はじめに
西洋史学専攻と聞いて、多くの人は高校で学んだ世界史を思い浮かべるのではないでしょうか。
しかし、歴史上の人物と事実を学ぶことだけが歴史学ではありません。
この記事では、
- 高校までの歴史との違い
- 慶應義塾大学文学部・西洋史学専攻の特徴と雰囲気
を知ってほしいと思います。
慶應義塾大学文学部・西洋史学専攻の特徴
【西洋史学専攻の特徴】①かなり少人数
慶應大学文学部は、2年生へ進級と同時に三田キャンパスに移り、17専攻から1つを選択します。
筆者の入学した2021年度は835人が文学部に入学しましたが、西洋史学専攻はわずか30人弱で、全体の約3.5%でした。
さらに2年次には10人ごとにクラス分けされるので、慶應大学文学部の専攻内のクラスはかなり少人数です。
【西洋史学専攻の特徴】②評価方法はほぼレポート
大学では、高校の世界史のように暗記したものを単純にアウトプットするテストはほとんどありません。
多くの授業の評価は、中間・期末のレポートによります。
レポートの内容は「歴史的事実に対して考えたこと」を書く場合が多い印象です。
授業で学んだ範囲から自分の考えを書く課題は、自由度はかなり高めで、大学で学んでいる実感を覚えます。
中には高校の授業同様に、レポートでなく授業プリントからの出題や、授業中にノートを書かせてそこから出題する教授もいますが少数です。
いずれも授業に出席し、定期的に勉強すれば問題なく評価を得られるはずです。
【西洋史学専攻の特徴】③実は外国語が超重要
西洋史を学ぶ、研究する上で欠かせないのは当然ながら現地の史料ですよね。
現地の言語で書かれた史料を理解するために、外国語を読む能力がとても重要になります。
必修科目にも、後述する「原典講読」という時代に関わらず英語文献を読めるようになるための授業がありますし、さらに研究分野によっては他言語も必要となります。
例えば、イベリアが研究対象であればスペイン語・カタルーニャ語、中世初期の文献を読むならラテン語をある程度読む能力も必要です。
少なくとも1年次から英語と第二外国語の勉強を頑張っておかないと、西洋史学専攻は苦労しますよ。
慶應義塾大学文学部・西洋史学専攻の授業内容
【西洋史学専攻の授業】①史料を読む訓練「原典講読」
2年次に必修となる「原典講読」は、文字通り英語史料の原典をクラスで読む講義です。
筆者は中世の英語文献史料を講読中ですが、この講義ではただ文書を読むのではなく史料の扱い方を学んでいます。
例えば授業で、中世イングランドの王エドワード4世について、賛辞が多く書かれた史料を扱いました。
この時代には王専属の聖職者がいたという背景があるので、この史料の著者は専属聖職者であることが推測できます。
さらに、著者が王の側近の1人であることから、王についての賛辞は必要以上に美化されているのではないかと検討する必要があります。
このように「原典講読」では史料を読み、3年次以降の専門研究のためにその時代背景や解釈などの扱い方を学びますよ。
他にも、キリスト教を国教とする国々の常識を学べるので教養がつきます。
この授業を通して、異なる文化・人種・言語の世界を研究するための常識や教養が理解できるので楽しいですよ。
【西洋史学専攻の授業】②通史をより深く学ぶ「西洋史概説」
西洋史概説は、簡単に言えば高校の世界史をより詳細まで学ぶ授業です。
高校の世界史はあまりにも大まかなできごとのみを取り上げているので、この授業ではその因果関係を詳しく学びます。
さらに、歴史的事実をただ覚えるのではなく、当時における事実の歴史的意義までも深く学べる講義です。
教科書レベルから最先端の研究で明らかになり仮説が分かれていることまで学べるので、歴史好きの方は常に興味をそそられるでしょう。
例えば、ローマ帝国滅亡の原因についてゲルマン民族侵入説・帝国寿命説・人口減少説・ローマ人アイデンティティ変動説・気候変動説の5つの代表的な仮説があります。
高校では学べなかった考えを取り入れることで、あらゆる視点から歴史を見つめ直すことができます。
この授業で学んだ通史が3年次以降で研究する内容の基本知識となるので重要な授業ですよ。
また、受験レベルの高校世界史を覚えている前提の授業であり、進度も速いです。
1年次に高校世界史を忘れてしまわないよう時々教科書などで見直しておくと良いですね。
【西洋史学専攻の授業】③『現在』から見る世界史「西洋史特殊」
歴史学では、起こったことや歴史的人物などの詳細を明らかにすることだけが行われていると思われがちですが、「歴史を視点を変えて捉え直す」ということも重要な研究です。
「西洋史特殊」という授業では、ただ物事が並べられている状態の歴史を、特定の視点から見た「特殊性」について学びます。
この授業は、起こった事実を変わりようがない『普遍的』なものととらえ、その普遍的な事実を『特殊な』視点から考えるという、普遍と特殊を行き来する点が特徴です。
例えば、「フランス革命」について高校の時と違う観点で捉え直しました。
高校では、第三身分である市民が諸権利を獲得し、現代に続く民主制の基礎となった出来事であると学びますよね。
しかし、ジェンダーの観点から見直すとこの革命は決してポジティブに捉えられません。
フランス革命とセットで覚える「人および市民の権利宣言(人権宣言)」において、「市民」に女性は含まれておらず、参政権や集会の自由がありません。
このジェンダーの観点は、フランス革命当時には無く、現代の『特殊な』観点です。
このように「西洋史特殊」という授業では、「現代」などの『特殊性』のある様々な観点から、『普遍的』な過去を見つめる講義となっています。
慶應義塾大学文学部・西洋史学専攻の雰囲気
【西洋史学専攻の雰囲気】①割とおとなしめ?
先述した通り原典講読の授業は1クラス10人編成で少ないので、自然とクラスメイトとの距離が近い状況になります。
しかしクラスメイト同士は一定の距離を保っていておとなしいです。
史学系専攻の学生は1人行動を好む傾向があると筆者は感じています。
歴史史料の考察には、個人の知識や主観が重要になるためかもしれませんね。
もちろんクラス内の距離は近いので、すぐに仲良くなれますし、課題やテストの際には協力しますよ。
【西洋史学専攻の雰囲気】②ゼミは活発
西洋史専攻では3年次からゼミに所属します。
2年次の年末に自分が研究したい時代・地域によって1つのゼミを選んで、1月に所属ゼミが決まります。
先述した通り西洋史専攻はおとなしめな面もありますが、ゼミの活動は他専攻に劣らず活発です。
お茶会・食事会はもちろん、野球などをしたり、旅行に行ったりするゼミもあります
ゼミ選びの時は、来年開講しているかどうかを必ずチェックしましょう。
去年いた教授が定年・派遣留学などでゼミを開講しないこともあり得るので注意してください。
【西洋史学専攻の雰囲気】③超歴史ヲタの存在
歴史オタクは史学系専攻には必ずいます。
知識量と歴史への興味がずば抜けていて、クラスでは一目置かれる存在です。
一見浮いているように見えても、少しでも歴史が好きなら楽しく話せる上に刺激ももらえますよ。
「この本が面白い」と言われて読んでみると実際面白かったりしました。
大学では様々な人と出会えるのが魅力ですね!
おわりに
慶應大学文学部・西洋史学専攻について分かっていただけたでしょうか。
少しでも西洋史学専攻に興味を持ってくれた高校生・文学部一年生はぜひ慶應義塾大学文学部・西洋史学専攻を視野に入れてみてください。