない
共テ利用の良いところは、なんといっても共通テストただ一つを受けるだけで試験が完了するということです。
出願する大学で指定された科目を共通テストで受けていれば、いくつでも出願することができます。
複数の別の大学に出願するのはもちろん、同じ大学の別の学部、学科にも出願することが可能です。
大学の個別入試の対策をする必要がないので、効率的に私大を受けることができます。
【共テ利用入試のメリット】②費用負担が少ない
私立大学の受験にかかる費用は、願書代1,000円程度、一般入試の受験料35,000円程度と少し高めです。
さらに医学系・歯学系の学部だと40,000円~60,000円もかかる場合もあります。
その点、共通テスト利用入試の受験料は15,000円〜20,000円と比較的安いです。
同じ大学内の違う学部・学科で併願する場合、二つ目以降の受験料を割り引く制度のある大学もあるので、その場合さらに安く受験料を抑えることができます。
【共テ利用入試のメリット】③現地まで行かずに受験できる
地方に住んでいる方だったら、受験する大学に行くための交通費だけでも高額になる場合が多いですし、なかには宿泊費がかかる方もいるでしょう。
共通テスト利用だと、共通テストを受けるだけで良いので、わざわざ受験する大学まで行かなくて済みます。
移動の時間も費用も節約することができるのでお得です。
【共テ利用入試のメリット】④滑り止めの大学を効率的に確保できる
Q:共通テスト利用(センター利用)を出願した大学は第何志望でしたか?
この結果を見ても分かる通り、共通テスト利用は概して第二志望以下の大学で出願する傾向にあります。
国立大学の2次試験や本命私立大学の一般入試対策に専念したい方は、共テ利用に出願して滑り止めの大学をキープしておくという考え方の人が多いのでしょう。
失敗できない本番の試験の前に、一つでも合格している大学があると精神的にも余裕が持てますし、緊張しすぎて本番で力が出せないなんてこともありません。
それでは共通テスト利用入試のデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?
共通テスト利用入試のデメリット
【共通テスト利用入試のデメリット】①難易度や倍率が高くなりがち
先述のように、共通テスト利用には受験生には嬉しいたくさんのメリットがあるので、たくさんの人が出願します。
それに対し、大学での募集人数は一般入試に比べて少ないので、どうしても倍率が高くなってしまうのです。
手軽に出願できて「受けやすい」共テ利用ですが、難易度は一般入試よりも高いので「受かりにくい」です。
【共通テスト利用入試のデメリット】②私大単願の人にとって負担とリスクが大きい
国公立大を受けずに、私立大学だけ受験する人はそもそも共通テストを入試に利用しないので、共テ利用に出願するとなると、わざわざそのためだけに共通テストを受けることになるので、負担が増します。
また、共テ利用を出願する人は国公立が第一志望で、「どうせ共テを受けるし、滑り止めとして共通テスト利用にも出願するか〜」みたいな人が多いため、共通テスト対策をしっかりやってきた国公立大志望の人と勝負することになります。
よっぽど高い点数を取らないと合格できないことが多いので、共通テスト利用で本命大学を受けるのはリスクが高いでしょう。
【共通テスト利用入試のデメリット】③志望校を早めに決めなければならない
Q:共通テスト(センター)利用の出願は共通テスト(センター試験)の前でしたか?後でしたか?
出願を取り消すことができないので、受験料が無駄になってしまします。
自分が志望する大学の共通テスト利用が、共通テスト前に出願か、後に出願か、十分な注意が必要です。
【共通テスト利用入試のデメリット】④方式によっては5〜6科目受けなければならない
私立大学の一般入試は2〜3科目というのが基本です。
しかし、共テ利用だと、なかにはその倍の5〜6科目受けなければならない大学も存在します。
例えば早稲田大学政治経済学部の場合、一般入試であれば
・「国語」
・「英語」
・「地歴(世B・日Bから選択)・公民・数学から一つ」
の計3教科受ければ良いのですが、共テ利用であれば
・「国語」
・「数学」
・「理科」
・「英語」
・「地歴(世B・日B・地理Bから選択)・公民から一つ」
の計5教科の受験が必要です。
文系の学部ですが、数学と理科の受験が必須になるため、特に文系の学生にとってはかなり負担は大きくなるでしょう。
早稲田大学のような難関私大は、難関国公立大志望者の共テ利用出願先としてよく見られる大学なので、私立単願の人は一般入試で出願したほうが良いです。
難関大生の共通テスト利用出願大学は?
東大・一橋・早慶上智などの難関大を受験する人はどこの大学に共通テスト利用を出願するのでしょうか?
Q:共通テスト(センター)利用を出願した大学はどこですか?
半数以上の人が、早稲田大学とMARCH(明治・青学・立教・中央・法政)に出願しています。
特に早稲田大学は単体でもグラフの1/5を占めているので、難関大生の共通テスト利用出願先として人気が高いことが分かります。
東大や一橋などの難関国立大の受験生は、滑り止めとして早慶を受けることが多く、慶應義塾大学は共通テスト利用入試を実施していないため、早稲田大学への出願が多いのでしょう。
東大に挑めるほどの力がある受験生との戦いになるため、かなり難易度は高めです。
MARCHの共テ利用に関しては、早慶上智や首都圏の国立大の滑り止めとして出願されることが多い様子。
MARCHと言っても大学や学部によって幅がありますが、一般入試で早慶上智に受かってもおかしくないくらいの実力を持っていないと厳しいようです。
共通テスト利用における共通テスト・リサーチの判定の信憑性は?
共通テストが終わった後に出し、その自己採点の結果から合格の可能性を出してくれる「共通テスト・リサーチ」
共テ利用の場合、どのくらいの判定であれば合格することができるのか気になるところです。
合格の可能性としては、
A | 80%以上 |
---|---|
B | 60%以上 |
C | 40%以上 |
D | 20%以上 |
E | 20%未満 |
という感じになっています。
共テ利用受験者は「共通テストのみ」で合否が判断されるので、2次試験の残っている国公立大受験者よりも、判定の信憑性は高いです。
A判定の場合ほぼ間違いなく合格すると言っても過言ではありません。
B判定も確率は下がりますが、同じくほぼ合格といってもよいです。
もちろん、自己採点ミスやマークミスなどがある可能性もあるので100%ではありませんが、上記の結果だった人は安心して、より志望順位の高い大学の対策へと時間を割いてください。
D判定とE判定の方は、残念ながらかなり望み薄です。
国公立大学のようにに共通テスト後、2次試験があるのならまだ挽回は可能ですが、私大共テ利用の場合、共通テスト一本勝負ですので、失敗したらそこで試合終了です。
判定が悪かったときは、共テ利用での合格は諦めて、すぐに一般入試の勉強をはじめるのが懸命でしょう。
一番判断に困るのがC判定です。
C判定で受かったという人もいれば、落ちてしまったという人もいます。
ここで見極めるポイントとなるのが、「Bに近いC」か、「Dに近いC」かというところです。
共通テスト・リサーチでは、志望大学における自分の位置を分布図で確認することができます。そこで自分の位置がどちらに近いか見てみましょう。
また、志望大学の合格のボーダーラインとなる得点率をチェックし、自分の得点率と照らし合わせれば、ある程度いけるかいけないかの判断はつくのではないでしょうか。
共通テスト利用入試に落ちたときの対処法
ここでは、大学生に実際に共テ利用入試についてアンケートした結果を基に共テ利用入試に落ちてしまった時の対策法について紹介します。
アンケートからみる実際の共テ利用入試
(共通テスト利用入試を使用した人の中で)共通テスト(センター)利用入試で不合格になった経験はありますか?
(不合格になった人の中で)その後の一般入試で共通テスト(センター)利用入試で落ちた学校以上のレベルに受かりましたか?
アンケートの結果から8割近い多くの大学生が共通テスト利用入試を利用していることがわかります。また、その中でも過半数の70%の人が共通テスト利用入試で不合格になった経験があるようです。このことからも、共テ利用入試で合格を得ることは難しいということがわかります。
そして注目すべきなのは不合格になった経験のある人のうち、7割近い人が不合格になった学校以上のレベルの学校に合格しているという結果です。つまり、過半数の人は共通テスト利用試験の結果と関係なく本試験で結果を出しているという事です。
このことからも共テ利用入試で合格を得るのは難しく、そして不合格になったからといって実際の入試でそれ以上のレベルの学校に合格できないということではないということがわかると思います。
共通テスト利用入試に落ちた後にするべきこと
では実際に共テ利用入試に落ちた場合にどうすればよいのか勉強面と精神面の二つに分けて紹介します。
勉強面
共通テストは高校3年間の学習の基礎的な部分から問題が作られています。そのため、不合格になった後その結果にひきずられてしまうのではなく、間違えた問題の見直しをし、抜けている知識を確実に入れなおしましょう。
共通テスト後は私立入試、国立二次試験の対策で忙しい時期ですが基礎的な知識を入れなおすことはそれらの試験の得点アップにもつながるはずです。
精神面
アンケートからもわかる通り共テ利用入試で不合格になった後にそれ以上のレベルの学校に受かった人は多くいます。つまり共テ利用入試の結果と本試験の結果は必ずしも比例しません。
そのため、共テ利用入試に落ちた後に最も大事なことは結果を気にし過ぎず、すぐに切り替えること。不合格になってしまい、それに引きずられてしまうと、より悪い結果を起こしてしまいます。きちんと間違えたところを見直すなどの反省をしたら、必要以上に引きずらず切り替えて試験に望みましょう。
共テ用入試の結果に動揺して本試験で思うような結果が出なかったというのは最悪の事態です。運が悪かったんだ、程度の気持ちであまり重く受け止め過ぎず、悪い結果を連鎖させないようにしましょう。
共通テスト試験利用入試のスケジュール
共テ利用入試は、共通テストの前、もしくは後に出願します。
共通テスト前出願の場合、共通テスト日の2〜3日前に締め切られるところが多いですが、なかには共テ前日まで願書を受け付けているところもあります。
(ギリギリまで受け付けているからといって油断せず、余裕を持って出願しましょうね!)
そしていよいよ共テ本番。
きちんと各大学で指定された科目を受けましょう。
試験後は各自で自己採点をし、共通テスト・リサーチで合否判定を確認します。
共テ後出願の場合、ここで「この結果なら受かりそう」だと判断できたのであれば、志望大学に出願します。
合否発表は、大体の大学が2月の上旬から中旬にかけて行われます。
一般入試の合否発表よりも数週間早く結果が出るので、早く合格をもらって安心したい、滑り止めを確保したいという人には有難いですね。
ただし、その分入学の手続きが早く締め切られてしまうことも多いです。
もし共テ利用で合格した大学が本命ではない場合、滑り止めとしてそこに入学金を払うか否か慎重に決めなければなりません。
そのあたりは保護者との相談の上、後悔がないように決めましょう。